断るときは二度と来ない覚悟で断る。
【来た仕事を断るときは、そこから二度と依頼が来ないと覚悟して断れ】
私はフリーランスのイラストレーターです。
クライアントから仕事の依頼を頂くと、本当にありがたく思います。
でも、スケジュールがキュウキュウだったり
ごくたまに仕事内容と原稿料とがあまりにも見合わない時
断ろうかな・・と頭によぎることがあります。
そんなときに冒頭の言葉を思い出すのです。
これは数年前に急逝した装丁家 T氏の言葉。
Tさんは私の会社時代の大大大大大先輩で、
先に会社から独立されて、私がフリーランスになってからも
何度も装画の仕事をくださり懇意にさせてもらいました。
Tさんはよく
『仕事の依頼を断るんなら、もう二度とそのクライアントからは仕事が来ない。
そのくらいの覚悟をして断らなあかんで〜』
と言っていました。
ずっと肝に銘じています。
しかし。
父が入院して容態も悪く、もうそんなに長くない……と連絡があったとき。
母が東京の施設へ入所が決まって、あの実家で過ごすのも残り少ないとわかった今。
仕事をいくつか断りました。
クライアントの皆様。ごめんなさい。
仕事も大事だけど
やっぱり親が大事でした。
仕事は頑張れば後からとり戻せるけど
親との日々は、時間は、二度ととり戻せないのです。
この後悔は、ある母のメモを見つけたから。
おととしの年末。
例のアレで久しく実家に帰省できなかった私は
今回こそはと帰省するつもりでいたのに
前夜に風邪をひいて寝込んでしまったのです。
翌朝、母に「もう帰れない」と電話したものの
母はデイケアに行くためにバタバタと用意をしてて
私の話もそこそこに電話を切ってしまいました。
イヤな予感は的中。
夕方母から「あんた、今どこに居るん?」と電話がかかってきました。
ごめん、風邪ひいてもう年末年始は帰れん。
母には可哀想なことをしたなぁと思いました。
そして。先日のことです。
実家に帰省した時に、居間の長火鉢の引き出しをゴソゴソしてたら
母のメモが出てきました。
【〇〇、お帰りなさい。デイケアに行っております。
4時半〜5時頃に戻ります】
そしてその文字の脇に別のペンで小さく
【12/30 〇〇、帰れなかった】
と書かれていたのです。
これを見つけた時、ああ、時間を巻き戻したい……と
風邪を引かず、元気に母とお正月を過ごした世界線に戻したい……と
心の底から思いました。
仕事も大事。だけど、もっとかけがえのないものもあります。