読書感想:データの見えざる手

久しぶりに読書感想。出産後は、e-ラーニング・動画視聴の学びが多く、書籍を読む回数が減っています。。。

ウエアラブルセンサ、(主に加速度センサー)を用いて得られたデータより、人間行動の研究、人間社会の法則を見出す、といった内容になっています。

私が興味深いと感じたのは、1章の人間行動の法則性についての内容、2章の幸せにを高めることで生産性を上げること、4章のビジネスでは人とつながることで運を向上するといった内容の3点です。


1章では、人間の身体活動に関して、ウエアラブルセンサで得られたデータからの解析内容。

人間の身体活動はエネルギー保存則に従い穏やかな動き~激しい動きの分布が指数関数に従う(本書で「U分布」と記載)、人間の活動の限界は熱機関と同じ制約下にある、など、人間の活動も所詮は物質、熱力学に従う、というのが興味深いです。

また、実社会での統計データは正規分布(中心が高く、中央値=平均値となる分布)ではなく、右肩下がりの「U分布」が圧倒的に多い、という情報は重要だと思います。例えば、年収分布などを思い浮かべると、中央値<平均値となっていることが多いかと思いますが、統計データの多くが正規分布でなくU分布、と考えると、世の中のデータの見方が変わります。

余談ですが、本書とは別のところでの学びで、売上データが正規分布でなくU分布に従うことが多く、そのためターゲットをどこに合わせるかが重要、といった話がありました。例えば、平均売り上げが1万円、ほとんどのユーザーが千円以下の使用、一部のユーザーが高額使用となっている場合は、平均値である1万円使用しているユーザーをターゲットにするのではなく、低価格帯・大人数のユーザーをターゲットにするか、少人数でも高価格帯のユーザーをターゲットにするのかで、戦略が変わるといった話だったかと思います。ビジネスにかかわる統計学、なかなか学ぶ機会が少ないですが、知っていると世界が変わるなと思います。

U分布が出てくる理由については、ランダムに玉を配置し、玉を他方に移す実験を繰り返すと分布にまだら模様が出てくる(正規分布からU分布に変化していく、統計物理でいうエントロピーの大きい状態になる)ということです。経済活動でいえば、単純にものをやり取りするだけで(経済活動が行われるだけで)能力の差ではなく確率によって、貧富の差が生じるようです。


2章ではハピネスを計測するということで、人の幸せについての議論です。

幸せについての研究より、幸せの要因は下記とのこと。

・遺伝要因 50%

・環境要因 10% (人間関係、お金・資産、健康に関して)

・日々の行動 40% (自ら積極的に行動を起こしたかどうか)   

遺伝要因が大きい、ということはちょっと衝撃ですが。環境要因より行動の方が影響が大きいということで、幸せになるために環境要因(=結果、成果)ではなく、行動そのもので変えられるということは救いかも、と思います。

また、幸福な人は仕事のパフォーマンスが高く、社員が幸せであるほど会社の生産性が高くなる、とのこと。ハピネスレベルが高いと生産性が37%向上、創造性は300%向上するとの記載がありました。

本書では幸せ=身体活動として計測できるとしており、身体活動の活発度は伝染するとのことです。社員同士の休憩時間を同じにして休憩時間の会話を活発にすることで生産性を高めることができるようです。


幸せだとパフォーマンスが高い、については、自分の経験では例えば私生活が順調な時は仕事をしているときも楽しく、新しいアイディアが思いついたり、逆にあまりよくないことがあった時には頭の中に靄がかかったかのように感じているので、組織や会社レベルのマクロでみた場合、やはり組織内の人間が幸せと感じているかどうかは業務に良い影響をもたらすのだな、ということがデータとしてわかってよかったかなと思います。

職場復帰後は、自分と周囲の人が幸せに、生産性が高くなるように、例えば同じ組織の人たちと雑談などの機会も持つようにしながら、仕事をできればよいなと思いました。


4章では運、偶然についての話となっており、ビジネスでの運は、自分が必要とする知識・情報・力を持っている人に出会うことで上げられるという話でした。そのためには、自分の知り合い<1ステップ>、知り合いの知り合い<2ステップ>までの人間関係が影響するとのことでした。(知り合いの知り合いの知り合い<3ステップ>となると、情報が伝達しにくくなり、偶然に出会える確率が小さい)

個人だけでなく組織の運についても触れており、その際組織内でリーダーとメンバー間のみつながっている形とするのではなく、リーダーを挟まずにメンバー間がつながっており、問題解決できる組織であると良いとのことです。

ビジネスの運=人のつながり、といったことは、普段意識してはいなかったのですが、仕事がうまい人ほど他の人とうまくつながっているなということを考えると(上手に他の人を頼っている)、自分ももっと人とのつながりを活用すべきだし、他の人にも活用してもらうべきなのかなと思いました。その一方で、職場内で皆があまりにも忙しくなりすぎ、他の人に相談したり、つながったりする余裕がないことで、悪循環になってしまっているのかなと感じます。ビジネスの運を上げること、組織の問題解決力を向上するためには、組織として常に最短のスケジュールを立てるのではなく、ある程度は時間の余裕を作ることが大切かなと思いました。


幸せだと生産性が高い、ビジネスの運は人とのつながりが大事、といったことは、経験から何となく日々感じることではあるかと思うのですが、改めてデータ分析されていることで、行動に対しての後ろ盾ができたということが良かったかなと思いました。

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