『陸と海 世界史的な考察』カール・シュミットを読んで 読書めも
今読んでいる本『陸と海 世界史的な考察』の読書メモを書く
この間書いた『アイデアのつくり方』に続く個人的スマッシュヒット本だ。
最近はいい本に巡り合う確率が高まっていて気持ちがいい。パチンコが当たってる時っていうのはおそらくこんな感覚なんだろう。
(こっちの記事も読んでね)
全体を追うわけではなく、あくまで僕が面白いと思った箇所のメモなので、気になった人は購入されたし
Kindle版は出てないから紙の本で購入されたし
面白いと思った箇所のメモの前に、ざっくりとこの本がどんな本なのかを紹介しておこう。
この本は分類でいうと「地政学」の本だ。
「地政学」とは、
「地政学(ちせいがく、英: Geopolitics:ジオポリティクス、独: Geopolitik:ゲオポリティク、仏: Géopolitique:ジェオポリティク)は、地理的な環境が国家に与える政治的(主に国際政治)、軍事的、経済的な影響を、巨視的な視点で研究するものである。」(Wikipediaより)
つまり政治における地理の重要性を研究する学問のことだ。
この本も例に漏れず、歴史上の覇権を取ってきた国たちの地理的な状況との関連性を指摘している。
特にタイトルにもあるように「陸と海」との対立構造に目を向けながら展開されている本だ。
○エレメントという概念
まずはこの本の論が展開していく上での、基礎的な概念について書く。
本書では「エレメント」という概念を基盤にして論が展開されていく。
「エレメント」について簡単に説明すると
「自然界には土・水・空気・火の4つの根源的なエレメントが存在する」
「自然界に存在するあらゆるものは、この4つのエレメントのどれかに属する」
というものだ。
遊戯王のモンスターカードが全てどれかの属性に当てはめられているように、自然界でも全ての物事がどれかのエレメントに当てはめられているのだという。
「なぜこの4つが根源的なエレメントなのか」とか「水は水素と酸素からできてるから全然根源的じゃないんですけどwww著者バカすぎwwwww」とか思うかもしれないが、これらについても本文では触れられているので、気になる人は読まれたし。
○ビヒモスとリヴァイアサン
上記のエレメントの概念を、地理学・地政学上に応用した概念が「ビヒモス」と「リヴァイアサン」だ。
語源はもちろん神話上の怪物。ファイナルファンタジーに出てくるあいつらのことだ。
4つの根源的エレメントよりも、こちらが本書においてはメインとなる概念である。
本書において
ビヒモスは「内陸国の強国」、リヴァイアサンは「島国の強国」の表現として用いられている。
ビヒモス=陸のエレメント(土のエレメント)の強大な存在=内陸国の強国
リヴァイアサン=海のエレメント(水のエレメント)の強大な存在=島国の強国
ということだろうか。
本書は主に戦争にフォーカスした本であるため、「陸戦に強い国」と「海戦に強い国」と言い換えてもいいかもしれない。
本書はこの「陸の国」(ビヒモス)と「海の国」(リヴァイアサン)の戦いの歴史として世界史を考察していく本である。
○本書が書かれた目的
基礎的な概念の次は背景である。
全然本論に入っていけないが、基礎的な概念と背景が面白かったのだから仕方がない。
特に背景については「背景を理解してから本を読むと面白さが増大する」ことを教えてくれたので、むしろ本論よりも大きなものを収穫させてくれた。
知らん学者が書いたビジネス書とあなたが好きなブロガーが書いたビジネス書を読むのとではモチベが違うみたいなあれだ。
あれを「たまたま好きな人が本を出す」ことに頼らず、自分で収穫することを僕はこの本で覚えたのだ。
さて、この本の背景についてだが、この本の著者「カール・シュミット」は
「ナチスが政権を獲得した1933年からナチスに協力し、ナチスの法学理論を支えることになる。しかし、ナチス政権成立前に、著書『合法性と正統性』において、共産主義者と国家社会主義者を内部の敵として批判したことや、ユダヤ人のフーゴー・プロイスを称賛したことが原因で、1936年に失脚する。」
こんな経歴の持ち主である。ナチスドイツに協力していた偉い学者なのだ。
そしてこの本も、そんなナチスのために書かれた本であるとされている。
当時のナチスは、「拡張思想」をもとに領土を広げることに尽力していた。そしてその矛先はポーランドやズデーテン地方(今でいうチェコのあたり)などの隣接した国に向いていたのである。
そんなナチスに対して「ナチスはもうすでに陸においては十分にビヒモス(強国)だ!だからこれからは隣接国に侵攻するのではなく、海のエレメントに目を向け、リヴァイアサンを落とすべきである!」と主張したのがこの本なのである。(出版前にシュミットは失脚しているが)
そのため、「陸のエレメントだけに目を向けていてはこれからの戦争には勝ち残っていけない」という背景のもと、海のエレメントが戦争に与えてきた、そしてこの先与えるであろう影響についてをシュミットは述べているのである。
両方のエレメントを押さえておけば国としての力がぐんと上がる。
デュエル・マスターズで言うなら、2色のマナを用意しておけば「レインボーカード」でさらに戦略が広がるみたいなものかもしれない。違うかもしれない。
○エレメントの展開の歴史
本書においては上述のように「海のエレメントの重要性」を語っているシュミットだが、「この先の戦争では海のエレメントすら時代遅れのものになるかもしれない」としている。
シュミットは人類の歴史および戦争の歴史を「エレメントの展開の歴史」であると示唆していた。
エレメントの展開の歴史とは戦争における戦場は「土→水→空気→火」へと広がっていくことを示し、これは「陸戦→海戦→空戦→核」という現実に起こった戦争の歴史と一致している。(ちなみに空のエレメントの怪物は「ツイーツ」。Twitterの鳥との関連は不明)
シュミットは陸と海のエレメントの重要性が下がり、新たな戦場が現れるのを予見していたのである。
これを武器や戦闘機の開発などからではなく、地理的な「人間が暮らす空間の広がり」から予見していたのがすごいと思った。
いま我々はインターネットという4大エレメントの先に位置する空間に足を進めたが、「人間が暮らす空間が広がった」ということは、ここももちろん戦場になると言うことなのだろう。
ということで今回のメモはここまで。本論には一切触れていないが、まあいいだろう。
この先は本当にメモ。僕が気になるな〜思った問いを書くだけ。
・ナチスの侵攻ルートは、実際どうだったのか?
・島国以外はリヴァイアサンになれないのか?海に接している面積が広ければリヴァイアサンになれるか?
・リヴァイアサンには造船技術が求められるか?
・リヴァイアサンが生き残るために用いた戦略は日本でも使えるか?
など
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