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○ 牧歌的なひととき


 学生時代当たり前にあったのが農作業に触れられる時間だった。

 先輩が農家のアルバイト先を紹介してくれる、ボランティアで畑のお手伝いをしたら無料で泊めてもらえる、農業系の学校の学生さん、という事がどこでも行けるパスポートだった。

 真夜中にライトの下でレタスの収穫が始まり、グラデーションの朝焼けが尾根を染めてゆく。 りんごの果樹園で芽を摘みながら、はしごの上で延々としりとりする、尽きることのないお話。
 草むしりをしながら皆で歌ったり、カーラジオからFMが畑に響きわたって好きな曲が流れるとときめいていた。

 全身が動いていて、こころは単純作業に集中していてバランスがとてもよかった。農作業と宿泊はセットになっていて旅情を味わえる時間になり、畑からその地域の雰囲気を味わっていた。

 学生というパスポートを失った後、社会人になった自分を上手く説明できずにしばらく途方にくれた私。
 1人前になりたいとてくてく歩いていたら畑から遠ざかってしまい、かろうじて歌だけのこった、歌はどこでもうたえるから。またいつか土に触れる生活へ戻れますように、歌と畑とセットで。

 

 

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