ピエモンテ・ワイナリー紀行#3/バローロもバルバレスコも、ネッビオーロ種しか使用しない
バローロもバルバレスコも、使用する葡萄はネッビオーロNebbioloです。この葡萄を大半の生産者が100%使用しています。混ぜ物をすれば、それはバローロ/バルバレスコではない、という人もいる。
そのネッビオーロ種ですが、今まではピエモンテの原種であると云われてきましたが、最近のDNA鑑定でロンバルディア人が持ち込んだ葡萄であることが分かってきました。
ロンバルディア人は、麦だけではなく葡萄も携えてトルコの北方から、北イタリアに移住して来ていたんですね。
彼らが、灌漑設備を作れない斜面に葡萄を植えていたのは間違いありません。紀元一世紀ころの資料に、ロンバルディア人がこの地域が作っているワインの話がでできます。その特徴が今のバローロにそっくりだからです。...
栽培方式は、おそらく二種類。棚式と、他の樹木に絡ませる。現在利用されている、中心杭を立ててから、それを横に細い縄で繋ぐという方法は、その頃のなごりですね、
それだけ古い葡萄ですから、イタリア全土に広く伝わっていても良さそうですが、そうはいきません。
ネッビオーロの生産地は、あまり広くない。その上、生産地によって名称が違う。これはこの葡萄が、長い歴史を経ている証拠だともいえるのですが、分断・統合・自主統治を再三繰り返したイタリアらしい結果なのかもしれません。
ネッビオーロと呼ぶのはピエモンテ州、ヴァッレ・ダオスタ州ではピクトゥネール。ロンバルディア州ではキアヴェンナスカ。他にもスパンナ等と呼ばれています。
ネッビオーロの特徴は、結実が極端に遅いこと。栽培が難しいこと。そしてそこから作るワインは濃厚でアルコール度も高いが、酸味、タンニンとも強烈であることです。そのため、ワイン作り用に使うにはあまりにも難しいので、他の地域ではほとんど利用されない品種でもあります。
しかしそれを制御出来た生産者が作るワインは素晴らしいものです。色合いは、大樽でじっくりと寝かされるので、色は澄んだワイン色ではなく、茶色が混じった古酒の色になります。味わいは、豊潤・濃密・華麗という言葉がピッタリなワインと化すのです。
バローロとバルバレスコが、イタリアワインの王と女王と言われる理由が良く判りますね。
伝統的なバローロの生産者は、先ず大樽で長期熟成をさせます。それによって酸味とタンニンを落ち着かせるのです。
グラスに入れてエッジを見てみると、その工程を窺い知ることができます。特徴的なオレンジ色が見える。熟成感ですね。それがグラスのエッジに出てくるのです。
しかし所謂モダン・バローロには、それが有りません。マセラシオンを短くしてタンニンの抽出を押さえて、長期熟成しなくてよい方法を採用しているからです。それは現在、世界的な傾向として、ワインの「枯れ」感を嫌う傾向があるからです。
バルバレスコも、バローロと同じく伝統的な製法に拘る生産者は、大樽でワインを熟成させます。GAJAなどがそうですね。それでもやはり時代に即した子樽で早期熟成をさせる方法を採用している生産者も増えてきています。GAJAのような大資本が投入されている生産者と違って、小農家は高価な資本投下は無理だからです。子樽で早期熟成が可能ならば3年も4年も寝かせたくないというのが本音でしょうね。
そんなわけで、ネッビオーロを使用した「バルバレスコ」と名乗って良い生産者のなかに、いくつものバリエーションが生まれてきているというのが現状です。今後は如何なっていくのでしょうか?
無くてもいいような話ばかりなんですが・・知ってると少しはタメになるようなことを綴ってみました