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あの森の紫陽花 |自然の愛撫

  巨大な街路樹の下を
  自転車で駆け抜ける。
 
  ふいにあの日の記憶が蘇る。
 
  あまりの快感から
  漏れ出る声が
  街路樹の中から響いてくる。
 
  一つ一つの樹木が
  様々な場面の喘ぎを反響する。
 
  私はいつしか
  快楽の森に迷い込んだ。
 
  さわさわと揺れる葉は
  エクスタシーの微細な振動。
  重なり離れ
  空を通し遮り
  風の中で踊る。
 
  木漏れ日は
  あなたの光
  影は私の吐息
 
  葉は留まることなく揺れ続け
  絡まり
  そして
  ふっと離れる。
 
  時折顔をみせる紫陽花は
  連続する
  小さな死。
  そこだけ一瞬
  色が際立ち
  過ぎてゆく。
 
  桜の大木の幹は
  あなたの心。
  根を張って
  どっしりと
  私を受け止める。

  さえずりながら飛ぶ鳥は
  私のスピリット。
  千々に乱れて
  あちこちの木にとまる。
 
  鳥たちは
  枝の中を
  好きなだけ飛び回る。
  ふいに飛び立ち
  静寂を残す。
 
  私は自転車を置いて歩き始める。
 
  喘ぎ声はもう
  響かない。
 
  ウグイスがなく。
  楽しそうに。
 
  あなたは私の名前を呼んだ?
  だから迷い込んだの?
  あの森へ。

あの森の紫陽花

(Photo: ©MikaRin)

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