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見知らぬ誰か|女の哲学

いつも夢見ていた
見知らぬ誰かに
貪られ抱かれ満たされることを。
 
どんなに素晴らしい恋をしていても
一人のベッドの中では
知らない誰かに抱かれ続けていた。
 
あらゆる場所で
あらゆる方法で
あらゆる理由で
その誰かと.
 
子供の頃から知っていた
わたしにはとてつもない性感が宿り
いつか完全に満たされたいと。
 
そんなことは実現不能。
小さな失望を繰り返しながら
その予感を宝石のように
胸の内に大切に保管してきた。
 
繰り返す絶望と希望が
緩慢な自殺や
衝動的な未遂を
何度も繰り返し
命が繋がれる僥倖に
希望を持ち続けた。
 
待つことに絶望しかけた頃
誰かの気配を感じた。
 
子供の頃から
抱かれ続けていた
あの誰か。
 
そして 
あなたに出会った。

全くの見知らぬ人だった。
 
ひとつになったとき
あなたは私を
私はあなたを
完全に知っていた。

ふたりは完全にひとつだった。
何一つ欠けることなく。
 
私を狂わせた性感は
精巧に作られた羅針盤。

着実に
確実に

肉体感覚だけをたよりに
真っ直ぐにたどり着いた。

あなたに。
 
そしてあなたも探し当てた。
私を。
全く予期しなかった出来事として。
 
出会えた喜びの謝肉祭は
時間と共に静まり
完全なる時間として聖別された。
 
羅針盤は
天空の天秤に変わった。
 
両極のバランスで生じる
今という瞬間を計るための。


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(Photo: ©MikaRin)


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