見出し画像

夫婦で歩くシャンパニュー歴史散歩/1-7-1/シャンパンボトルの地を訪ねてアルゴンヌの森へ


https://www.youtube.com/watch?v=ednwA_vx4_w

「なぜシャンパニュー地方は、泡を閉じ込めたワインを・・シャンパンを作れたんだろう?」
パリ東駅発ルクセンブルグ終点のTGVの車上である。
「なぜって・・ドン・ペリニオンという修道僧が思いついたからでしょ?」と嫁さんが言った。
「最初に思い付いたのは彼じゃない。ピレネー山塊の東の外れ、リムーの修道院でも作っていた。彼より200年近く前からだ。でも本格化しなかった。なぜだと思う?」
「わからないわ・・どうして?」
「ワインは樽で醸造する。でも樽では発砲したワインを液内に閉じ込めるのは難しい。微泡程度しかできない。もちろん今でもシャンパンでも樽醸造はする。しかし本格的に泡が閉じ込められるのは瓶内でだ。・・これだよ」
「これだよって・・なにがこれ?」
「瓶だ。瓶内でワインが発砲し始めると、瓶が持たない。簡単な振動で破裂してしまう。当初1/2以上は破裂してしまっていたようだ。だからシャンパニューから発砲ワインを英国なんかに売っていた当初は、樽のまま売っていた。ドン・ペリニオンの凄さはこれなんだよ。瓶内に発砲ワインを閉じ込めても破裂しない瓶を見つけたことなんだ。彼の偉大な工夫は、この破裂しない瓶の選択。そしてコルク栓の採用だったんだ。
その割れない瓶を産み出す素養がシャンパニューには太古から有った。リムーには無かった‥そういうことだ」
「なに?その素養って?」
「土と技術だ。シャンパニューにはそれが太古から有った。それが今回訪ねるアルゴンヌの森だ」
「え~素敵なホテルがあるから行ってみよう♪じゃなかったの?それおかしくない?」
「いやいや、ほんとに素敵なホテルなんだ。行ってみよう。アルゴンヌの森歩きはそのおまけだ」
「うそね。森歩きなんかするわけないし・・どうせどこかの博物館か遺跡を見に行くのね。まったくだまされた感じだわ」
そんなことないです。ホントに素敵なホテルです。
奥さんに是非喜んでいただきたくて選びました。アルゴンヌ ガラス美術館やブノワ・タッサンボトル博物館に寄るのはそのついで・・です。

TGVはムーズTGVで降りた。SNCF/TER 68267に乗り換えてヴェルダンへ進み、そこからTAXIという手もあるが、今回はVTC(ハイヤー)の予約をしておいた。Passavant-en-Argonneという会社がある。ここを利用した。


駅からホテルまではドアtoドアだ。ホテルは1泊にするつもりたので、翌日のTGVまでの送迎はこの会社に依頼することにした。
ホテルはレ ジャルダン ドゥ メスLes Jardins Du Mess
22 Quai de la République, 55100 Verdun,

僕のFB繋がりだ。利用したことはなかったが、FBは好印象だったので、アルゴンヌの森歩きは、ぜひ此処を利用しようと思っていた。

ホテルはマルス川から引き込まれた運河に面してある。ムーズTGVの駅からは40分程度だろうか。La Tour des Plaidsという古い水車を観ながらホテルの横の駐車場に入ってくれるのでレセプションは近い。ドライバーが荷物を運んでくれた。

「すてきね、いかにもフランスな瀟洒なホテルね」
「お気に召してくれてうれしいです。はい」
ロビーに入ると、様々な陶器ガラス類が彼処に飾られている。
「アルゴンヌ県ヴァレンヌの街は、ローマ時代から陶器とガラスの街だったんだ。いまでも市内にはガラス製造/タイル製造/陶器の工房が沢山あるよ。」
「ふうん。それ見に行くの?」
「ん。時間が有ればな」
「あ・そ。時間がね。」
僕らは荷物を部屋に置いてロビーへ出た。自前でウエルカムシャンパンを頼んだ。ANDRE ROBERTだ。
「このあたりは、欧州大陸にある最も大きな平野・パリ盆地の中にある。知恵を付け・技術を得たヒトらは、狩られる者から狩る者へ、次第にオノレの立場を引き上げたわけだけど、それは渓谷を伝わって広がったヒトたちが、川に沿った平野部へ、住処を替えてきたことでもあるんだ」
「狩られる者から狩る者へ・・ってすごい言葉ね。あなたの好きな映画『2001年宇宙の旅』を思い出すわ」
「骨器・石器から宇宙船までは、ただ一歩でしかない。ヒトは幼年期の終わりへ向かって歩んでいるんだよ。その駆け足のようなヒトの歴史の残痕は、旧人にまでこの辺りで遡ることが出来るんだ。
新石器時代も全ての期間がこの辺りには残っている」
「長い間、ヒトたちの揺り籠だったわけね」
「ん。そうだ。とくにアルゴンヌ地方は、太古から交易の技術としてガロ・ベガロ・ベルギー陶器を持っていた。ケルトの民が編み出した産業だ。アルゴンヌ地方は陶器を焼くための灌木を豊富に持ち、特に白亜紀の地層が剝き出しになったところでは、ベースになるローム粘土、地元の岩・ゲイズgaize、密茂していたシダの灰を含む緑色の砂、そして石灰石が容易に手に入ったんだ。だからアルゴンヌの森で作られた壺・陶器は、ローマが来る前から流通していたんだよ。もちろんガラスもね。シャンパニューは、その背景に陶器とガラスの生産地帯として長い歴史をもっていたんだ」
「なるほど~。だから自分たち専用のガラス容器を産み出す素養が最初から有った・・というわけね」
「そのとおりだ。ガロ・ベガロ・ベルギー陶器はローマ人に出会い、彼らが持ち込んだアレティーノ陶器の技法を熱心に取り込んだ」
「アルティーノ陶器?」
「トスカーナあたりで産まれた手法だ。美しい曲線と光沢のある表面、さまざまな神話的な装飾が特徴だ。これらはガロ・ベルジックとしてガリア南部に産まれた陶器文化の中にしっかりと取り込まれているよ。明日は午後からそれを見に行く。アルゴンヌ ガラス美術館だ。」


無くてもいいような話ばかりなんですが・・知ってると少しはタメになるようなことを綴ってみました