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相手に選ばせる・決めさせる

 たとえ部下であっても、頭ごなしの命令は通りづらい時代です。私自身が20代の頃を振り返っても、指示された仕事の理由や狙いを聞かないと動く気がしませんでした。
 さらに言えば、最もモチベーションを持って取り組んでもらえるのは本人が言い出した仕事です。企画やアイデアを出すような案件に限らず、作業の期限を決めるような場合も同様です。

「来週の月曜午後イチまでにやってくれ。できるよな?」では、理想的なパフォーマンスは望めないかもしれません。最悪の場合、月曜には出来上がっていない事態もあり得ます。

 友人の勤めるメガバンクで実際に起きたケースです。
 月曜日提出の仕事を割り振られた本店のある若手行員が、ほとんど進んでいない書類と資料を部長のデスクにキレイに積み上げて失踪。約1カ月間の行方不明ののち、四国の実家に帰っていることがわかり、部長が迎えに行ったというのです。


締め切り、目標は本人に決めさせる

 能力を大きく超えた課題を与えるのではないにしても、少しキビシめな締め切りを守らせるには期限を本人に決めさせるのが一番です。
「いつまでにできるかな?」と訊けば、顧客先へ提出する事情がわかっているスタッフは「キビシイけれど、この日前後にはできていないと困るな」と考えて、自ら締め切りを宣言してくれます。

 事情がわからずにズレた日程を言い出すスタッフには、「そうすると、確認と修正に○日、上の決済待ちに○日かかるとして、先方のスケジュールに間に合う?」と問いかけて再考をうながせばいいのです。

 達成目標を決めるような際も、本人に宣言してもらえば納得感が出ます。
 たとえば営業目標を割り振る会議では、ほかの社員もいる席上で金額を言い合うことになります。各人のプライドもあり、本人が決めた目標であれば達成率の高まることが期待できます。

〈例〉今期の目標に800万円足りないけど、石川くんはいくらならいける? 
〈例〉長谷川くん、今日は何時までなら残業できる?

 また、部下の成績が振るわないことを「なんとかしろ」と一方的に責めても、本人はやる気をなくすだけです。

 足りない部分やスキルがあるなら、「足りないのはどこなんだろう?」「どうしたら完璧になるの?」と刺激になる問いを発すれば、本人が考えるようになるのです。

 セールス・テクニックの1つに、買うと決めていない段階で商品の選択をさせるというものがあります。
 たとえば、冷蔵庫の購入を迷っているお客さまに次のような質問をするのです。

〈例〉買うとしたら色はどちらにしますか? ブルーですか? シルバーですか?

 問われたお客さまは冷蔵庫を自宅に置いたシーンをイメージして考えます。そうすると、もう買ったような気分になり、買わずに帰ることができなくなってくるというわけです。

 これをプレゼンに応用して考えると、実施内容に選択の余地がある点について前もって問うことなどが考えられます。

〈例〉サーバーの設置場所は御社と弊社のどちらにしますか?

 その選択肢について具体的に考えることを促し、採用のイメージを描いてもらうのです。また、その態度やコメントを観察することにより、自社案が選ばれる可能性や実施するうえでの課題も明らかになってくるという効果もあります。