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美しい光景

自分が美しいと思うものを描いてください。
過去の記憶でもいいし
現在思っている美しいものでもいいです。
自分個人に向けて描いていいです。
誰かにわからせることもしなくていいです。

心の中で美しい光景を思い浮かべた。
子供の横顔や外国の景色やいろんなものが
浮かんでくる。

美しいと思うものはこの世界にはたくさんある。

私が今日描こうと思ったものは
あの島の岩場の海辺だった。

そこは地元の人達と私たちしか知らない穴場だった。
大きな岩のおかげで外海とは区切られていて
波が穏やかで深い海が楽しめる場所だった。
伊豆諸島の海は魚がたくさんいる。
スノーケルをつけて足ヒレをつけて
岩場からざぶんと中へ飛び込む。
潜ってみると外の世界とは時間の流れの違う海の世界だった。

水族館にいるような魚が目の前を泳ぐ。
沖縄とかに行かないと見られないような景色がそこに広がっていて
東京都だということに驚きを感じる。
一晩船に乗ってきたらこんな世界を味わえるなんてと心から驚いていた。



大学生だった私はお金もなく
お金を貯めるためのアルバイトに夏休みの間この島を訪れていた。

美大に通って数ヶ月経った頃だった。
アルバイトは民宿のお手伝い。
料理を手伝ったり配膳したり部屋の掃除をしたりお布団あげて干したり。
民宿のおばちゃん達はとても気さくで料理も上手だった。
日本昔ばなしか?ってくらい腰が曲がっていたけれど、
歩く速度はとても早くて頭も動かさないで
さささささささーっと窓の外を通り過ぎて面白かった。

夏休みの島は開放的だった。
初めての島での暮らし。
大学生になって課題に追われつつ、劣等感もしっかり養われてた
私にとって、ここでの時間は初めて感じる大学生らしい時間だった。
(学校に入ってから遊んでる学生をたくさん見たけれど、私にはお金もなく無縁の世界だった。)

バイト仲間はいろんな民宿にいた。
大学生が多かったけど、中には看護師さんとかフリーターとかもいたりして
小さい世界だけど知らない世の中が見えた気がした。

同じ民宿には同じ年の大学生の女の子がいた。
平成らしいギャルメイクだったかな。
アルバローザのショッパーを持ってて美大にいないタイプすぎてびびった。話してみるといい子で、島デビューなの?って感じもしてちゃんと仲良くなった。
バイトを協力して早く終わらせて
休み時間には一緒に海に行って泳いだり海辺の温泉に行ったりした。
島にいる美大生って結構、いやかなり垢抜けない感じだったと思う。
ギャルの方が海がほんと似合うなと思って何だか羨ましくなった。

これまで過ごしてきた人生に足りてなかったものとか
見えてなかったものがたくさんあるんだなと思った。

バイト仲間に好みのバイトくんがいたんだけど
その子は同じ民宿のギャルが好きだって知って
ショックだった記憶も今になって出てくる。

楽園のような生活の中にも劣等感を生み出すタネは結構散らばっていた。

ここへきても自分の足りなさを感じるのか。

照りつける太陽と美しく青い海。
岩場に侵食してくる海水は透明だ。
外海は遠くここは守られている。
潜ると信じられないほど美しい世界がさらに広がっている。
世界の美しさに圧倒される。
私は美しい世界に漂っている。
美しい世界は常に開かれている。

美しい完全な世界と私の心の中のチグハグな感情。
だんだんどうでも良くなってくる。

水中に潜って息が続くまでの間降りていく。
もうそろそろかというときに
空に向かって上がっていく。
水面の光へ向かう。
青い世界から光の世界へ。

光の世界に出たと思ったけれど
私はあの岩場にいる。

青い世界のにいたら全てと一体化できたのに。
そのままでいられたのに。

どんなに美しい光景が目の前に広がっていても
私の気持ちはチグハグで存在していた。

美しい光景を見に毎日そこへ足を運んだ。
美しさでチグハグな気持ちを
和らげたかったのかもしれない。

あの日の私に伝えてあげたい。
これで完全だって何一つ欠けていないって

足りてないものなんてない
そのままで全部足りていた。

もし足りていないものがあるとすれば
もう足りてるってことを知らなかったことだけだ。


美しい世界はいつも開かれている。
そのまま美しくずっと有る。
私もそのままで有りたい。


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