スウェーデンと家族と音楽と
「雷は素晴らしいね」
夕方からいつもより早いスピードで空が暗くなり始めた。
しばらくするとおなかがグゥっとなるような音が外から聞こえ始めた。空気も湿ってきたし、重くも感じる。
雨が降るな
と思った瞬間にいきなり稲妻がひかり、ドッカーンと雷が落ちた。
普段フィールドレコーディングをしてそれを音楽に取り込むというエレクトロニクス作曲も職業にしている私らうか50歳になりたて。雨が降り出す前のあのゴロゴロ音のところでRECボタンを押したかったが間に合わなかった。ワクワク感と残念感を頭の中で処理していると、部屋の中を落ち着かなそうにゆっくりとうろうろしている家族に気がついた。
こういう変化をしばらく前から感じていたのが我が家のビビリでマッチョの「イメこ」、6歳のスウェーデン犬、ちなみに雄犬。
彼の変化に遅ればせながらようやく気付いた私。犬お菓子を取り出す。
毎年、年の変わり目のカウントダウンの時間あたりから、あっちこっちで花火が上がり始める時間から、試し撃ちの不意打ちでドーンとなるたびに、美味しいらしい(結構臭い)イメこが大好きなエビ味の犬用お菓子をあげる。そうすると10発目くらいで、ドーンとなると尻尾を振って「それくれよ、ラブリーママ❤️」モードに変わる。
今回もそれを試したらしばらくしてスースーと眠りについた。まさにビビりだけどマッチョな我が家の犬。
うちの子供達は小さい時、雷がなると静かにピタッと身を寄せてきていた。だけど12歳と14歳ともなると、いつもと変わらず携帯を見たり音楽を聞いたりしている。Bluetoothだったら雷落ちるかもしれないから消しなさーい!といっても、窓のそばから離れなさーい!といっても、流し目でチラッとこちらを見るだけで聞いてもくれやしない。しつこく言ってると、上の娘が、「ママの時代は電話回線から電気が逆流した、とかファックスが壊れたとか言ってたけど、今は時代が違うよ」という。
その瞬間に下の息子が「What? ファックスってなに?」という。
その瞬間、ここが出番と言わんばかりに割り込んできたのが私の旦那、ルーディー52歳。おしゃべりが大好きだけど自分で決断するのがとても苦手なので、いつも何かしら聞いて責任逃れ術を実行している。
「週末に粗大ゴミを捨てに行った方がいいよね」、「病院のアポイントメントとった方がいいかな」、「これは捨てていいかな」、「友達家族を今度招待したほうがいいかな」と何をするにも質問型。私は、そうだね、でも今はそれじゃなくてこうしたら?とかいうもんなら、数分にわたって考えた過程を説明してくる。
じゃ聞かないで行動すればいいやん!結果だけ教えてくれればいいやん!手伝って欲しい時にだけ言って!というと目に涙を溜める。そんな彼は私がこれ手伝ってとお願いすると絶対に「いいよ」と言ってやってくれる。いい意味でも悪い意味でも「えらい」人。
そんな濃いスウェーデン人ルーディーが、ファックスという言葉が出てきた瞬間にその機能のことを長々と息子に話し出した。しばらくすると話し切ったのか、清々しい顔をしている。みんな聞き飽きていたけど、「やっぱ家族っていいよね、みんなでこうやって話せるのは素晴らしいことだよ。 雷は素晴らしいね。」
そして、「携帯が常にある世代ってのは。。。。。」とまた話し始めた。