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見きり発しゃ文庫『未完』
#3 私(仮)
私は、 である。
名前はまだない。
肩書き(ラベル)はある。
学名は、ホモ・サピエンス、
女性、日本人、東京勤務の入社3年目のOL、
上司からは可愛い後輩、
後輩からは優しく頼れる先輩、などなど。
ガチャ。
玄関の扉を開け、私はまず、仮面を外す。
そして、おもむろに、リビングへ行き、
壁に仮面をかける。
この仮面は万能だ。
場の空気を纏える仮面。
空気を察し、目立たないように、
不特定多数のうちの一人になれる仮面。
仕事では、
先輩に対しては、可愛げのある後輩面を、
同期に対しては、成長意欲ある仲間面を、
後輩に対しては、頼りになる先輩面を、
取引先に対しては、有益で無害な社員面を、
他にも、
彼氏に対しては、
友達に対しては、
家族に対しては、、、、
私は、人が求める私を察する度に、
仮面を被る。
仮面を通しての言葉、行動、感情、、、
私は、いつでも、どこでも、
仮面を身につけて、外に出る。
仮面は私自身をいつも守ってくれる。
洗面所に行き、化粧を落とす。
私は、鏡に映る自分を見る。
目がふたつ、鼻がひとつ、口がひとつの人間。
どこにでもいる普通の人間。
鏡の中の私が、私を覗き込む。
そして、おもむろに聞いてくる。
「あなたは、誰?」
鏡の中で微笑む私の顔が少しずつ歪み始める。
顔の形だけとどめた、黒いぐるぐるした物体。
中身空っぽの透明人間。
私は私の表情が見えなくなった。
笑ってるの?
泣いてるの?
怒ってるの?
私は、、、誰、、、?
私は、 である。
名前はまだない。
仮面を纏った人間。
仮面で守られてきた人間。
仮面を外してみたいと願う人間。
仮面が顔に張り付いて剥がせなくなる前に、
一度仮面を外した私で世界を見てみたい。
拙い文章ですが、
最後まで読んでくださり
ありがとうございます!
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