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夫婦で歩くブルゴーニュ歴史散歩2-2/アンリ・ジャイエ02

L'Hôtel de Beaune(5 Rue Samuel Legay, 21200 Beaune)に入ったのは夕方。K君が選んだホテルだ。
http://www.lhoteldebeaune.com/
ディナーはホテルで済ませた。
ワインは事前にオーダしておいたアンリ・ジャイエを出してもらった。
「フランスワインの絶対数からいうと、一番は間違いなくラングドックルションだ。おそらく全生産数の1/2くらいだろう。残りはボルドーだ。ブルゴーニュはその1/4位だ。少ない。でも生産者数は多い。1ヘクタールに満たない畑が一杯あるからだ。葡萄は赤はピノノワール/白はシャルドネ中心だ。ガメイとかアリゴテなんかもあるが、ピノ/シャルドネがほとんどだ。
古酒はあるが、比較的若吞みが多い。その辺がボルドーとの決定的な違いだ。値段の幅は、ブルゴーニュの方が大きい。ロマネコンティなんぞは笑って数百万~一千万くらいはする。よっぽどびっくりしたもンじゃなければ、そんな価格のワインはボルドーにはない」
「それだけ遺産者が多いということは地域がボルドーよりひろいんですか?」とK君が聞いてきた。
「いや違う。いま言ったように生産者の畑が小さいんだ。生産量も3000~6000本くらいが多い。
ボルドーとブルゴーニュの生産者の手を見ると、二つの違いがよく判る。
ボルドーの生産者の手は綺麗だ。畑に出たことない手をしている。ブルゴーニュの生産者の手はゴツゴツでまさに農夫の手だ。アンリ・ジャイエはまさに典型的なブルゴーニュの農夫だった。寡黙で無口で、黙々と仕事をこなす男の手だった」
「パリ革命が有ったの」と嫁さんが言った。
「バリ革命?」とK君
「18世紀の終わりにね。それまで葡萄畑は貴族と教会の持ち物だったんだけど、パリ革命でその体制が壊れたの。アンシャンレジュームって知ってる?学校で習ったはずよ」
「すいません。私、世界史は取らなかったんです」
「ダメよ。歴史観無くして思想なしよ」
あらあら僕が言うようなことを言ってる。はは♪黙って聞いて、ワインを飲んでいた。
「パリ革命で、貴族と教会が粛清されたの。全員ギロチンで殺されたの」
「ギロチンで‥マリー・アントワネットは知ってますが、他にも殺されたんですが?」
「どうせマンガでしょ?ベルサイユのバラでしょ」
「そうです」
「ボルドーもブルゴーニュも葡萄畑の持ち主は、みんな殺されたの。そしてその畑で働いていた小作人に仕分けされたの。だから一つの畑で、何十人が持ち主になったのよ。だから小さい生産者が突然増えたのよ。でもボルドーはちょっと違ったの。ボルドーはブルジョアの街だったから、彼らは革命家たちのスポンサーになってたのよ。ジロンド党と言うんだけどね。だから革命で元の持ち主・教会や貴族が殺されると、その土地をブルジョアたちが上手いこと言って自分たちで分けたの。だからボルドーは細かい生産者だらけにならなったわけ。
だからブルゴーニュの畑は農家という意味で『ドメーヌ』と呼ぶんだけど、ボルドーの方は革命前と同じように『シャトー(城)』と呼ぶのよ」
「全然知りませんでした。ドメーヌという名前とシャトーという名前に、そんな理由があったんですね」K君が関心していった。
嫁さんが嬉しそうな顔をしてた。
「それとボルドーとブルゴーニュの違いは使ってる葡萄が全然違うの。ボルドーの赤はカベルネソーベニオン/カベルネフラン/メルローが多いの。ブルゴーニュの赤はピノノワール中心。白はブルゴーニュはシャルドネが中心。ボルドーは幾つかあるけどソーヴィニヨン・ブランが多いわ。いま最初に出てきた白はブルゴーニュの白。シャルドネよ」
「すいません。メモしていいですか?」
「メモする前に飲んじゃいなさい。メモも大事だけど、舌に憶えさせるの。そうするとあとであ!これは・・と判るわよ。ワインは飲み物で有って読み物じゃないってマイクさんがいつも言ってるわ。ねえ?」
「はい、そうです」


無くてもいいような話ばかりなんですが・・知ってると少しはタメになるようなことを綴ってみました