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Ghost of Tsushimaで学ぶ鎌倉時代その1

皆様ごきげんよう!Mike宇治松です。

タイトルでゴーストオブツシマで学ぶとは書きましたが、別にゲームやってなくても読めますので未プレイの人も読んでくれると嬉しいです。読むだけで難関大学レベルの知識がつくと思います。

作中で主人公が伯父上と呼んで慕っている志村殿(誉れ厨おじさん)が御家人地頭という立場で登場するのですが、この地頭という立場をちゃんと理解するには実はいろいろ背景知識が必要になります。

地頭の話をするために、少なくとも荘園制度封建的主従関係(御恩と奉公)については理解する必要があるので今回はこの2つのテーマに触れたうえで地頭の話をしていきます。

荘園について

初期荘園の成立から話をするとめちゃくちゃ長くなりますのでここでは簡単な説明に留めておきます。(より詳しい話は今度別の記事で書きます。)ちなみに荘園について理解していないと鎌倉時代だけでなく室町時代の理解も浅くなるのでめっちゃ大事なところです。

鎌倉時代における荘園で代表的なものは寄進地系荘園と呼ばれるものです。大学入試でもかなり問われるところですが、しっかり理解できている人が少ないところですね。

寄進地系荘園はざっくり言うと、名(名田)と呼ばれる耕地を耕す名主(耕作者として登録された農民)らから荘官層が年貢を徴収し、その一部を領家(貴族など)に納め、領家もまた本家(領家より位が高い)に荘官から受け取った年貢の一部を納入するというシステムです。

なんでこんな面倒なことをやっているのかというと、荘官が国司の課税を免れるためにやっています。

寄進地系荘園の荘官は元々は開発領主で、開墾した土地を所有する経営者でした。しかし国司の課税が年々キツくなっていったため、持っている土地を国司が課税できないような高位の貴族層に寄進して課税を逃れることにしたのです。

開発領主は寄進の見返りとして荘官の地位を得て引き続き現地の経営を行い、みかじめ料的な感じで毎年一定額を寄進先の貴族層に支払っていくことになりました。

領家の上に本家が居るのは、寄進先の貴族の力が弱まって国司の課税を防げなくなった時に、さらに上級の貴族に受け取った年貢の一部を支払うことで利権を維持したからです。

こうして寄進地系荘園は下地(収益権のある田畑などの土地)からの得分(収益のこと)に多くのステークホルダーが群がって中間搾取を繰り返す構造になっていったのです。

荘園で得分を得られる立場のことを職(しき)と言いますが、地頭職は職の一つになります。地頭は年貢の徴収を行いますので役割としては先に述べた荘官とほぼ変わらないです。将軍から認められているかどうかが地頭と荘官の違いだと捉えていただければ基本的にOKです。

封建的主従関係(御恩と奉公)について

御恩と奉公は小学生高学年くらいで習うような話なのですが、通常かなりデフォルメされた説明をされて流されるところなのでここで改めて説明していきます。

まず封建的主従関係(封建制度)という言葉の定義ですが、一般には土地の給与を通じて結ばれる武士の(双務的な)主従関係と定義されます。これでは表現が難しいので義務教育レベルでは「将軍が土地を与える代わりに武士が戦争に参加する」のが御恩と奉公だと説明していきます。

一応それくらいの理解でもだいたい問題は無いのですが、荘園制度をある程度理解できているともう少し先の話に進めることができます。

特に御恩についてですが、厳密な話をすると鎌倉時代の御恩は土地を御家人(将軍の家臣)に直接与えているわけではありません。どういうことかと言いますと地頭職を与えているにすぎないということです。

前述の話で地頭職はあくまで荘園にぶら下がっているステークホルダーにすぎないという話をしましたが、鎌倉時代の御恩は地頭職を授けるというかたちになっていますので、地頭になった御家人は江戸時代の大名のように現地を知行(統治)していいというわけではなかったのです。

ただ実質的には現地を治めていることに変わりありませんので、地頭に認められた領分を超えて知行に近いことをやりだしていきます。それが暗黙の了解の範疇を超えて荘園領主(本家)とぶつかりだしたりするとこれを地頭の荘園侵略などと言ったりします。(本家に年貢を払わないとかやりだします)

地頭の荘園侵略と地頭請・下地中分

特に承久の乱(1221)の後くらいからはこうした地頭の荘園侵略が頻発します。一応新補率法(1223)11町につき1町の免田(給田)(地頭の収益になる土地)や段別5升の加徴米(地頭のポケットマネーになる年貢)など地頭の得分に関するルールは作られてはいましたが、徐々に決められた範囲を逸脱するようになり荘園領主が地頭を訴えるということも珍しくはありませんでした。

ただし鎌倉時代はこのような所領に関する裁判が非常に多かったので、裁判ということになると非常に長引くことになります。裁判が長引くということはその間荘園からの年貢が入ってこないということになりますので、荘園領主にとってはかなり厳しい事態です。

そこで裁判でなく示談で済まそうという流れになり、その方法は主に2つありました。一つは地頭請、もう一つが下地中分です。

まず地頭請ですが、こちらは年貢さえ支払ってくれれば地頭の現地支配を完全に認めるという取り決めです。荘園領主は従来の収入を確保できますし、地頭は大手を振って農民から搾取することが出来るのでWinーWinですね。(農民にとってはたまったものではないですが)

次に下地中分ですが、こちらは下地を半分に割って地頭が統治可能な地域と領家の持ち分を分ける解決方法です。こちらでも地頭分とされた地域においては従来地頭に認められた領分を超えた支配が可能になります。いずれにせよ農民が割りを食うことになるのは変わらない感じです。

このような背景を考えると、誉れ厨さんは超まともな地頭ですね。(ゆなへの当たりは強いけど)

ということでゴーストオブツシマ解説シリーズ第一弾でした。反応良さそうならまた続きを書きますので、気に入っていただけたらぜひフォローなどお願いします。

P.S. ちなみに私は誉れのかけらも無い闇討ち冥人マンでした。志村殿すまねぇ…


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