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かぜをひいたら…漢方薬?西洋薬?コスパがいいのはどっち?

 かぜをひいたら、皆さん、どうしますか?

「ドラッグストアでかぜ薬を買ってくる」

「病院に行く」

「薬は飲まない。栄養のあるものを食べてひたすら寝る」

 ケースバイケースなので、どれが正しいというわけではありませんが、頭痛や熱、咳などがひどくてツラいときは「薬を飲む」という方が多いかもしれません。

 そんなとき、選ぶのは漢方薬ですか? それとも西洋薬?

 よく「漢方は西洋薬よりも高い」と言われますが、今回は「いや、そんなことないよ?」という例をお話したいと思います。体験談ではなく、論文からの引用です。約20年前の論文なので、古いっちゃ古いんですが、今でもあてはまる考え方です。

 調査期間は1997年12月~1998年2月までの3か月間で、対象になった患者さんの数は875人。
 処方された薬の種類と患者さんの人数はそれぞれ、

西洋薬だけ:597名
漢方薬だけ:167名
西洋薬と漢方薬の併用:111名
 でした。

処方された薬の種類が一番少なかったのは「漢方薬だけ」の患者さん

 では、それぞれの場合で、いったい何種類の薬が処方されたのでしょうか(平均値)。

★西洋薬だけの場合:2.9剤
★漢方薬だけの場合:1.2剤
★西洋薬と漢方薬の併用の場合:2.7剤

 ざっくり言うと、「西洋薬だけ」と「西洋薬と漢方薬の併用」の患者さんは、平均で、約3種類の薬を処方されていますが、「漢方薬だけ」の患者さんの場合は、だいたい1つの薬ですんでいることが分かります。

 3:1というのは、結構な差だなあと思いました。

 ちなみに、3種類の漢方薬が処方された患者さんは、167名中わずか1名だけでした。

処方日数が一番短いのも「漢方薬だけ」の患者さん

 では次に、処方日数を見てみましょう(こちらも平均値)。

★西洋薬だけの場合:6.7日
★漢方薬だけの場合:4.0日
★西洋薬と漢方薬の併用の場合:5.0日

 病院で薬をもらうときによく言われるのが「とりあえず1週間分出しときますね~」というセリフですが、やはりそれくらいは飲まなければ効かないんでしょうか(?)、西洋薬の処方日数は1週間に近くなってます。

 対して、漢方薬だけの場合は4日間。

 西洋薬の半分…とまでは行きませんが、6割くらいの日数で治癒するというのはかなり短いなあと思いました。薬の種類が少なく処方日数も短いとなれば…、トータルの薬代が安いのは西洋薬と漢方薬のどちらなのか、おのずと結論は出てきます。

結論:薬代が一番安かったのは?

 最後に、それぞれの薬代を見てみましょう(平均値)。

★西洋薬だけの場合:203.8円/日
★漢方薬だけの場合:119.6円/日
★西洋薬と漢方薬の併用の場合:215.9円/日

 ついでに総費用を比べてみると…。

★西洋薬だけの場合:1357.3円
★漢方薬だけの場合:484.5円
★西洋薬と漢方薬の併用の場合:1075.1円

 漢方薬の場合、費用面では、なんと西洋薬だけの場合の4割以下(!)でした。

〔まとめ〕そのとき一番いい方法でかぜを治す――が大事。

 論文を読む前から、なんとなく、「漢方のほうが安いんじゃないかな~?」と思っていたので、結果は予想通りでしたが、ここまで差が出るとは正直思っていませんでした。

 細かい費用の比較については、この論文が書かれたのは20年前で、今とは薬価が違いますし、西洋薬の処方も変化しているので、単純に「かぜのときの薬代は漢方が圧倒的に安い! 西洋薬の半分以下だ!」と言うことはできませんが、今でも変わっていないことがあります。

 それは、ひとつの薬で複数の効能がある漢方薬(「一粒で何度でもおいしい」みたいな)に対して、西洋薬は「咳止めには○○」「頭痛には××」というような処方をされますので、どうしても薬の種類が多くなりがちになってしまうということです。薬の種類が多くなれば、当然、コストは上がります。

 これを解決する一番いい方法は、かぜウィルスにガツンと効く治療薬(西洋薬)を開発すること――なのかもしれませんが、これはそう簡単ではありません。

 一番の理由は「技術的に難しいから」です(←詳細を知りたい方は医療機関のHPをお読みください)。

 ただ、それ以外にも、かぜは、普段、健康な人であれば、たとえかかっても、栄養と休養を取ることで自然に治っていくからということがあげられると思います。
 致死性や緊急性が低いので、「今すぐ薬を作らなきゃ!!」とはならないわけです。
「標的を倒すこと」が得意な西洋医学にとって、かぜウィルスは厄介な相手と言えそうです。

 対して、漢方のほうは、敵(かぜウィルス)を倒すことではなく、自分の防御力を高めることに注力します。「かぜを引くのは、自分の防御力よりも、かぜウィルス(敵)のほうが強いから」と考えているのです。

 なので、かぜを引いたら、かぜウィルス(敵)がそれ以上自分の体の中に侵入してしまわないように、漢方の力でせっせと防御力を上げていきます。うまく防御できれば、敵(かぜウィルス)が撃退されるまで、それほど日数はかかりません。

 こうしてみると、西洋医学と漢方では、かぜに対するアプローチがまったく違うことが分かります。
 もちろんどちらが正しいということではありません。
 状況に応じて使い分けることが大事です。

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