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彼女に乾杯☆

出逢い



初めて二人で乾杯したのは、11年前の秋。
初めて会った日の次の夜。

どちらからともなく「一緒に夕食でも?!」という流れになった。

「初めて会った気がしないね」
「何か、ぴったりくるものを感じるね」

などと、出会った頃の恋人同士みたいな会話をする。

グラスを傾け、食事をしながら、お互いの人生の断片を語り合う。
話は尽きない。

彼女は東京在住。私は四国在住。

リフレクソロジーという共通点を通して、SNSでは繋がっていた。
2日間の勉強会のため私が上京したことで、初めて会った。

初日の朝、座ろうとした席の隣が、たまたま彼女。そこからの意気投合。

二日目の夜、「二人のお疲れ様飲み会」に至ったというわけだ。


雰囲気のある薄茶色の照明のお店。向かい合って座る二人。
笑っている彼女。お洒落なグラスで乾杯したこと。

今も思い浮かべることができる。

それ以降、彼女とはSNSやメールのやりとりのみ。


やがて四年後


「一緒に台湾に行きませんか」

彼女からの手紙が届いた。

共に学んでいたリフレクソロジーの師を訪ねたいこと。

彼女自身の体調不良の理由を突き止めるために、どうしても教わりたいことがあること。

切々と綴られた手紙に、胸を打たれた。

なのに、その返事は「ごめんなさい」

理由は、海外への費用、1週間ほど家を空けること、家族に家事の負担をかけることなど。

家族に相談もしなかった。

彼女は理由に理解を示してくれた。けれども、一緒に行きたい気持ちは、メールからひしひしと伝わってくる。

ダメで元々と、思い切って家族に相談した。

「行っておいでよ」

即答。あっけにとられるほど。背中を押してもらった。感謝。

台湾の地へ


4か月後。彼女と二人、台湾台東の地に立っていた。

海外未経験だとか、電車のチケットが取りにくいとか、英語で約束を取りつけるのが大変だとか、様々な壁が立ちはだかる。

電車のチケットは、彼女が深夜零時に日本語表記のないネットで手配。
数少ないホテルの予約も、彼女によるオンラインにて。
師と会う約束の詳細も、手紙とSNSを駆使して、なんとか段取りができた。

様々なことを一つ一つクリアして、台湾へ。

台湾東海岸は10月末でも暑い。半袖の方がほとんど。

暑いさなか、バス停の自動販売機で、彼女が「黒松沙士」という飲み物を見つけた。

「これ、飲みたかったのよね。コーラっぽいけど、変わった味みたい」

「黒松沙士」を一口ごくりと飲む彼女。「ハマる人にハマる」という飲み物は、彼女には当てはまらなかったようだった。

その様子を見て、自分も買おうという気にはならず、一口分けてもらう勇気も出ず。結局私は「黒松沙士」を飲まなかった。

私も一本買って、彼女と「黒松沙士」で乾杯すればよかった。
旅の成功を願って「お疲れ様」したかった。今頃になって思う。

いつか彼女と「黒松沙士」で乾杯したい、と秘かに願っている。

リアルに会ったのは、たった2日間の東京と、二人が台湾で過ごした5日間だけ。

なのに、一緒にいて、不思議なくらい気負わず、気を使いすぎず、自然体でいられた。

こういうのを「気が合う」というのだろう。

彼女は年下だが、私にとっては先輩。明るく、社交的で行動的。眩しいくらいだ。

一方、どちらかと言えば内向的で、大勢が集まる場所では聞き役になりがちな自分。

二人は正反対だ。

それでも、彼女への憧れにも似た気持ちと共に、自分らしさをいい意味で生かせたらと思う。

所詮、彼女にはなれないのだ。

自分は、自分の花を咲かせることだけ考えようと思う。


そして今


旅に出て以降、彼女とは会えていないままだ。

「どんなに遠く離れていても、出会うべき人には出会う」という。

彼女との出会いも「ご縁」と呼べるだろう。

そういえば、台湾で利用した空港名は、私の故郷「松山」と同じだ。
恩師の居住地の市外局番は「松山」の市外局番と同じだった。

これもご縁と呼べるのかもしれない。

ご縁のある人には、きっとまたいつか、会えると信じている。

いつの日かまた、彼女と直に向き合って、楽しく乾杯できますように。

彼女と私と、あなたの今が、キラキラ輝いていますように。


写真は台湾~台東(長濱)の風景

台湾東部の空は青く、広く、自然にあふれていました。

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