バスのなかで泣いてしまった
博多駅近くのクリニックからの帰り、ぼんやりと考え事をしていたわたしはその「ぼんやり」のきっかけとなった先生からのひとことを思い出していた。
「手術して、ちょうど10年になるね」
21歳で甲状腺機能亢進症(いわゆるバセドウ病)になったわたしは、数年間の投薬を経て、肥大した甲状腺を切り取る手術をした。そうか、あれ、10年前だったのか。確かにまだ20代だったな。その後も3ヶ月から6ヶ月おきに血液検査のためにこのクリニックに通っているのだから、つまりはこの先生とも10年以上の付き合いになる。
10年で人生変わったでしょう、と、ちょうど採血してくれた顔見知りの看護師さんにも声をかけられ、「そう、ですねぇ」と曖昧に答えた。変わったのだろうか、それとも変わっていないのだろうか。
クリニックを出たあともなんとなく沈んだ気分で、帰りのバスに乗り込んだ。10年、かぁ。お金持ちになったわけでもなく、華々しいキャリアを築いたわけでもない自分の人生を思い、なんとも言えない気持ちになる。
−と、そこでなぜか突然涙が溢れた。そんなことないよ、がんばったじゃん、10年。
つらかった体調の変化、手術のことを思い出す。術後、仕事でつい無理をして、バテてしまったこともあったっけ。
10年。
思いがけない妊娠と流産。NYに留学したこと。東京までスクールに通ったこと。朝活のコミュニティを足掛け5年も続けたこと。講演会やセミナーをたくさん主催したこと。コーチとしてクライアントをとるまでになったこと。コラムも書き続けたこと。知らない国を旅したこと。自分のなかの大きなパラダイムシフトも何回も経験したこと。
歯の矯正もしたな。英語も話せるようになった(いまはもう振り出しに戻ってるけど)。
素敵なひとたちにもたくさん出会い、ありがたい経験もたくさんさせてもらった。そして何より、母になった。
沈んだ気持ちになんて、なることなかったのだ。一体どれだけ自分の足りない部分ばかりを見てきたのかと思うと泣けてくる。
ごめんね、10年がんばったよね。
これからはもっと、肩の力抜いて行こうね。
Thank you for reading!