藍選手を見るはずが石川選手を見てきた話、アリアンツ・ミラノ観戦記
イタリアでバレー観戦をしてきた話。
環境が違うと、同じ競技でもこんなにも感じ方が違うという事を知った
驚きと、その理由をnoteを綴ることで振り返ってみました。
旅が決まるまで
昨秋のOQT以来、「藍選手を見にイタリアへ行きたい」とずっと言っていた娘。私も藍選手は好きですが、イタリアにまで行くのはあり得ないと断っていました。
その頃の私はスポーツ観戦で海外へ行くのは、お金と時間に余裕があるセレブか、いち選手への愛が閾値を超えてるガチ勢だという認識でした。
私は一般的人ですし、藍選手が格別好きというよりはバレーという競技のファンです。
もちろんテレビや配信で見るより、会場に足を運んだ方が面白いのは分かりますが、わざわざイタリアまで行かんでもええやないの、これが本心でした。
日本での準備
ところが昨年の12月頃、年明け2月上旬なら1週間の旅に行けることになりました。約10年ぶりの海外旅行に心が躍ります。
そこで母として、娘の願いを叶えるべく母娘イタリアバレー観戦旅行を決めました。(急すぎて他の目的地を考える余裕がなかっただけですが)
藍選手が所属するモンツァのホームゲームで2月上旬の試合となると、2/4(日)のモンツァvsトレンティーノ戦になります。この試合を中心に旅を組み立てることにしました。
旅行に備えた行動をざっくり整理するとこんな感じ。
12月(試合2ヶ月前):パスポート更新、航空券購入、ホテル予約
1月(試合1ヶ月前):チケット購入
パスポート、航空券、ホテルはすんなり用意できましたがチケットは困りました。
日本と同様にモンツァのチケットもネットで購入できるのですが、カード決済がうまくいかない。
そこでロコタビを利用し、イタリア在住の方にチケットを取ってもらいました。
ロコタビは今回初めて利用したサイトなので半信半疑でしたが、私はきっちり依頼に応えてくれる方と出会えて良かったです。
藍選手の怪我と試合日時の変更
出発の一週間前、準備万端だと思っていたら、1/24の試合で藍選手が負傷したとのニュース。私たちが見に行く次戦は藍選手の出場が厳しい模様でした。
怪我はショックでしたが、体調が良くても出場機会が無いのはよくあること。藍選手の欠場は想定の範囲です。
ところが同時に試合日時の変更も発表されました。
これには参りました。
当初の2/4(日)18:00から、2/3(土)20:00に。
宿をとったミラノ中心部から試合会場まで電車で約1時間、更に駅からも遠いようです。
フルセットになると帰りは深夜が予想されます。私は海外に慣れているタイプですが、さすがに少し不安になりました。
そこで石川選手が所属するアリアンツ・ミラノの試合を調べます。
アリアンツ・ミラノvsカターニアの試合も日程が変わり、2/4(日)から2/3(土)18:30へ。
アリアンツ・ミラノの会場はミラノ市内にあります。移動が楽そうだし、開始時間もいい感じ。
ほな石川選手を見ようと予定を変えることに。
すぐにモンツァのチケットを払い戻し、アリアンツ・ミラノのチケットを購入しました。
試合日時の変更には驚きましたが、イタリアではよくある事のようです。
事前に準備できたので結果オーライです。
当日、スタジアムまで
直通便がないミラノ。関空→東京→フランクフルト→ミラノと空の旅を嫌なほど満喫して辿り着きました。
到着した翌日が試合だったのですが、電子チケットには試合開始時間だけが載っていて、開場時間が記されていませんでした。
できるだけ早く会場に行きたいけど、何時から開くのか分からん。
日本だと試合開始2時間前が開場時間ですが、そんなにイタリアは早くないだろうと考え、とりあえず試合開始の1時間半前に着くように準備しました。
観戦記
試合開始前
17時過ぎ、アリーナの入場口に到着し、荷物チェックを受けて入場。
前から2列目のアリーナが私たちの席。飲食可能かスタッフに確認してから、ビールとポップコーンを購入。
席に着いた時点では、カターニアの選手だけがアップをしていました。
アリアンツ・クラウドは座席数5,420人の大きな会場で、コートを底に観客席がぐるりと取り囲んだすり鉢状。
観客席の勾配がしっかりついているので、スタンド上段でも見やすそうだな、という印象でした。
試合開始1時間を切った頃に、ミラノの選手がコートに入ってきました。
円陣を組んでから始まるアップは先ずストレッチ。
この時の客入りはぼちぼち。
ただ私の背後(ミラノ側のスタンド席前列)には日本人がずらっと並んでいました。調べてみるとJTBの石川祐希応援ツアーの方々だったようです。
前を見ればミラノの選手たち、後ろを振り向けば日本人。不思議な感じでした。
観戦記
ミラノのアップは1時間足らず、あっという間に試合開始となりました。
試合が始まって最初に驚いたことは、線審がおらず審判が主審と副審の二人体制だということ。
試合中何度か「イン/アウトのチャレンジ」があったので、主審と副審がジャッジし、それに納得がいかない場合はチャレンジを使ってビデオ判定をするシステムのようです。
私は線審の動きと存在が好きなのですが、やはり線審がいないと試合は見やすかったです。
肝心の試合について・・・
アリアンツ・ミラノはつい最近までパワーバレー・ミラノ(去年改名)だったので、パワフルでエースが決めきるプレースタイルだと勝手に思っていたのですが、実際は全く違うものでした。
泥臭くボールを繋いで、体勢が整わない場合はリバウンドをしっかりとって、辛抱強く戦うバレー、これが私のアリアンツ・ミラノの印象です。
ミラノのセッターのポッロの配球はギリギリまでどこに上げるか分からず、次の攻撃が予測できないので見ていてワクワクしました。
石川選手ですが、感想を述べるものおこがましいくらい素晴らしかった。
バレーが上手いのは知ってましたが、キャプテンとしての立ち振る舞いを見るのは初めて。コートでもベンチでも声を出し、プレーでもチームを引っ張って、選手にもスタッフにも信頼されてるキャプテンなんだと感じました。
バレーが日本代表級にうまくて、語学を習得して、世界最高峰のリーグに属するチームでキャプテンを任せられる。
これら3つを同時にできるなんて凄い、素晴らしい。もはや神々しかったです。
石川選手は技術的に上手いだけでなく、魅せるプレーも上手かった。
基本的にエンドラインを狙う事が多い石川選手のスパイクですが、3セット目にキレッキレのインナーを打ってくれました。
1、2セットを連取し、3セット目が最終セットになりそうな雰囲気、少し単調に感じている観客のために石川選手が見どころを作ってくれたのかな?と私は思いました。
単純にコートの空きスペースを狙ったのかもしれませんが、この華やかなプレーで会場は沸きました。
これがプロスポーツ選手なんだと思わず唸ったプレーでした。
1時間半で終わった試合はストレートでミラノ勝利。
試合が終わって
試合後、選手のインタビューがあったようです。
イタリア語で、内容が分からなかったから記憶から抜けてます。
スポンサー?の人達とコート中央で談笑する選手や、コートの端でストレッチをする選手など、日本に比べて試合後の雰囲気は自由だと感じました。
セッターのポッロはアリーナの観客に呼ばれ、写真を一緒に撮ったり、サインを書いたり大人気。
他の選手もスタンドから投げ込まれたシャツにサインを書いて投げ返したり、選手とファンの距離感が近いのも魅力的でした。
私も石川選手に声を掛けたかったのですが、もはや見てるだけで十分でした。とても満たされた気持ちでアリーナを去りました。
電車に20分くらい乗り、ホテルに近づく頃にやっと興奮が落ち着き、自分は空腹なんだと気がつきました。
帰り道で大きなケバブとデカ盛りポテトをビールで流し込んで、この日は就寝。楽しく充実した1日が終わりました。
おもしろの理由は?
長々と書きましたが、ここからが私にとっての本題です。
プレーはVリーグもセリエAに遜色ないくらいレベルが高いものだと思います。
では何故こんなにも面白い時間を過ごせたのか。
一つはトラベラーズハイ(こんな言葉はないだろうが)だと思います。
遠路はるばるイタリアまで行くことで、試合前から気持ちが高揚していたのは間違いない。
もちろん全日本キャプテンでもある石川選手の存在も理由のひとつ。
しかし、主となる理由は試合のテンポの良さと応援団の存在だったと思います。
テンポの良さ=バレー観戦に集中できた
Vリーグではアップ終了後、一旦選手は退場して着替えてから再度登場しますが、この日はアップでコートに出た選手らは、ずっと出ずっぱり。
アップが終わると、ベンチでユニホームに着替えて、そのまま選手紹介でした。アップから試合開始までがスピーディ。
更にVリーグでは2〜3セット間はダンスやチャレンジコーナーなどのショータイムがあるのですが、この日はどのセット間もコートチェンジのみでショーがなかった。これまたスピーディでテンポがいい。
ショーが無いと前セット終盤の熱を保ったまま次のセットを見れので、セットごとに観戦の熱量が右肩上がりになっていきました。
応援団の存在=選手の応援+観客のテンションも上げてくれる
試合観戦が面白かった最大の理由はミラノの応援団です。最高でした。
応援団はミラノのナイスプレーには拡声器を使った声出しと、地声と太鼓で盛り上げてくれます。
もちろんミラノのサーブの際も、手拍子と声で選手へのエールと会場に一体感をもたらしてくれました。
特筆すべきはカターニアのサーブの時のブーイングが凄まじさ。
カターニアの選手がサーブを打とうとエンドラインを越えた頃くらいから、拡声器でサイレンを鳴らします。続いて声出しと太鼓で選手の集中力にちょっかいをかけます。
「私たち、あなたのサーブの邪魔しますよ!」と言わんばかりのあからさまなブーイングは清々しかった。
これは私にとって驚きでも、イタリアでは日常のようで、カターニャの選手は淡々とサーブを打っていました。
こうやってメンタルは鍛えられるのでしょうか。
また、いくら愛するミラノであっても不甲斐ないプレーにはファンも態度で示します。
コンビが合わなかった時や、ネット際でボールを見失った時は「しっかりせい!(多分、こんなことを言ってたと思う)」と叫んでました。
ミラノに対する応援や檄、カターニャに対するブーイング、どれも違うベクトルだけど全部絶対値がすごく大きい。めちゃくちゃ熱い。
テンポ良く試合が進んで集中している観客に応援団の熱さが伝わり、更には引っ張られて会場全体の熱が上昇します。
この熱は当然私にも伝わり、同じ競技でも一層熱く楽しい時間となったのだと思います。
最後に
お金も時間もかかりますが、海外でのスポーツ観戦は最高。
セレブやガチ勢だけの楽しみにしておくのは勿体無い。
興味があれば、少しくらい無理をしてでも行くことをお勧めします。
おわり
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