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8:夫と死別してから4年目の春に今想うこと

彼の夢はあまり見なかった。ただ一度だけ最悪な夢を見た。
ある日、「ただいまー!」といつも通り彼が家に帰ってきて、私がただただ驚いていると「ビックリした?」と悪戯っ子の顔で私の顔を覗き込みにやっと笑った。

娘が産まれる2週間前のエイプリルフールの仕返しだと思った。
「実はね、今日の検診で女の子じゃなくて男の子でしたって言われたんだよ!」既に名前の候補も決めていたので彼は「そっか。名前考えなおさいとね。」と言って難しい顔をして考え込んでいた。しばらくして「ウソぴょーん!今日はエイプリルフールだよー!」と言いながらくそ程スベっていることを実感した。「全然面白くないから。そういう嘘やめて。」と珍しく冷たく言われた、あのエイプリルフールの仕返しだ。

私は彼の胸ぐらを掴んで引き寄せると彼にしがみつき、「もう二度としないで!もう本当に一生会えないかと思ったんだよ。死ぬほど悲しかったんだよ。私を悲しませないで!」と言った。「わかった、ごめんね」と言われた時に目が覚めた。

あまりにも全てがリアルだったので、どっちの世界が夢なのかすぐには判らなかった。

急いでリビングに行くと、彼の遺影とお位牌とユリの花があった。

死んでしまいたい。という願いさえも出てこなかった。自分が正気を保てるか、ただそれが怖かった。頭の中の冷静な部分が「深呼吸、深呼吸。」と言った。深呼吸をしたが息の吐き方がわからなくなってしまった。どうやって息を吐いていたのだっけ。吐く前にどんどん吸ってしまう息は私の目をチカチカさせた。

その時、寝室から「ママー!!」と私を呼ぶ娘の泣き声がした。「はーい!今行くよー!」自分でも驚くほどいつもの私に戻って娘のもとに駆けつけた。息はいつも通りできていた。

私が娘に助けられて生きている。柔らかくて暖かくてもう飲んでいないのに母乳のようなほのかに甘い匂いのする娘は、計り知れないエネルギーを私に与えてくれた。

あの時、一人だったらとても生きてはいけなかった。

黒斎さんの緑の本「もっとあの世に聞いた、この世の仕組み」には私がそれまで当たり前だと信じて疑ったこともない、強い思い込みを根底から覆すことが冒頭から書かれていた。

『存在のすべては一つの同じものである。ゆえに、生命は複数存在するのではなく唯一無二の存在であり、人は皆その同じ命を共有している。自分が命を所有しているのではなく、命そのものが「自分」であるため、「命を失う」ということ自体が有り得ない。』

渋谷で話してくれた一本の木の話を思い出した。

分離した個人というバラバラの存在があるのではなく、1つの大きな生命を生きている。生命を「神」や「愛」に置き換えてもいい。生命が私を生きている。

分かるような、分からないような気になったが、いかに自分がこの世の仕組みについて、生命について何もわかっていないか。という事だけはよくわかった。

黒斎さんのブログをひっくり返してほとんど全てを読み、そこで阿部敏郎さんの存在を知った。

私は阿部さんと禅僧である向令孝さんが主宰する(今でいう)オンラインサロンZENサンガに入った。

夫が亡くなって4ヶ月、黒斎さんのセッションを受けてから2ヶ月が経っていた。

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