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ロンドン交響楽団と共演してわかった、一流に触れる大切さ

「おまえはベルリンフィルと共演しろ!」と、大学オケの合奏中、指揮者がバイオリンの同級生に言っていたことを思い出した。

もちろん本当に共演するわけではない(し、できるわけない)。ベルリンフィルが演奏する曲の音源を聴きながら一緒に演奏しろ、という意味だ。


昨日の合奏後、家でファゴットを練習するときに私は、ロンドン交響楽団と共演することにした。両耳にAirPodsをはめて、聴き慣れたはずの曲が流れる。

それはまるで、違う楽器が奏でているかのような華やかな弦楽器。

ファンファーレのように響き渡る金管楽器。

蝶のように軽やかに舞う木管楽器。


そこで流れるチャイコフスキーの「眠れる森の美女」はまさに、舞踏会の中にいるようだった。

聞き惚れてしまいそうなところをぐっと堪えて、僭越ながら私はファゴットで共演させていただく。


※聴き馴染みのある曲だと思います。3分くらいなのでぜひ聴いてみてください↓

曲はファゴットのソロに差し掛かるところだった。
4小節ほどの短いソロだが、この曲でファゴットの音が剥き出しになる「おいしい」場所。

音自体は難しくないし、吹き方も知っている。

フォルテから入り、フレーズが終わるにつれてピアノに近づく。フォルテも意味通りの「強く」ではなく、カンタービレで。でも歌いすぎると音楽の流れが止まるから、流れの中で歌い上げるように。

でも、指揮者は毎回このソロの度に合奏を止める。

「どう表現したいの?そのフレーズはどこに行きたいの?」
こう吹きたい、の気持ちがこもってないんだという。

そんなん、わかるか!!

せめて次の弦楽器のメロディにつなげるように意識はしている。
でもそれ以上は?そんなに一音一音、言語化しないといけない?!

そんなモヤモヤを抱えながら合奏を終えた。

***

共演するのを止めて、ロンドン交響楽団のファゴットソロに耳を傾ける。

いつも私が吹いている音と、同じ音、同じフレーズ。でも。


なに?このワクワク感。


それはまるで、舞台の幕が上がってこれから舞踏会が始まるワクワクした気持ちをまさに体現していた

すごい。こう吹きたい。

共演を終えてすぐさま同じフレーズの練習に取り掛かった。
いま感じているワクワク感をそのまま音に乗せて。

そこにはいつも考えている「フォルテから入ってピアノに」とか、「カンタービレで」とかはもう、お構いなしだった。

その音を感じて、感じたままに吹く。
そのことを、海を超えた一流のオーケストラが教えてくれたのだ。

***

一流に触れる、といえば、今日は第2回『企画メシ』の講義。
ゲスト講師で、作詞作曲家の岡嶋かな多さんをお招きする。

また違ったジャンルの一流音楽家に触れて何を感じるか。
電車の中から楽しみでしょうがない。

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