ステロイドのもう一つの顔3

ステロイドはリンパ球だけでなくマクロファージや線維芽細胞も抑制
 ここで、なぜステロイド系抗炎症薬がCOVID-19に効果があるのか考えてみよう。ステロイドの働きに詳しい京都大学ウイルス・再生医科学研究所免疫制御分野教授の生田宏一氏は、「ステロイド系抗炎症薬にはリンパ球に加えて、マクロファージや線維芽細胞などの働きも抑える効果がある」と説明している。「マクロファージや線維芽細胞は炎症性サイトカインを分泌するが、その産生細胞を抑制できればサイトカインストームの根元を抑えられるだろう」とも考察することもできる。

 その一方で、ステロイド系抗炎症薬はリンパ球の働きをも抑えるため、抗体産生や感染細胞の排除が不十分となり、感染症が悪化する危険性がある。

 実際、世界保健機関(WHO)は、同じコロナウイルスである重症急性呼吸器症候群(SARS)、中東呼吸器症候群(MERS)における投与で有害事象を生じたとの報告があったことから、当初、ステロイド系抗炎症薬の使用には消極的で、臨床研究に限って使用するよう求めていた(SARS、MERSとCOVID-19でステロイド系抗炎症薬への反応性が異なるのはなぜかについては、別の記事で紹介予定)。その方針を180度転換したのが、

9月2日。

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