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パクチー気分、セロリ日和

「食べたい」と思ったときと、実際に食すまでのタイムラグにより、冷蔵庫で行き場を失う食物たちがいる。「今夜はこれにしよう」と冷凍庫から冷蔵庫へと移動しておいた肉を、夕方になって何度、「...コレジャナイ」と冷凍庫にリターンしたことか。食べたいものが刻一刻と変わるわたしは、もちろん、つくりおきなどうまく回せたためしがない。

◇◇◇

ある日、久しぶりにパクチーが食べたくなって、近所のスーパーで買い求めた。青々としたその葉を眺めながら、うっすらと思ってはいたのだ、このときすでに。

-これを、夜のわたしも食べたいとは限らない...。

なんたってパクチーである。食べたいときは無性に食べたい気持ちが募るが、1度そのノリを逃してしまうとあいつは単なるくさい草である。そしてあのオンリーワンの存在感により、適当に煮物にしたり味噌汁にいれてお茶を濁すこともできない。

そうして何度、野菜室で使命を果たせぬまま尽きたあいつを見つけたことか...ゆるせ、パの字。。

そんな前科持ち(しかも複数回)ゆえの不安を覚えつつも、えいやっと買い込んで自宅に帰る。野菜室にパクチーを入れて、そのまま別の用事に戻る。書きものなんかをしているうちに、昼間買い込んだ食料のことなどすっかり忘れている。

数時間経って、さて、今日は何を食べようかと冷蔵庫をのぞく。そうだ、残っていた鶏肉と筍を煮て、新玉ねぎをスライスして、お味噌汁は豆腐と...。

野菜室を開けると、もちろんあいつが目に飛び込んでくる。緑の葉っぱを前面に押し出して。今日の命を差し出して。わたしはそっと目を逸らす。ごめん、ごめんよ、ぼく、もうそんな気分じゃないんだ-。

わたしにとってこれが起こりやすい2大野菜は、「パクチー」と「セロリ」です。

どっちもくさい草やがな。

#エッセイ #パクチー #キナリ杯

◇◇ポッドキャスト更新◇◇
毎週2回、10分ほどの番組です。今回のトピックは「誰といる自分が好き?〜分人主義でラクになる」。気分転換にぜひ!

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