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「面白い」絵本の物語はどのように考えているのでしょうか。<講演会アフターのご質問03>

豊岡講演のアフター。三つ目のご質問への回答です。
時間も経ってきたので、当時回答した内容からだいぶ改変が進んでいます。もはや新規の記事ですね。なので無料で読めるエリアを多めにとりました。

『描く仕事を創る〜好き過ぎることが価値を生む〜』
クリエイティブアントレプレナーシップセミナー
4月16日(土)@豊岡 稽古堂

  1. <ご質問01>スポンサーはどのくらいついてますか?

  2. <ご質問02>複数のSNSを併用するメリットを運用負担も含めて教えてください。

  3. <ご質問03>「面白い」絵本の物語はどのように考えているのでしょうか。

  4. <ご質問04>アナログ作画の場合、どのような修正などに対応されるのでしょうか

  5. <ご質問05>普段の描かれる絵の中で「描きたい絵」と「ウケる絵」を描く比率は?

  6. <ご質問06>ファンに忖度した絵づくりをしてしまうことはありますか?

<ご質問03>「面白い」絵本の物語はどのように考えているのでしょうか。

僕の絵本作品をお読みになられて、その原案はどう思いつくのか、いつ思いつくのか…といったご質問をいただきました。拙著が面白い、ということが前提のご質問、ありがたいです(笑)

長くなるので先に結論

わかりません(笑)
特に「面白い」と断言できるものかどうかは、わかりません。
もう少し言うと、読み手が面白いと思うかどうかを保証することは難しいので「これが答え」という形では言い切れない感じです。

息子と遊んでいる時とか、ぼんやり歩いているときとか、空が綺麗だなーって思う時とか、腹が立った時とか、前向きになれないときとか。これ、物語にできるかな?みたいな小さなエピソードに出会うことがあります。

「そのエピソードを物語にできるかな?」というのは、「エピソード」と「物語にする」ことが分かれている点をご留意ください。

エピソードはいわばネタ元。伝えたいメッセージや、感動したポイントそのものです。「今日の空は綺麗」「6歳になった息子が今もかわいい」「新しい仕事が辛い」とかその程度のものです。これだけでは物語になっていないわけです。

そんなエピソードを物語にしていく工程があります。

例えば「今日の空が綺麗」というエピソードであれば

雨の日が続いていて、気候も気持ちもジメジメしていたけれど、ふと雲に切れ目が入り、綺麗な青空が見えた…気持ちも同じく少し明るくなって、明日も頑張ろうと思った。

作例01

みたいな前後の背景と心情を掛け合わせると「空が綺麗」というシンプルなエピソードも物語になったりします。さらに絵本であれば、この空を美しく描くだけで表現力は何倍にもなりますね。

今度は人物を入れてみましょうか。

友達のゆうたくんと喧嘩をした。僕は悪くない!と思う。モヤモヤするから帰り道の河川敷を全力疾走!ごろごろごろっと走った勢いで転がった。抜けるように青い空が広がっている。雲がゆっくりと流れてる。
「僕も悪かったかもな…」
明日ゆうたくんに謝ろう。そう決めた。

作例02

と、今度は「綺麗な空」に主人公の心情を重ねてみました。さらに物語感がでてきましたね。伝えたいエピソードがあったとして、それをどう伝えるか。それが物語です。つまり、どんなエピソードでも物語にすることはできる、ということですね。逆に言えば、物語は「伝える手法」であって「コアとなるメッセージ」自体ではない、と区別をしています。

あとは、実際にその物語を作るか(絵本として完成させるのか)どうか、という話になります。実際に作品にしようとすると、時間も労力もかかりますから、作りたい!と思えるネタじゃなければいけません。思いついたエピソードから取捨選択して、次は何を描こうか、と選んで、実際に作ったものが作品となります。

だからといってやっぱり物語は思いつかない!

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