『ライジン』 第1話 #創作大賞2024 #漫画原作部門
< > ・・・ナレーション, 説明
( ) ・・・心の声
1話本編
■上空 昼
5mほどの龍の頭に乗った赤髪の女性が上空から街を眺めている。
女性は薄いタイツのようなものを着ている。
どこからか無線の音が聞こえる。
男「目標に近づいている。見つけ次第、連れてこい」
女性「はい」
龍は空中で消える。
■上神高校 3年6組 夕方
チャイムが鳴って学生がバラバラと帰っていく。
色黒で白髪の学生の深山花武人/カブト(17)は左手だけでカバンに教科書を入れようとするが、教科書がするりと地面に落ちてしまう。
その教科書を踏みつけてる生徒A。
生徒A「おっと、悪い」
カブト「あ、うん、大丈夫」
生徒Aはそのまま教室を出て教室外で待つ生徒Bと合流。
生徒A「大丈夫〜 だってさ」
生徒B「きも…」
カブトは教科書を拾ってカバンにしまいこむと、机の左横に置いてあった腰の高さほどの杖を手にとって立ち上がる。
カブト「さーてと、今日もぼっちだしバイトに行きますかな」
■上神高校 廊下 夕方
カブトは左手に杖を持ち右足を少し浮かせながら左に体を傾けてヨタヨタと廊下を歩く。
廊下の正面から資料を持った女性が近づいてくる。
蜜音「おーい、深山!ゲームしようぜ」
メガネをかけた女性教師の蝶野蜜音(24)がニコニコしながら話しかける。
カブト「先生、また演劇部の部室使うんすか?てか学校でゲームはダメでしょ」
蜜音「硬いこと言うなって!どうせ部員1人しかいないし暇なんだよ」
カブト「それでもあんた先生っすか…
残念ながら俺は今日バイトっす」
蜜音「仕事なんてサボるためにあるんだよ」
カブト「とても大人のセリフとは思えんす。
うちそんな裕福じゃないんで小遣いくらい自分で稼ぎたいんすよ」
蜜音「そっか…また物理教えてやるからたまには来いよー」
カブト「いつもありがとうございます」
カブトはニコッと笑うとそのまま先生を横切ってヨタヨタと立ち去る。
蜜音は歩いて去るカブトを満足そうに見送る。
■パニーカンパニー 控室 夜
コールセンターでお客様対応をする人がたくさん並ぶ。
上司の山田(48)が控室の入り口に顔を出してカブトに声をかける。
山田「よお、お疲れさん。バイトはどうだ?」
カブト「お疲れ様です。いやぁ、ほんとありがたいっす。
雷に打たれて障害者になった俺でも雇ってくれるなんて」
山田「コールセンターは障害関係ないからな!それに、君の良いところはどんな事があってもポジティブな姿勢だ!」
カブトはニコッと笑って答える。
カブト「母ちゃんの教えですよ」
山田「良いお母さんだな!じゃあまたよろしくな!気をつけて帰れよ!」
カブト「お疲れ様です」
そう言うと山田はどこかへ去っていく。
母を褒められ少し嬉しそうな様子のカブト。
■人通りの少ない市街地 夜
コンビニの前で梅おにぎりを食べるカブト。
食べ終わるともぐもぐしながら杖を手に取り歩き始めるカブト。
カブト(今ごろ母ちゃんまだ働いてんのかな……
ちゃんと飯食ってるかなぁ…)
と考え事をしながら歩き道路沿いの角を曲がると人通りの少ない道に入る。
しばらく歩いたところで道の向こう側から影が近づいてくる。
何かに気づいて立ち止まるカブト。
カブト「ん?なんだあれ?」
向こうから近づく男セージ(32)の体は電飾のような青白い光を放ち、こちらに走って近づいてくる。手には棒のようなものを持っている。
カブト「なっ?」
セージは棒を振りかぶってカブトを叩きつけるがカブトは杖でガードをするが、体ごと吹き飛ばされ背中から地面に叩きつけられる。
カブト「がっ…… 痛ぇ…」
急いで体勢を立て直すカブトだが鼻血が流れているのには気づかない。
持っていた杖が半分ほど爆発する。
カブト「…なんだ…!?」
セージは再び棒を振りかぶると棒が槍のように変形する。
槍を振り下ろそうとするセージに向かって口の中に入っていた梅の種を吹き出す。
セージ「ちっ……」
セージはそれを避けつつ不安定な大勢で槍を突く。
カブトは持っている半分ほどの杖で槍の軌道を右に逸らしながら左へ避ける。
セージは思い切りカブトの腹を蹴飛ばし杖は闇に転がっていき地面で軽く爆発する。
立ちあがろうとするカブトだが、自分の右腕が槍に刺されて大量の血が流れていることに気がつく。
刺された箇所が光り出して爆発、右腕が吹き飛ぶ。
カブト「うおぉ!」
セージが後ろを振り向くと梅の種が転がっている。
セージ「ただの種か?」
カブトは止血しようと右手を押さえる。
カブト(右手は元々麻痺してたから痛みは感じねぇが、こいつはヤベェ!殺される)
考えている間にセージの持つ槍が再び光りだして槍を再び構える。
その様子がカブトの遠のく意識の中でぼんやりと見える。
カブト「くっそ… 母ちゃん、ごめん!ここまで育ててくれたのに……」
意識が遠くなるカブトは何かを思い出す。
(回想)
× × ×
■河川敷、曇天
黒髪のカブト(12)は兄である深山明義人/アギト(15)と野球の練習をしている。
雨粒が地面を叩きつける速度が徐々に増していく。
カブト「うわ、兄ちゃんもう帰ろ!」
カブトは野球ボールを持った右手を頭の上に掲げ雨除けにしている。
アギト「あと一回、投げて終わろうぜ!」
アギトはバットを構えて待っている。
アギト「よし、早くこい!」
カブトは振りかぶってボールを投げるがその時、空から雷が河川敷へと落ちた。
■病院 ある病室
うっすらと目を開けると心配そうにこちらを見るアギトと母ユキ(45)の姿が見える。
ユキ「カブト!よかった!」
涙を浮かべながらカブトの左手を強く握るユキ。
カブト「……? 俺……」
隣を見るとアギトが泣いている。
アギト「カブト…… すまん!俺のせいで、俺の……」
カブト「兄ちゃん……?」
カブトは自分の右半分に違和感があることに気づく。
カブト「あれ? 右手が…… 動かない… あれ? 右足も……」
ユキ「あのね、あんたあの河川敷で……」
母ユキが何かをカブトに言うが頭が真っ白になって聞こえないカブト。
■病院 受付の付近
待合室の椅子で治療費の書かれた紙を見ているユキ。
そこにはリハビリや入院も含めた金額が書かれている。
母の前に立つアギトは母に悲しそうな目で話しかける。
アギト「クソ親父の借金もあるのにその金額どうするんだよ…
払えないだろ…」
母「……もっと仕事増やさんといかんねぇ…」
母がアギトを気にせず立ち上がり、去っていく姿を見る。
車椅子でたまたまその様子を見てしまうカブト。
カブト(ああ…… 俺たちのために働いてくれてるのに……母ちゃん…)
× × ×
現実に引き戻されると青白い槍がカブトの方に向いている。
セージ「終わりだ」
槍を振り下ろすセージとカブトの目の前に上から赤い光が落ちてくる。
赤い光が晴れると槍をマンホールサイズの盾で防ぐ女性シナモン(28)の姿がカブトの視界に入る。
シナモンは電子回路のような鋼鉄のスーツに身を包んでいる。
シナモン「ギリギリ間に合った!」
セージ「もう見つけるのか……ふん!」
セージの持つ青い槍が光を放ち、盾が爆破する。
シナモンの壊れた盾の内側からはすでに手から赤い光を放っている。
シナモンは掌底を打つが間一髪セージは後ろに避けて回避する。
シナモンは体勢を整えると爆破した盾の破片をジッと見る。
シナモン「なるほど、あれに触ると爆発するのか…」
カブト「助かった……?」
シナモン「深山花武人だな。腕を止血してできるだけ離れてろ」
カブトは息を切らしながら左手で右腕を押さえ、イモムシのように這って離れる。
セージ「もう引き返せん!」
セージの身に纏うスーツが分解し槍に集まり合体すると槍がねじれながら一回り大きくなる。
シナモン「決死の覚悟か」
シナモンのスーツも光を発する。
セージが素早く身を屈めて突進するが、対抗してシナモンも突進する。
シナモンが蹴りを入れようとするも、セージの槍が鋼鉄のスーツを貫き一瞬の間を置いて爆発をする。
セージ「時空軍もこんなもんか!ははは!」
シナモン「ばか、上だ」
セージが上を見上げるとスーツを脱いで身軽になったシナモンが5mほどの龍と共に拳を振り下ろそうと構えている。
シナモンの右拳だけは鋼鉄を纏っている。
セージ「眷属…!?」
セージがガードしようとするもシナモンは龍の鼻先を蹴り加速しながら降下する。
シナモンの振り下ろした右拳により槍が破壊され周囲に衝撃波と赤い電撃がほとばしる。
顔面を殴られたセージはそのまま地面に叩きつけられるも体から赤い光を発し、槍などの破片をその場に撒き散らして消え去る。
静寂が訪れるが周囲から人の声が聞こえる。
通りすがりの人「え?なんの音?今、光ったよね?」「あそこなんかいない?」
シナモンは立ち上がるとその声に気づく。
シナモン「ここはまずいな。おい、立てるか……」
そこには気絶した様子のカブトの姿が。
シナモン「って気を失ってるな。仕方ない」
シナモンは気を失うカブトに近づく。
夜空に龍のようなものが飛び立つ。
■謎の場所 王室のような豪華な部屋
ベッドで寝たままのカブトの口に誰かがお粥を食べさせようとする。
カブト「ヴィエ!」
カブトはお粥を吹き出す。
カブト「……なんだ!」
カブトの前には吹き出したお粥を被ったシナモンが少し怒っている。
シナモン「おはよう」
カブト「……あ!あなたは」
シナモンは布で顔を拭っている。
シナモン「時空軍のシナモンという者だ」
カブト「時空軍?あなたは昨日 ……って、うわぁ!!」
カブトは自分の右腕がなくなっていることに気がついた。
切断面には金属のようなものがついている。
シナモン「落ち着け。今義手を準備してるところだ。
ひとまず動けるなら今から私についてきてもらおう」
カブトは横に目をやるとスープとお粥が置かれている。
ふと口を触る。
カブト「あ、もしかして食べさせてくれて…
ありがとうございます!」
少し恥ずかしそうにするシナモン。
シナモン「まぁ……気にするな。立てるか?」
カブトは何かに気づくと布団を蹴飛ばし勢いよく立つ。
カブト「や、やっぱりだ!すげえ!立てる!杖がなくても立てるじゃん!なんで?」
立てるようになってることに喜んで足踏みをするカブト。
シナモンはその様子を見て少し笑顔を見せる。
シナモン「色々と聞きたいことがあるだろうが、歩きながら説明する」
■謎の施設 廊下
洋風の城の廊下のような長い道とそこにはたくさんの扉が配置され、その間をシナモンとカブトは歩いている。
シナモン「全て説明すると長くなるから3つだけ要点を話す」
カブトは周りをキョロキョロと見渡しながらシナモンの少し後ろをついていく。
シナモン「一つ目、私たちは81年後の世界から時間を超えてやってきた。
君らの言葉ではタイムリープというものだ。
二つ目、君はその未来でとても重要な存在だ。
絶対に死なせるわけにはいかん。
三つ目、君を含めた4人が未来のテロリストに命を狙われている。
わかったか?」
カブト「……なんか急すぎます…
でも昨日の事を考えると納得しました。
とりあえず未来の技術で足も治してくれたってことっすよね…」
シナモン「ああ、そうだ。
我々の任務は、君たちを守りつつテロリストたちを殲滅して何事もない未来にすることだ」
カブト「テロリストって…… 昨日、襲ってきた奴っすか?」
シナモン「そうだな。」
カブト「あんなのがまだいるんすか? 怖すぎるでしょ」
シナモンはある扉の前で立ち止まる。
シナモン「怖いなら、君には死なないくらいの強さを身につけてもらう」
シナモンが扉を開けると博物館のようにいろんな石が展示されている少し暗い場所が広がっている。
並んでいる石の間をシナモンは歩いていく。
カブト「何すか、これ……?」
シナモン「ひとまず君にはあれを持ち上げられるようになってもらう」
そう言うとシナモンは部屋の奥へと進み人が2人ほど腰掛けられるほどの大きさの石に触ると石が空中に浮かぶ。
カブト「なんで浮いてんだ?」
シナモン「これは霊石と言ってな……
将来、君が世界で初めて発見して実用化する石だ」
カブト「俺が未来で?実感わかねー」
シナモン「この石は人間の持つエネルギーに反応する。
動くだけでなく、変形、色や温度の変化、転送…… あらゆることができる石だ」
そう言いながら石を棒状にしてみたり、透明にしてみたり、分裂させてみせるシナモン。
シナモン「この石は霊感を持つ人間が気付ける、この世とあの世の両方の性質を持つ量子力学的…… と言ってもわからんな」
そう言いながら石を元の形に戻して元の場所に配置するシナモン。
カブトはきょとんとした表情をしている。
カブト「全然、わかんないっす……」
シナモン「とりあえず、この石を空中で自由に動かせるようになってみろ」
そう言うとシナモンは手のひらサイズの石をカブトに手渡す。
カブト「これを空中で動かす?」
カブトは石に意識を向けるが何も反応がない。
シナモン「よし、今日はそれを持って帰れ」
カブト「いや、急すぎるっすよ!
なんで俺がこんな……」
シナモンはカブトの顔をグッと掴む。
シナモン「いいからやるんだよ。死にたくないし誰も死なせたくないだろ」
カブト「そりゃ、まあ…」
シナモン「とにかくその石は肌身離さず持って常に練習しろ。
練習すれば君なら必ずできる」
シナモンの確信めいた言葉にカブトは何も言えない。
シナモン「よし、そしたらこっちについて来い」
カブト「ったく…強引だな…」
と不満を言いつつ石を眺めつつもその部屋を離れるシナモンについていく。
■謎の空間 玄関前
しばらく歩いていると大きな扉にぶち当たる。
シナモン「じゃあ開けるぞ」
シナモンが玄関の扉を開くと目の前にはかなり大きな街並みが広がっていた。ガウディが作ったような個性的なものから、中国様式の建築物のような見たことがない建物ばかり並んでいる。
カブト「ここはどこだ…異世界か?」
シナモン「そうだな、ここはマハと言って…
君たちの言葉でわかりやすく言えばUFOの中と言ったところだな」
カブト「ゆ、ユーフォー?」
キョロキョロと街を見渡すカブト。
シナモン「やっぱ昔の人間は反応が面白いな!
ここは上空9000mに浮かんでるんだよ」
カブト「え… ここ空の上なのかよ!
もう、色々ありすぎて訳わかんねぇ……」
シナモン「それより帰る方法を教えるからついてこい」
そう言うとシナモンは外へと歩き出す。
■日本様式の建物の中
シナモンに連れられたカブトは神社の社殿のような建物の中に配置されている大きな石の前で立ち止まる。
シナモン「さっき、霊石が浮いたのは見ただろ?」
カブト「え、ええ…」
シナモン「これは感覚の話なんだが、エネルギーを石に反射させるようにすると逆に自分たちが空中に浮くこともできる」
そう言うとシナモンは石の前で宙に浮いて見せた。
カブト「なんだこれ、すごい技術だな……」
シナモン「フフフ!未来で君が発見したんだよ!
そしてもっと面白いのは地上にある霊石と意識を繋げるようにエネルギーを集中すると一瞬で移動ができるんだ」
カブト「……え?それってワープってことっすか?」
シナモン「まぁ、そう言うことだ
今の君にはできないだろうから、私にしがみつけ」
カブトは少し照れくさそうにシナモンに正面から抱きつく。
シナモンはカブトよりも少しだけ身長が小さいことに改めて気が付く。
カブト「えっ…と。しがみつくって……こ…これでいいすか…」
カブトはシナモンの腰あたりに左手を回す。
シナモンもカブトをギュッと抱きしめ耳元で囁くように話す。
シナモン「心を無にして。
よし、準備はいいな……」
カブト「はい……」
シナモンは目を閉じて強く念じるとその場から姿を消した。
■カブトの住む町の山 夕方
山の中腹にある古びて誰も近寄らない神社の祠とその隣にある岩の前にシナモンとカブトは出現する。
カブト「うわ、一瞬だな」
カブトは上を見上げるが雲がまばらにある夕空だけが見える。
シナモン「マハは空間が違うから見えんぞ!
それより、さっき渡した石は持ってるな?」
カブト「え、はい」
カブトはポケットから石を取り出す。
シナモン「その石は常に持っておけ。
我々がコンタクトしたら声が聞こえるようになってる」
カブト「ちょっと待ってくださいよ!
俺を助けてくれたのには感謝しますけど、右手はどうしましょう?」
シナモン「知らん。
義手は作ってるからそれまで適当に言い訳しとけ」
カブト「適当って…… 無理やりすぎませんか!」
シナモン「それより少しでも時間があったら練習!
じゃあな」
そうキツめに言うとシナモンは素っ気なく再び消え去る。
カブト「うわ、なんだよあの人……
適当じゃねぇのか……」
すると頭の中にシナモンの声が鳴り響く。
シナモン(適当じゃない)
カブト「うわ!なんすか!きも」
カブトは突然の声にビクッと反応する。
シナモン(言っただろ。その石を握っていればコンタクトが取れる。
ひとまず君は現実世界に戻って普通に生活するんだ。
未来の情報は教えられないものが多いから許してくれ)
カブト「まぁ、そう言うことなら……」
カブトは高台から見える街の方を見ている。
■上神高校 昼
<翌日>
授業中にカブトは机の下で手に持った石に集中している。
手の上で石が立ち上がり少しだけ回転する。
カブト(もう少しで浮き上がりそうなんだよな…)
カブト「へへ…」
一人にやけているカブトだが教室からヒソヒソと声が聞こえる。
生徒A「なんか1日休んで来たと思ったら右手ないし…」
生徒B「今日ずっと机の下見てニヤけてるし気持ち悪…」
生徒C「障害関係なくあいつ気持ち悪いよな…」
その言葉が聞こえないかのように石を見続けるカブト。
■上神高校 廊下
ポケットの中の石を触りながら廊下を歩くカブトに後ろから物理の先生の蜜音が声をかける。
蜜音「よっ!見ない間になんかあった?」
カブト「見ない間って、1日だけじゃないっすか」
蜜音「実は私も昨日休んでたんだよ!深山も休んでたそうだけどもしかしてその腕と足のこと?」
カブト「まぁ、ちょっと治してもらう事になったんすよ。
手は義手を作るつもりっす」
蜜音「へぇ、よかったじゃないか!医学の進歩はすごいな!
今日はゲームどうする?」
カブト「はは、相変わらずっすね……」
■上神高校 入り口
楽しそうに喋っている男子生徒2人が上空に浮かぶ機械に気づく。
男子生徒A「お?なんだあれ?」
機械からの視点、男子生徒2人をロックオンする。
男子生徒B「ドローンじゃね?」
蜘蛛の形をした機械がお尻の銃口から糸玉を飛ばすと男子生徒2人は付着した糸に気づく。
男子生徒A「うわ、なんかついた」
糸から何かが滲み出てくる。
男子生徒は2人は心臓の音が大きくなるのを聞き2人とも気絶する。
■上神高校 廊下
カブトと蜜音は外の騒がしい声に気づく。
先生「おい、誰か救急車を呼んでくれ!」
カブトが急いで窓に駆け寄り外を見ると何人も倒れる生徒を見つける。
カブト「何が起きてるんだ…」
カブトは急いで石を取り出して集中するとシナモンの声が聞こえる。
シナモン「カブトすまない!
こっちも今手に負えない状況になっててな……
あと10分で応援が行くから持ちこたえてくれ!」
カブト「10分てどうやって…」
そう言うとシナモンからの声が途絶える。
後ろから蜜音の声がする。
蜜音「やばいな…
ちょっと職員室に行ってくるから深山くんは隠れてなさい!」
そう言うと蜜音は廊下を走っていく。
カブト「俺も隠れないと……
でもあの蜘蛛のやつ、多分俺を探してんだよな……」
(回想)
× × ×
■上神高校 教室 昼
杖を持っていた頃のカブトの高校時代。
カブトは左手で教科書をカバンにしまう。
すると生徒Aが話しかけてくる。
生徒A「えっと… 深山くんは今日の打ち上げは…」
周りの人間は少し嫌そうな目でカブトを見ている。
カブト「いや、俺は大丈夫。誘ってくれてありがとう」
生徒Aは少し声が明るくなる。
生徒A「そっか!わかった」
生徒Aは他のクラスメイトと楽しそうにどこかへ向かう。
生徒A「いや、俺も行くとか言われたらどうしようかと思った」
生徒B「障害者の介護とかテンション下がるしな…」
× × ×
■上神高校 窓際
カブトは窓際で外で生徒たちが走り回りながら気絶する様子を見て俯き何かを考える。
カブト(そうだ、あいつらなんて俺の知ったことじゃないだろ……)
外では悲鳴が聞こえ、学校内には放送が聞こえる。
放送「みなさん、外には出ないでください。
大変危険です。消防、警察が来るまで絶対に外に出ないでください」
カブト(いや…… 学校の中も外も同じだよ…
いずれ中にも来るだろ…俺が外に出ない限りは……)
カブトは何かを決意した顔で廊下を走り抜ける。
■上神高校 正面校庭
蜘蛛のドローンがお尻から学校の窓ガラスを一斉に射撃する。
ガラスが次々と割れていき中にいた生徒たちも次々と気を失っていく。
カブト「おいこら!待て!」
蜘蛛のドローンが向きを変える。
ドローンの視点でカブトをロックオンする。
カブト「俺が死ねば未来の世界が困るって?
俺はなんとしてでも生き残れって?
でもな、後味の悪い未来は生きたくねぇよ!」
蜘蛛のドローンは銃を構える。
カブトはポケットから石を取り出して念じる。
カブト「頼む、浮け!浮いてくれ!」
石が回転しながら浮き始める。
カブトは野球の投球フォームのように構える。
カブト「うぉりゃー!」
カブトが石を投げると凄いスピードで石が飛んでいく。
その瞬間、兄と河川敷でキャッチボールをした時の様子が一瞬だけ頭の中に思い浮かぶ。
しかし石はドローンには届きそうもない。
蜘蛛のドローンから玉糸のようなものが発射される。
カブトは左手を石に向けて振り上げて念じると石はさらに回転しながらドローンへと向かっていく。
カブト「いけー!」
玉糸を貫き、ドローンの頭のあたりに勢いよく直撃し頭の付近にあった糸のようなものがブチっと切れるとドローンは空中でクルクルと回転をして地面に叩きつけられる。
カブト「で……できた…」
しかし蜘蛛ドローンは再び起き上がると赤く光り出して蜘蛛のように走ってカブトのところ目掛けて突進してくる。
カブト「って……これ、やばいんじゃね…」
ドローンが襲いかかるその瞬間、バットを持った蜜音がドローンを殴りかかる。
ドローンは後ろに飛んでいく。
蜜音「はぁ、はぁ…… 深山!早く学校に戻りなさい!」
カブト「先生…… 先生こそ、危ないっすよ!」
蜜音「いいんだ、こいつは多分、私を狙ってる」
カブト「え? 一体何を言って…」
ドローンは再び体勢を整えると赤く光りだして足に刃物のようなものを出し2人の元へと向かってくる。
蜜音がバットで殴ろうとするも蜘蛛ドローンはそれを避け飛びかかる。
その刹那、目の前に迫っていた蜘蛛ドローンが空中で静止してものすごい勢いで地面に叩きつけられて大破する。
カブト「うわっ! ……いったい何が?」
するとどこからともなく声が聞こえる。
チョウジ「お待たせしました…」
カブト「え?どっかから声が…」
キョロキョロするカブトとほっと安堵のため息をつく蜜音。
チョウジ「とりあえずこのあと、山の岩まで来てくれませんか。
ここは人目が多くて透明化してます」
カブト「透明化…… はっ!?」
カブトは不審なことを知られたと思い蜜音を見る。
蜜音「チョウジさん、とりあえずその話は後で…」
蜜音は口元に拳を当てて咳払いをするかのように話す。
カブト「え!……ちょ、ちょっと待って、先生……
もしかして先生、時空軍知ってるの?」
蜜音「……え?」
カブトの言葉に驚く蜜音。
■上神山 岩の前
岩の前で話すカブト、チョウジ、蜜音の3人。
カブト「えー!じゃあ先生も昨日この人たちに会ってたんですか!」
蜜音「まぁな…… 私も深山が知ってるなんて思わんかったが…」
カブト「じゃぁ、守るべき4人の現代人って俺と先生で2人……?」
ピンク髪で黒い軍服を着た少しチャラい格好のチョウジ(27)が2人の間で話し始める。
チョウジ「いやぁ、到着が遅れてすみませんでした!私はチョウジです。
どうやら敵は蜘蛛のドローンを探知できないように20機ほど飛ばしていたようで、対処が遅れました……」
蜜音「なるほど…… わざわざ私たちを殺すのに人間が来なくてもロボットだけで攻めれば合理的だわな…」
カブト「先生、なんかもう馴染んでますね…さすがゲーマー。
それよりチョウジさん。
なんで先生が時空軍に関わってるんすか?
俺は未来ですごい人になるって聞きましたけどもしかして先生も…」
チョウジは笑顔で答える。
チョウジ「何言ってるんですか!あなたの奥さんじゃないですか!」
カブト「……え!?」
蜜音「……え!?」
チョウジ「あー!これ言っちゃダメなんだった!」
チョウジは顔面蒼白する。
カブト・蜜音「えーーーっ!?」
2話につづく
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