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あの日残した、最後の一口。

目の前に残っているチャーハン。


あと一口なのに。
手が動かない。
胃が拒絶する。


食べ切れるのと思っていたのに、お腹のSOSがグーグーと鳴り響く。


認めざる負えない。



そうか。



これが。
















いつからだろう。

ラーメン屋に行っても。

大盛を残すようになったのは。
餃子追加が出来なくなったのは。
家系を食べなくなったのは。

いつからだろう。


残した時のおばちゃんの悲しい顔を時々思い出す。
あの表情は「(大盛りも食べれない日和った客になっちまった)」
と私を心配した顔だったのかもしれない。

後輩とラーメンに行っても、
大盛りを頼んだくせに食べきれずに手伝ってもらう先輩をどう思うだろう。
自分の大盛りも自分で処理できない男は、仕事も出来ない。
そう思われていても仕方ない。

平然と大盛りを平らげる後輩。
これが若さか・・・。私も負けてられない。
まだまだ若さを見せつけていくこと。それこそが、若さの秘訣なのだ。

若さ若さと言っている時点でもう手遅れかもしれない。
と心の隅で考えていた。

少しずつ、あの頃を取り戻していくには何がいいか。
考えていると、あるメニューが目に入った。



「半チャーハン」



そうか、半チャーハン。
そういうのもあるのか。

昔は誰が頼むんだと思っていたが、
まさか私が利用することになるとは思ってもいなかった。

ここから始めよう。
半分でもいい。
一生をかけて、無くしたもう半分を取り戻そう。

ここからが私の再スタート。
あの頃を取り戻す。若さの証明。
若さといってる時点で若くないのはわかっている。


そしていつか、失った半分を取り戻した時。
店員さんに伝えるのだ。





私「すみません。半チャーハンおかわりで」

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