18世紀のイギリスで未亡人となった前世

<「2015年10月 私は懲りずに3回目の前世療法を受けた。」のつづき>

 18世紀のイギリスで、未亡人となった前世 咲き乱れるコスモス畑の中央に、女の子が立っている。10歳ぐらいだろうか。長めのワンピースとエプロンを着ている。くるくるとした金髪は健在で、そばかすの笑顔がかわいらしい。やさしくて、明るいいい子だ。私のスカートは、黒…茶…こげ茶かな?いつもの地味な装い。

 セラピストであるアコさんの誘導で、少し状況が分かってきた。

 18世紀後半のイギリス。私の名前は『ファゴール』、女の子は『ニリル』。ニリルとは血のつながりはない…養女だ。夫は軍人。青い軍服と帽子が印象的。ダブルボタンの制服で、紐みたいなものがたくさんついている。勲章をたくさんもらっている位の高い軍人だったらしい。

 ファゴールと夫は身分が違った。夫はいわゆる貴族という身分で、彼女は平民…おそらく親や家族はすでに他界していると思う。つまり彼女には経済的な後ろ盾がない。そのため二人の結婚は誰からも祝福されてはいないし、ファゴールはいわゆる社交界に妻として出ていけない。それでも夫は彼女と結婚することを決断し、家族となった。結婚した当初は、優しい夫に守られて、経済的にも不自由なく暮らしていたが、二人には子供ができなかった。そこで、ニリルを養女としたのだ。夫はニリルをとてもかわいがり、3人で毎日平和に暮らしていた。ところが幸せな生活は長くは続かず、時勢は戦争へと向かっていく。

 夫が戦地へ赴く日、彼は「ニリルのことをよろしく頼む。」とファゴールに言い残した。彼女もニリルも、彼が帰ってくることを毎日一生懸命祈っていたが、開戦後しばらくして戦地で命を落とし、2度と3人で笑いあうことはできなくなってしまった。

 未亡人となったファゴールは途方にくれ、彼の故郷に来たようだが、やはり迎え入れてはもらえなかった。それはそうだろう。彼女もニリルも彼の実家からすれば、血のつながりのない、ただの他人だもの。最初に駅舎で待っていたのは、彼の実家の誰かだったのだと思うが、とうとう迎えは来なかった。彼の故郷に来れば何とかなるかもしれないと思っていたが、どうにもならなかった。駅舎で途方に暮れていたのはそのためだ。

 それでもファゴールはニリルを育てて生きていかなければいけない。かといって、かつて住んでいた場所は戦況の悪化によって安全には暮らせない。そこで、山奥にある無人の掘立小屋を改造して、二人で住むことにしたようだ。

 小さな小さな小屋。壁はベニヤで、6畳ぐらいのスペースしかない。キッチンもないから、常にアウトドアで料理だ。小屋の裏手に小さな小川が流れている。そこから水を汲み、生活に役立てている。

 そしてこの時代の夫は、現世の夫だ。夫は、いわゆる「ソウルメイト」というやつだろうか。

 アコさんが「少し時計の針を進めましょう。」と言った。「ファゴールにとって人生の大事な場面まで行ってみましょうね。5,4,3,2、1…」という誘導の声とともにスーッと場面が変わった。

 次の場面は教会だった。今日はニリルの結婚式らしい。教会には、新郎とニリル、参列者は私だけ?厳かな空気の中で、二人は神父さんに永遠の愛を誓う。


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