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私と祖父とクレッセントハウス

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「古き良き時代」の面影を、現代までそのままに残したクレッセントハウス。2020年、ついにその歴史が幕を閉じます。様々な想いを胸に、作家として大きな影響を受けたこの場所についてを、… もっと読む
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#レストラン

「鹿鳴館の夜」案内と食器、メニューで見るレストランクレッセントの歴史(4)

第4回 鹿鳴館の夜 ご案内 謹啓 爽秋の候益々御清祥のことと御喜申し上げます。クレッセントハウスの年中行事「鹿鳴館の夜会」も好評裡に回を重ね第4回を迎えることとなりました。本年は、明治31年(1898年)7月11日ロシア国キリウ・ウラジミロウイッチ大公を閑院宮載仁親王殿下が接待された時の献立を再現致したいと存じます。ご承知の通り、当時の帝制ロシア宮廷に於ける食卓は、フランス ルイ王朝時代の流れを汲み贅をつくしたもので、その国の皇族を招く宴席の献立には、当時の司厨部員はさぞや

「鹿鳴館の夜」案内と食器、メニューで見るレストランクレッセントの歴史(3)

候益御清祥のことと御慶び申し上げます。 扨クレッセントハウスの年中行事「鹿鳴館の夜」も、御陰様にて毎回好評理裡に回を重ね第3回を迎えることとなりました。 本年は、明治26年(1893年)当時陸軍軍医総監であった私の祖父が遺しました、その年11月4日宮中招待宴のメニューを復現して御覧に入れたいと存じます。(因に明治26年は日清戦争の前年に当たり、清国や朝鮮との外交関係は正に一触即発の状態にあった年であります。) 今年の晩餐会を計画するにあたり、私共は極力前回迄の経験を生かし、こ

「鹿鳴館の夜」案内と食器、メニューで見るレストランクレッセントの歴史(2)

謹啓 菊花の候皆様方におかれましては益御清祥のことと御慶び申し上げます。 扨去年の十一月三日文化の日より三日間にわたりクレッセントハウスに於いて明治時代鹿鳴館の西洋料理を復刻再現し御賞味戴きました お陰様にてこの催しは大変なご好評を得、毎年同じ様な夜会を計画する様にとの強いご要望が御座いましたので、別記の日取りを以て第二回鹿鳴館の夜晩餐会を開催させて戴きます 本年はたまたま今から百年前一八七六年(明治九年)の英国に於るメニューが手に入りましたので、この献立を織り込んだ明

「鹿鳴館の夜」案内と食器、メニューで見るレストランクレッセントの歴史

鹿鳴館の夜 ご案内 謹拝 爽秋の候益御清祥のことと御慶び申し上げます。  このたびレストランクレッセントは明治時代鹿鳴館の西洋料理を復刻再現して皆様に賞味して戴く夜会を計画致しました。と申しますのは、私の祖父が明治初年から宮中広島大本営鹿鳴館などに招待されました時の招待状やメニュー類、数十葉が、幸に戦火を免れて遺り、しかも偶然私が戦後レストランを経営することとなりましたので、開業1周年記念に私の祖父がこれらを贈って呉れましたので何時の日かこの明治メニューの一つを再現して見