26.二度と会わない、それでいいですね?

5年以上付き合っているのに、一度も彼の家族や友達に紹介してもらえず、むしろ遠ざけられていること、彼の家の近くに何度も車で送っているのに、一度も家の場所は教えず、毎回変な路地で降りて帰っていくことを指摘して、もう我慢できない、傷ついている、と私は彼にはっきり言った。

彼は、酔って座った目で、
「ああ、わかりました。あなたがそこまでめんどくさい女だとは知りませんでしたよ。
私のことが気に食わないなら、今すぐ帰りますよ。そして二度とあなたの前には現れない。それでいいですね?それがあなたの望みでしょう?」
と言った。

私の家のリビングで。
私のお金で買ったお酒を、昼からしこたま飲んで、何を言ってるんだ。
と、私は思った。

今まで通りなら、私は「ごめん、二度と会えないなんて嫌だ、だから、もう面倒なことはいいません!ごめんなさい!」と彼の足元にすがって許しを乞うはずの場面だった。

あとから考えれば、彼もそういう展開になることを予測して言ったのだろうと思う。

でも私は、この時は、泣きながらも、妙に冷えた頭の中で、もう会えなくてもいいや、と思った。
ここまで言っても、彼が「ではあなたを私の家に招待しましょう」とはならないんだ・・・と絶望したから。

だから、
「わかった。じゃあもう帰ってくれるかな」
とはっきり言った。

彼は、無言で私を見ていた。酔った座った目で。

どのくらいその無言の状態だったのか分からない。
じゃ帰ります、とすぐ帰ると私は思ったのに。

けど、彼は動かない。

私は泣きながらも、
(あれ?この人なんで帰らないの??)
と思った。

ものすごく長く感じたけど、実際はほんの1分程度だったかもしれない。
無言で私を見ていた彼は、やっと動いて、私の台所でいつも通りタバコを吸い始めた。
私は、動かず無言で彼を見ていた。
彼は、ゆっくりゆっくりタバコを一本吸い終わった。

今度こそ帰るのかな?
と思ったら、
彼は、そのまま寝室へ行き、私のベッドで寝始めた。
しばらくしたらイビキが聞こえてきた。

・・・

私は、
「帰らないのかよ・・・」
と思いながら、ソファで寝た。


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