「イニシェリン島の精霊」朝ごはんも食べず、化粧もせずに8時15分開始の映画に行った💦（ネタバレほぼナシ）
映画館に行ったのって、いつ以来かな？前に映画観たのってデビッドバーンの「アメリカンユートピア」のスパイク リー編集の特別編以来かも知れない。
この映画、まず地味だし内容も理解しにくいし全体的に暗くて陰残な場面もあって、絶対受けそうも無いのに、なんでTOHOシネマズでなんかやったんだろうね？仙台ならチネラヴィータ辺りが適当だったと思うよ。上映1週間で打ち切りにならなかったのが不思議だわ。
そんな地味で観客の入りもサッパリなこの映画、何でまた朝ごはんも食べずに観に行ったか。それは予告編で見た、舞台になっているこのアイルランドの小さな島の風景にガッツリ心を掴まれてしまったからなのだ。
荒涼としたアイルランドの海辺。岩場とわずかな緑地。低く垂れ込めた灰色の空と海。石や漆喰造りの簡素な家。家畜と人とが共に暮らす日常。イギリスのアンティーク好きのみけ子にとっては、映し出される家具や家々や殺風景とも言えるこの荒涼とした眺め全体が、何とも心を奪われる美しさで。魅了される風物ばかりだった。
ここからはみけ子の映画とはまるで関係ない、訳の分からない繰り言なので、興味のない方はここで読むのやめて下さいね。
暗い、岩だらけの入江に立つ、小さな家。低く垂れ込めたどんよりした灰色の空。映画では人の住むちゃんとした家だったけど、ここは実は漁師が道具を仕舞ったり漁の準備をしたりする漁師小屋なのだ。そんな簡素で粗末な小屋。
漁師小屋に向かう自分は、ヒゲ面のまだ若い大男である。肩には漁で取れた魚を担いでいる。小さな入江の漁師小屋には女が待っている。若い女だ。この女を連れて自分は住み慣れた村から逃げて来たのだ。
女とは男女関係はない。男にとってその若い女は、傷ついた小動物と同じで保護すべき対象だった。その女をどうしても連れて逃げなければならなかったのだ。そうしないと女は早晩殺されてしまう。
女は夫から虐待を受けていた。それを見かねた男は耐え切れなくなり、弱った動物を保護する気持ちでやむに止まれず女を連れてここまで逃げて来たのだ。
ひとまず、身の安全は確保したがこれからどうする？程なく女の夫には見つかってしまうだろう。ここは村からも離れていない場所だ。逃げては来たけれど、この後どうする当てもない。
漁師小屋には囲炉裏が切られ、火が赤々と燃えている。食料や寝る場所は何とかなっているが、これからどうしたらいい？どこへ行く？
数日が経った頃、女の夫や親族が数人で追って来た。自分はその男達に袋叩きにされ、女は元の家に泣きながら連れ戻される。自分は一体、何のために女を連れて逃げて来たのか……。
袋叩きにはあったが、命までは取られなかった。そんな事件を起こしてしまい、ケガが回復してももう元の村には戻れない。男はあまり遠くない街に出て、そこで職を探し生きていくことにした。男ひとりならば、何をしても食って行ける。自分はあの時止むに止まれぬ気持ちで女を連れて逃げたけど、結局連れ戻されてそれでお終いだった。あんな事をして、一体何になったんだろう？
しかし、男は風の噂にあの女と夫のその後のことを漏れ聞くのだ。他所の男と逃げるなんて大胆な事をするなど微塵も思わなかった夫。ひ弱でうつむいて、暗い顔をしながら夫の命令に従うしかなかった女が、あんな大胆な行動に出るなんて。
そんな女の行動に、夫の態度が少し変化した。ただ暴力で言う事を聞く女じゃなかった。内心何を考えているのか。また何かあればここから逃げて行くつもりか。女の心の中を読みかねて、戸惑う夫。これまで全く女の言葉に耳を貸さなかった夫だったが、多少は女に心を向けるようになって行き、二人の関係は多少は良い方向に変化して行く……。
そんな妄想の物語。ヒプノセラピーの誘導で見えてきたストーリー。あれはアイルランドだったのかな。映画の中では「イニシェリン島」は架空の島との事だが、アイルランドのアラン諸島の島で撮影されたのだと言う。
遠い過去の自分なのか、催眠誘導で見えてきた暗く寒々とした石だらけの海辺。入江の漁師小屋に女を連れて逃げてきた自分。自分の潜在意識が作り出した妄想なのか何なのか。
この映画、原題が「バンシーズ オブ イニシェリン」というらしいが、そういえば山岸涼子の漫画の中に「バンシー／泣き女」って話があった。バンシーって精霊を見かけると死人が出るという言い伝え。ある家の２階に下宿していた独身の女が、有名作家にストーカーのようになって手紙を多数送りつけ、妄想を募らせた挙句にその言い伝え通り、孤独と絶望感から自ら命を絶ってしまう話。そして女性ボーカルのスージースーが中心のパンクバンド「スージー アンド ザ バンシーズ」ってグループがあったな。これもこの精霊の名前が由来なんだろうか？
行ったこともない、冷涼なアイルランドの小さな島の風景が美しく描写された映画にインスパイアされ、思い出した妄想話でした。
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