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キャッチコピーの発想技法を活用する

 コピーライターが普通の人と決定的に違うところはアプローチの引き出しが多いということだと思います。けれど、普段の会話フレーズでは、いくつもの引き出しを開けている時間がありません。
 コピーライターの技法や発想法をフレーズ話法にシンプルに生かすなら、次の3ステップが役に立つはずです。


1 相手のニーズを知る
2 伝えるべきことを知る
3 キーワードに変換する


 まず、相手のニーズについて。
 コピーライターではない人がキャッチコピーを書くとき、犯しがちな失敗は「自分が言いたいことと、相手の聞きたいことは違う」という現実に気づかないことです。
 たとえば、「商品開発で何日も徹夜した」「こだわりの素材を使っている」「自慢の調味料が入っている」などはぜひ伝えたいと考えます。ところが、お客さまはそういうことはどうでもいい。結局、「それで私はどう便利になるの?(どうおいしいの?)」が聞きたいのです。


〈例〉×植物性オイルとショウガ成分を配合したドレッシング
   ○ダイエット中の人にぴったりの健康ドレッシング


 残念ながら、こちらの苦労やこだわりは二の次です。だから、相手を知り、相手の都合を思いやることが必要になります。いわば、相手のニーズの所在をつきとめる作業がコピーライティングなのです。

 たとえば、実績を上げた若手社員に報いるときも、何を大切に考えるタイプなのかを知ることが必要です。それに基づいて、ボーナスへの反映がいいのか、長期の特別休暇を認めて「豊かな生活」を実感してもらうのがいいのか、全社朝礼での表彰という名誉がいいのか、言葉のかけ方はまったく変わってくるでしょう。


脳内1人ブレストで言葉を探す

 相手のニーズ、希望がつかめれば、相手の聞きたいことが何かわかります。その内容を、ムダな言葉を削ったシンプルで短いフレーズにします。
 このとき、できたフレーズが平凡な言葉ばかりではないかを確認します。少なくとも1語は強い言葉が使われていると、効き具合が変わってきます。
 平凡な言葉は強い言葉に置き換えればいいのです。強い言葉には、次のようなカテゴリーがあります。

〈強い言葉のカテゴリー例〉

1 オノマトペ……擬音語・擬態語のこと。ふわふわ、ガンガン、など

2 具体的な言葉……リアルに目に浮かぶような詳細な描写など

3 切実な言葉……悩みや病気、コンプレックス、資金調達のような言葉など

4 感情的な言葉……抱きしめたい、ムカつく、のような感情的な言葉など

5 初耳の言葉……知らない人の興味を引くような言葉など

6 新語・流行語……手アカのついていない新鮮な言葉など7 ダジャレ……ダジャレや地口、言葉遊びなど


「1つの商品広告のためにコピーライターは何百本というキャッチコピー案を書く」という話は聞いたことがあるでしょうか。こればかりは、量が質を生む世界。白い紙を前に、あれこれアプローチ法を変えて書いていくものです。

 しかし、会議や会話の場でとっさには出てきません。だから、日頃からの準備やストックをしておくことが大切なのです。
 さらに、キャッチコピーを書く細かなテクニックの中でも、短いフレーズを作るのに活用できる手法があります。それらは、次章からのシチュエーションごとのフレーズ話法とともに解説していきます。