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籐家具の魅力

籐で編んだ家具には、なんとなくリゾート感というか避暑地というか、そんな非日常の感じが漂っている。籐で編んだ家具に憧れがある。

今から40年ほど前の話。当時流行っていた女性誌のananに、一人暮らしする女性の部屋のインテリアについて特集が組んであった。首都圏の6畳の部屋での一人暮らしの女性。大学に入るために上京したのか、初めての一人暮らしの部屋を自分好みのインテリアにまとめている様子が見開きページに掲載されていた。

1970年代後期か80年代のことだから、きっとその女子大生は単身のアパート暮らしではなく、下宿生活だったと思う。六畳の部屋は勉強や毎日の暮らしに必要なものは置いてあったが、台所で炊事したりって事は無かったんだろう。六畳間という一人で暮らすにはギリギリの広さ。その狭い部屋にベッドとテーブルセットを置き、狭い和室を自分で何とか工夫しながらインテリアを楽しんでいる様子だった。

ベッドにはレースのカバーをかけ、カーテンなどのファブリック類の色調も淡いトーンで統一し、家具は籐家具を置いていた。当時、相当高価な家具だったと思う。だけどきっとその女性はインテリアにこだわりがあり、その籐家具とレースで部屋をどうしても纏めたかったのだと想像する。

狭い六畳の和室に高級家具やレース素材は、今思うと滑稽な感じもある。だけど写真で見た限りでは、統一感があって狭いながらもステキな部屋にまとまっていた。自分の感性でインテリアを纏めたい、憧れの部屋を作りたい、という美意識が感じられた。その見開きのページを、当時まだ10代だったみけ子は飽かずに眺めた。

確かにあの頃は籐家具がちょっとしたブームだった記憶がある。高原の避暑地にアンノン族が押し寄せ始めていた時代だ。そんな高原リゾートで目にした籐家具に憧れをもって、自分の部屋で使いたいと思った女性は少なくなかったと思う。


ミニチュアの籐家具

考えてみたらみけ子も、籐で編んだバスケット風の旅行カバンを見つけて気に入り、当時頻繁に旅先に持って出かけた。旅行で使わない時は、部屋の角で収納ケースとしても役に立ったし、無造作に置いてもサマになった。籐の製品は、新しい時はちょっと独特の芳しい香りがした。それも好ましかった。

10代から20代前半にかけて、何度も旅行に持って行ったその籐のバスケットは、繰り返し使って痛んでしまい、最後は処分する事になったが、今でもその籐のバスケットを思い出すと旅行に持って行った時の事などを懐かしく思い出す。

旅館の洗面台の前のスツール

今も温泉宿に行くと、窓の前のくつろぎのスペースに籐椅子ワンセットとテーブルが置いてあることが多い。昭和の時代の日本家屋でも庭に面した縁側にそんな家具を置いている家も多かった。夏の夕方、浴衣を着てうちわを片手に寛ぐのはその当時の憧れだっただろう。

縁側に籐家具。そんな設えを見るとノスタルジックな昭和時代の日本の家が思い浮かぶ。あの籐家具を置いた庭に面した佇まいが、昭和の日本建築への憧れを一層強くするのだ。自分はそんなところで暮らしたことはないのだけれども。




↓重量感のある陶器のオブジェ。しっかりした造形と質感が魅力です。


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