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【マッスル・イン・ザ・ファクトリー】 5 (忍殺TRPGソロアドベンチャーシナリオ3より)

前回までのあらすじ:突如消息を絶ったヘルカイトを追い、サポートドロイドD6と共にザイバツのアジトへ潜入したソウカイニンジャ、プレートメイル。辿り着いた49階でUNIXをハッキングし、ザイバツの潜伏エリア情報を入手することに成功するも、同時に部屋の隠し扉が開く。果たして中に待つものとは・・・?

【マッスル・イン・ザ・ファクトリー】 5

プレートメイルが鉄扉の中に入り込むと、センサーが反応してLEDボンボリが点灯し、タタミ四枚半ほどの小さな部屋を照らし出した。塗装もされないむきだしのコンクリートで囲まれており、頑丈な鉄格子が部屋を中央から半分に区切っている。 (やはり監禁用の牢屋か・・・グフッ!?) その鉄格子の向こう、ぞんざいに敷かれたボロボロのタタミの上にうずくまっているのは、血まみれのニンジャだ。

(もしや、ヘルカイト=サン!?) 血まみれのニンジャはピクリとも動かず、俯いた顔からは何の表情も伺えない。ナムサン、死んでしまったのか・・・ (いや、あれは生きている筋肉だワイ!) オフホワイトのニンジャ装束は血で赤く染まり、ボロボロに切り裂かれてはいたが、そこから覗く鍛えられた筋肉は素晴らしいハリを保っている。生きている!だが危険な状態だ!

「ソウカイヤの…救援か……?」 ニンジャは俯いたまま掠れた声で呟いた。気力だけで搾り出している声だ。一刻の猶予も無い。まごまごしていれば筋肉が失われてしまう!扉そばにかけられていた鍵で錠前を開け・・・ (グフ、念には念を)

「D6=サン!ヘルカイト=サンと思しきニンジャを発見した!確認を頼む!」 言い終わる前に飛び込んできたD6は血まみれのニンジャを確認すると、飛び跳ねるように激しく上下。肯定、そして喜びのゼスチュア。本物のヘルカイトだ!プレートメイルは錠前を開け、ヘルカイトを助け起こして応接室へ運び、UNIX机前の椅子へ腰掛けさせた。

「ありがたい。偵察中に不意を打たれた。ここはザイバツのアジトだ……!」 「グフ、どうか喋らずに!体力が失われますワイ」 朦朧としながらも報告を行おうとするヘルカイトを制しながら、プレートメイルは部屋を見回す。今すぐ手当てが必要だ。可能ならば即効性のあるZBRアドレナリンが望ましい。ここが拷問に使われる部屋ならば、殺さず情報を得るために、必ず医療品が備えてあるはずだ。

「グフ、あれか・・・?」 プレートメイルは壁にかけられた鏡に手をかける。ブルズアイ。鏡の後ろには隠し金庫があり、中にはZBRアドレナリンや包帯などの医療キット一式が入っていた。 「しばらくのご辛抱を・・・」 プレートメイルはヘルカイトにZBRを注射し、負傷箇所の消毒や止血を進めていく。D6はその様子を見ながらLEDを明滅させ、落ち着かない様子で上下に揺れた。

(グフフ、ポージング拉致監禁の経験がここで活きるとはな) モータル時代のプレートメイルは筋肉承認欲求に餓えると、よく一般人を拉致してはこのような廃工場や廃ビルに備えられた隠し牢屋に監禁し、思うさまポージングを見せつけていたものだ。

この手の部屋の作りは大体共通しており、医療品などの隠し場所もさほどバリエーションは無い。時には備蓄したまま忘れ去られた大量のZBRを手に入れることもあった。そんな時は被害者の監禁日数を大幅に延ばすことができ、彼のポージング・ライフは大いに充実したものだった。

「グフゥー・・・」 一通りの手当てを終え、プレートメイルは息をついた。あとはヘルカイトのニンジャ回復力次第だ。『ヘルカイト=サンを発見。負傷しており、治療が必要。至急救護班の手配を』 IRC端末でノーティスを送る。続いてUNIXを見る。抽出完了までまだ少しかかりそうだ。焦りを落ち着かせるため、静かにリラックス・ポーズを決める。

「フゥーッ・・・見ない顔だな・・・ニュービーか?」 かけられた声の力強さに驚いて振り向くと、ヘルカイトはすでに椅子から立ち上がっていた。ZBRを使ったとはいえ、なんという回復の速さ。なんという力強き筋肉。 (グフ・・・これがシックスゲイツの筋肉か) プレートメイルはソンケイに打たれながらポージング・アイサツを決めた。

「グフフ・・・ドーモ、はじめましてヘルカイト=サン。プレートメイルです。」 奥ゆかしく控えめなサイド・チェスト。目上のニンジャに対して威圧的なポージングはシツレイにあたる。 「ドーモ、プレートメイル=サン。ヘルカイトです」 ヘルカイトはしっかりとしたアイサツを返す。もはや完全に持ち直した様子だ。D6が嬉しげに揺れる。

「グフフーッ、ただ今IRCで救護班を要請しました。ザイバツの関与もすでに報告済みですし、遅からず増援も到着しましょう。どうぞしばらくお待ちを・・・」 「いや、その必要は無い。すぐにでもラオモト=サンに直接報告せねば」 ヘルカイトは隅に置かれていた背負い式カイトを装備すると、窓を開け放ち、身を乗り出した。

「プレートメイル=サン。お前は増援と合流して状況を報告し、そのまま撤退しろ。ニュービーの手に負える事態ではないからな」 「グフフ、ヨロコンデー」 ヘルカイトはそのまま空中へ・・・飛び出す前に振り返って「恩に、着るぞ…」と呟き、それから改めて空中へと身を躍らせた。

(グフ・・・いかにZBRとニンジャ回復力があれど、まだとても動ける傷ではなかろうに・・・) 飛び出すと同時にカイトを展開して風を捕え、あっという間に見えなくなったヘルカイトを見送りながら、プレートメイルはソンケイに打たれたまましばしポージングし尽くした。満身創痍のヘルカイトを動かした斥候としての矜持、そしてその意思を実行するための筋肉に対してリスペクトが溢れて止まらず、体は無意識の内に腕立て伏せを始めていた。

キャバァーン! 「UNIXからのデータ自動抽出が終わりました」 「グフ!?」 電子ファンファーレとD6の声で我に帰る。立ち上がって見ればデッキからはフロッピーが排出され、モニタには「抽出完了な」の文字、そしてその下にザイバツの機密情報が表示されていた。 「これは!」 D6と共にモニタを覗き込んだプレートメイルは驚愕の表情を浮かべる。そこにはネオサイタマに潜伏するザイバツニンジャのアジトと、ソウカイヤへの襲撃作戦が示されていたのだ。

「どうやらザイバツは、いくつもの小規模な部隊をネオサイタマに潜伏させ、ソウカイヤを再攻撃する機会をうかがっていたようですね」 「グフン・・・恐ろしいことだワイ」 プレートメイルの筋肉が冷や汗で濡れる。これが実行されればまさに第二のマルノウチ抗争だ。ニンジャ、モータルの多くの筋肉が奪われる悲劇が繰り返されようとしている・・・!

「グフフ!だが、これで阻止できる!」 プレートメイルは機密データ入りフロッピーをブラックベルトに挟み、会心の笑みを浮かべる。 「すごい情報が手に入りました」 D6が興奮したようにブンブンと飛び回る。これを持ち帰って提出すれば即座にザイバツアジトへの強襲作戦が立てられ、先手を打つことができるだろう。鍛えられたニンジャの筋肉と、奥ゆかしいモータルの筋肉が失われることは無くなるはずだ。

「グフフ・・・そして、これだけの情報を持ち帰れば、当然ボーナスも!」 さらにプレートメイルはシックスゲイツをも救助している! 「ポイント倍点!」 ラオモトから与えられるであろう特別ボーナス、それによって育てられる筋肉に想いを馳せる。

(まずはトーフ・プロテインを買い込み、オーガニック・スシを食べ・・・いや、ボーナスの額によってはオンセンもアリか!筋肉に天然オンセン成分を浸透させ・・・いやいや、メンポやビキニパンツを新調してより効果的に筋肉を見せるというのも・・・)

「グフフーッ!迷う、迷うワイ!」 達成感と喜びのあまり、全力でモスト・マスキュラーを決めるプレートメイル。D6も傍らで嬉しそうにLEDを明滅させる。「あなたの勇気と行動力は、高く評価され」スターン!

【マッスル・イン・ザ・ファクトリー】 5 終わり。6へ続く

ニンジャ名:プレートメイル
【カラテ】:6
【ニューロン】:6
【ワザマエ】:2
【ジツ】:2(ムテキ・アティチュード)
【体力】:6
【精神力】:6
【脚力】:3
装備など:無し 万札:13 DKK:1


プレートメイルの前回の冒険はこちらを、
元となったソロアドベンチャーシナリオはこちらをどうぞ。

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