『生きるぼくら』を読んで、涙。
『生きるぼくら』
この本の著者は、原田マハさん。直木賞候補になったこともある方だ。キュレーターさんでもあり小説家でもある方なので『楽園のカンヴァス』『暗幕のゲルニカ』『たゆたえども沈まず』など、美術史とフィクションを織り交ぜた小説も多く書かれている。
それらは名画がどのような背景を受けて生まれるのかを一緒に追いかけている気持ちになれて、私としてはとてもスリリング。大好きな作家さんだ。
原田マハさんの著書には美術以外を題材にしている小説やエッセイも多数あり、そのおすすめを以前に友人から教えてもらっていた。
そのひとつが『生きるぼくら』。
あらすじとしては・・・
人や生き物、自然、お米…全ての生きる力を信じて見守るマーサばあちゃんの言葉に、読みながら何度も涙。
その言葉が温かくて時に強く、鼻をくすぐるような優しさが込められたりと、まるで春風のようなのだ。
ただそれらは冬の厳しさも知っているからこその言葉だと伝わってくる。全てを栄養にして優しい笑顔に変えてきたマーサばあちゃん。それに応えるようにして、青年やつぐみも伸び伸びと逞しく成長していく。
電車の中で読んでいると涙をこらえるのが大変だった。
こらえきれてなかったのか、座席の前に立つ人にじっと見られることもあったけど気にすることもできず。
友人は、この小説に出てくる絵画の作者が好きだと言っていた。私自身、はじめてその画家さんの絵を前にした時、言葉も出ずただ心が澄んで絵の世界に吸い込まれる感覚がした事を思い出す。
この小説を読み終え改めてその絵画を見てみると、マーサばあちゃんと主人公の青年とつぐみ、彼らを見守り応援する村の人たちの命もまた、絵に描かれているようなひっそりと佇む自然に、みんなみんな包まれていたんだなぁと感じた。
「人の手は生き物の手。人の力は自然の力の一部なのだから。…」自分と様々な命が繋がっていることを忘れずに生きたい。これからもし何か大きな壁を感じたり、下を向きそうになったらまた読もう。そう思わせてもらえた本だった。
久しぶりに母のおにぎりが食べたくなってしまった。
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