見出し画像

オンライン&電話取材で注意したいこと

新型コロナの影響で、これまで対面で行われていた取材業務がオンラインあるいは電話にシフトし始めています。これは恐らく、事態収束後も1つの形として残ることでしょう。取材業務を主に行ってきたライターなら、こうした遠隔での取材スキルは必須となりそうです。

実のところ私は、以前からよくオンライン取材を行っていました。東北地方など遠方企業との取引が多く、有難いことに「遠隔でも良いから頼みたい」と取材依頼を受けることが多かったのです。そのため、さほど違和感なく現状を受け入れて仕事に取り組んでいますが、なかなか慣れないという方も少なくない様子。また、仕事を頼む側にも対面と遠隔での違いをいまいち理解できておらず、いざ取材となってトラブルが起きることも見られます。

そこで、ちょっと自分なりに「知っておいた方が良さそうなこと」をライター・依頼者双方の目線からまとめてみました。本来スキル系は有料noteにしているのですが、少しでも新コロで困っている方の役に立てれば...ということで無料公開しています。最近は「仕事がなくて困っている」というライターからの声も聞かれるようになり、少しでもお役に立てれば。

音声環境を左右する3つの要素

遠隔で取材する際、大きな課題となるのが音声環境です。相手の声が聞こえにくい、あるいはこちらの声が上手く相手に届いていないと、上手く取材が進みません。場合によって発言内容が正しく伝わらず話が意図しない方向にずれたり、原稿を作成した段階で「こんなこと言っていない」とトラブルに繋がる可能性もあるでしょう。そのため、できる限りクリアにお互いの音声を届けるために、以下3つの要素を確認しておくことが大切です。

1)通信環境
通信が弱いと音声が途切れたり、途中で落ちてしまったりすることがあります。例えば自宅のインターネット回線がマンションで共用だったり、電話でMVNOを使用していたりする場合は注意してください。マンション共用のインターネットは、利用者が多くなるほど回線が弱くなります。MVNOは通信が不安定で大手キャリアに比べると弱いため、取材用としてはあまり適さないでしょう。

2)マイク
マイクの性能だけで、相手に聞こえる音声の質は大きく異なります。中にはスマホに付属していたマイク付きイヤホンを使用したり、そのままパソコンに向かって話したりしている人がいるかもしれません。しかし取材を行うのであれば、性能を重視して専用のマイクを揃えた方が良いでしょう。

3)イヤホン/ヘッドホン
相手の声を正確に受け取るには、マイクと同様に性能の高いイヤホンやヘッドホンも揃えたいところ。周囲に誰もいない環境ではスピーカーでそのまま音声を出したくなるところですが、音が反響したり相手に自分(=相手自身)の声が聞こえてしまったりすることがあります。特に長時間の取材が発生するなら、付け心地も重視しておきたいところです。

取材内容の録音方法

対面取材では、多くの方がICレコーダー(あるいはスマホの録音アプリ)を使用して音声を録音しています。これは原稿作成の段階で聞き返すなど、質の高い仕事をするうえで必須と言えるでしょう。

遠隔での取材においても、やはり音源は録音しておきたいところ。そのためのツールも、あらかじめ用意しておきましょう。電話取材なら通話録音できるアプリをインストールしたり、オンラインなら録音機能のあるツールを用いて取材したり。また、はじめて遠隔取材するなら、事前にちゃんと録音できるか試しておくことも大切です。

例えば対談など複数名の取材を行うとき、取材相手だけは会議室などに集まり、ライターなど外部関係者だけが遠隔ということがあるかもしれません。こうしたケースでは自身で録音するだけでなく、できるだけ現地で録音してもらって音源データを受け取るようにすると良いでしょう。やはり通話音源より、その場で直接録音した方が音声がクリアになります。

対談取材はファシリテーションが重要

1対1の取材に比べて、対面取材は難易度が上がります。ここで重要になってくるのが、上手く取材を進行していく“ファシリテーション”スキルです。対談者の発言に耳を傾けつつ情報を引き出し、流れを整理しながら発言を促していく。会話を遮ってしまわないよう、こちらから発言する際にはタイミングを見計らうことが重要です。そしてこのファシリテーションは、オンラインになるとより難しくなります。

オンラインの場合にはどうしても音声の遅れが生じたり、上手く発言者同士が会話を聞き取れていなかったりすることがあります。これを、こちらも離れた場所から察知して調整を取りつつ、ちゃんと取材が完結できるように進行しなければいけません。ファシリテーションが上手くいかないと対談者をイライラさせてしまったり、いざ取材が終わって必要な情報が引き出せていなかったり。これでは、プロとして役割を果たせていません。「対面とは違う」ということを十分に理解し、対策するようにしてください。

例えば事前に質問事項を明記した進行表を作成し、基本的にはそれに沿って話してもらう。もちろん必要に応じて深堀したり話を広げたりしますが、ライター側もこれから脱線しないよう進行するのも一つの方法です。事前にQ&Aで質問項目を送ってざっくり回答を受け取り、これを見ながら進めるのも良いでしょう。もし対談者が現地にいる(ライター等の関係者だけが遠隔)のなら、ファシリテーションはライターではなく現地にいる誰かにになってもらうよう相談した方が良いかもしれません。

背景や家族の映り込みに注意

オンラインでは自分だけでなく、カメラによって周囲の映像まで相手に届きます。できれば見られても問題ない場所を選ぶか、背景を設定しておきましょう。ただしオンライン飲み会などを行っていると、仕事にふさわしくない背景を使用していることがあります。そのまま取材の際にもその背景を映してしまえば、相手に不快感を与えてしまうこともあるでしょう。背景は使い分けと事前の確認が大切です。

また、たとえば自宅で背景を使わず取材する場合、ふとしたタイミングで部屋の中(特に散らかっているなど)や移動してきた家族が映り込まないようにしましょう。ただ生活感が出て相手から不快に思われることは少ないですが、映り込んだ映像が気になって話が途切れたり、取材に集中できなくなったりするかもしれません。できるだけ誰も入ってこられないよう個室を使い、カメラに映す以外の場所もできるだけ整理整頓しておいてください。

ちなみに「立ち上がったら下半身がパンツ一丁だった」なんてトラブルが少し前にSNSでも話題になりましたが、服装も対面と変わらず整えておくことが大切です。

遠隔で取材を依頼しない方が良い場合もある

取材内容によっては、あえて遠隔で外部に取材を依頼するより、現地に同席できる社内スタッフが担当した方が良いケースもあります。例えばフォーマット(=聞くこと)がすでに固定されていたり、事前にある程度の情報をアンケート等で収集済みだったり。あるいはテーマについて自由に話してもらい、その内容に応じて原稿化するような案件もこれに当たります。営業担当者など“聞き手”としてのスキルがあれば、必要な情報を十分に得られる可能性は高いでしょう。むしろ、いきなり見ず知らずのライターに顔も合わせず取材されるより、気心の知れた社内スタッフの方がざっくばらんに色んなことを話してくれることだってあります。ライターとしては「そんなこと言ったら仕事が減ってしまう」わけですが、敢えて加えておきました。

ただし「聞き取った内容を原稿として仕上げる」ことは、やはりライターが秀でています。そのため、取材音源をデータで送り、原稿制作の部分だけライターに依頼するのも一つの方法です。実際、私はこれまで新型コロナの以前から、たくさん同様の依頼を受けてきました。実際には私自身が対応するというより法人として受けて外部のパートナーに実作業を行ってもらうケースが多いのですが、コンテンツとして問題ないクオリティのものが仕上がっています。ライターの役割、あるいは取材の形もまた、こうして多様化していくのではないでしょうか。

オンライン&電話取材は対面より難しい

オンラインや電話だと、例えばこれまで取材案件の少なかった地方でも対応できるようになります。中には居住地の関係から、取材業務に挑戦する機会が少なかったという人もいるでしょう。その場合、場所を問わずに“取材案件”を受けられるということで、これまで取材経験がない(もしくは少ない)ライターでも「これはチャンス」とばかりに依頼獲得へ動くかもしれません。しかし残念ながら、そう上手くはいきません。

オンライン&電話取材は、対面より難しい面が多いでしょう。オンラインなら顔は見えますが、やはり細かな相手の反応を十分に把握しながら取材することがとても困難です。また、前述したように音声が途切れたり発言にタイムラグが生じたり、お互いの音声が上手く聞こえなかったり。対面取材では起こらないことが発生します。それでも臨機応変に対応し、取材を完結させることは容易ではありません。取材経験のない(あるいは少ない)人が「大丈夫だろう」と安易に受けると、結果的に取材あるいは制作物のクオリティが低く、ライターとしての評価を下げかねません。

今後はライターだけでなく、依頼元側もはじめてオンラインや電話取材を実施するというケースが増えるはずです。そうした場合、ここで取り上げた注意事項などは、やはりライター側から伝えてあげられるのが理想でしょう。そのうえで実施となれば、あとは期待以上の結果を残せるよう全力を尽くすのみ。取材を依頼する、あるいは受ける方々にとって、少しでも参考になれば。私も個人・法人とも、今後も柔軟にさまざまな取材やライティング業務に対応していきます。

ナレッジ・リンクス株式会社
“走る”フリーランス

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?