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介護をしていたら、最期まで幸せそうに生きる人の共通点が見えてきた。


人生の最期を、どんな風に迎えたいですか?


私はできれば、陽の当たる部屋で、数人の自分が大切にしてきた人に見守られながら最期を迎えたいと思っています。


介護の仕事をするまでは、それは自分が望めば叶えられることだと思っていました。

でも、理想の亡くなり方を叶えるのは本当に難しいことです。
その時の家族の生活の状況や、自分の容体が悪くなるスピード、どのような体の状態で亡くなるかなど、自分と周囲のいろんな要素がぴったりかみ合ったときに、穏やかな最期を迎えることができると感じています。


それが分かってからは、理想の最期を想像はするけれど、最終的には運に任せるしかないな、と思うようになりました。

ところが、仕事を続けていくうちに、理想の最期を叶えるのは難しいかもしれないけれど、年をとっても幸せに生活することなら目指せるかもしれないと思うようになりました。

それは、他の人と同じ暮らしをしていても、幸せそうに生活しているお年寄りたちに出会ったからです。

一般的な社会では、「なぜあの人は幸せそうなのか?」という問いの答えを出すのは難しいかもしれません。個人個人の家族構成や住んでいる場所、仕事の内容など、生活の状況が大きく異なるからです。

しかし、施設の暮らしでは、入居されている人は(それが良いことかは別として)ほとんど同じような間取りで、同じご飯を食べ、同じ生活サイクルで生活しています。
それぞれの人にあった生活を作りたいとは思いつつ、皆さんほとんど同じ暮らしをしているのが現状です。
そんな中で時々、とても幸せそうに生活している人に出会うことがあります。

他の人と同じ生活を送っていても、幸せそうに暮らしている人にはどんな共通点があるのでしょうか?

1.できることは自分でやろうとする

施設で暮らす、ということは、「くらしをサポートするための人がそばにいる中で暮らす」ということでもあります。
自分が病気だったり、年を取って体を動かすのも面倒だ、となると、できることでも職員に頼りたくなってしまう人もいます。

幸せそうな人は、ちょっとできなさそうなことでも自分でやろうとする人が多く感じます。
むしろ私たちが「それは手伝いますから…!私たちを呼んで…!」と思うくらいに。

また、私たちが食器洗いなどのお手伝いをお願いした時にも「やりましょうよ!」「こんなことならいつでもやりますよ!」と前向きな返事をしてくださる方が多いです。

2.前向きな感情を口に出して言う

トイレを手伝ってくれた職員に「ありがとう!」
おやつを食べたら「おいしい!」
お風呂に入ったら「きもちいい!」こんなお風呂初めて!」
というように、前向きな感情を口に出して言う方が多いように感じます。

生活のお手伝いをする中で、前向きな言葉をかけてもらうことは決して多くはないので、前向きな言葉をかけてもらえると私たちもうれしくなります。

3.年齢を理由に好きなことをあきらめない

幸せそうな方は、好きなことを続けていることが多いです。
おしゃれ、お酒、草花を育てること、編み物…
宗教などを通して自分の心の拠り所を持っている方も心が安定されている方が多いように感じます。

90歳を超えた方が「こんな派手なのおばあさんが着たらおかしいんじゃない?」と花柄のワンピースを持って言っているときなんかは、
そんなことない!むしろいい!!!100歳になっても着たらいい!!
と思っています。

4.自分ができないことを受け止められる

日常生活はこれまでの知識に支えられているので、脳の引き出しが開きにくくなってくると生活のあらゆる場面で今までの自分なら考えられなかったようなミスが起こってきます。
服を着るときにシャツとセーターのどちらを先に着たらいいのか、
歯ブラシを手に持ったけれど、これはどこをきれいにするものなのか、髪をとかすもの?洗面台?それとも…?

当たり前にできていたことができなくなる過程で、自分が受け入れられなくなり落ち込んでしまう人も多くいます。

幸せそうに生活している人は、私たちが使い方を伝えると、
「そうなんですね、ありがとうございます」とまっすぐに受け入れてもらえる方が多いように思います。
「やだ~~こんなのもわかんなくなっちゃって!ありがとね!」と自分を茶化すような反応をする方もいます。

できないことを真剣にとらえすぎず、ちょっと茶化すくらいの方が自分の内面の健康を保ちやすいのかもしれません。

年を取るまでに身に着けておきたいこと


お年寄りと日々を過ごしていると、年を取ることっていいこともあるけど残酷なことの方が多いと感じます。

自分ができていたはずのことが日に日にできなくなり、ここはどこなのか、目の前にあるものは食べ物なのかたべられないのか、あなたはだれで、そもそも私の名前は何だったっけ…?
当たり前だと思っていたことがどんどん零れ落ちていく日々を過ごすのは、とてもつらいことだと思います。

年を取って、年を取って、もっと年を取った時。
自分がこれまで築いてきた資産や、仕事で成し遂げたことなどは、生活の中でほとんど意味を持ちません。
年を取った時にこれまでの仕事でその人が評価されることはないですし、そもそも自分が何の仕事をしていたか忘れてしまうこともあるのです。

全てを忘れてしまっても、最期まで残るのは人柄なんだな、とお年寄りと暮らしていると感じます。

人生の最期まで幸せに生きられる人は、日々の生活の中で自分の喜びを見つけ、できないことは心を開いて周りの人を頼れる力をこれまでの暮らしの中で身に着けてきた人なんだな、と思うのです。



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