戦略からUIまで伴走するUXリサーチ @ UX MILK All Night
デジタルなUXに関わるすべての人のためのUXデザインフェス・UX MILK All Nightに登壇させていただきました。今年はなんとオンラインかつオールナイト開催!
昨年のUX MILK Fest 2019では「Agile UX Research」をタイトルにお話させていただき、資料やいただいたご質問への回答はこちらのnoteにまとめています。
今年は「戦略からUIまで伴走するUXリサーチ」というタイトルで、メルペイが2020年7月にリリースしたばかりの「おくる・もらう」機能を例に具体的なリサーチプロセスをお伝えしました。資料はこちらで公開しています。
登壇の概要
このプロジェクトでは大きく分けると戦略検討・プロダクト検討・マーケティング検討の3つのフェーズがあり、それぞれで行ったリサーチについて実際のリサーチドキュメントも一部載せながら詳しくお話しました。
今回の発表でお伝えしたかったことは、UXリサーチの貢献可能性は幅広いということです。「UXリサーチってユーザビリティテストのことでしょ?」というイメージがまだまだあるように思います。もちろんそれも一つなのですが、実際には戦略からUIまで、もっというとマーケティングやPRまで様々な事業の意思決定に貢献できるはずです。ただ、いきなり一気に広げられるわけではなく、組織内で信頼を得ていくことやUXリサーチ文化の定着などいろんな要素の積み重ねで実現できることだとも思います。
こちらの画像はUXの5段階モデルとUXタイムスパンを組み合わせたマトリクスを使って、今回ご紹介した「おくる・もらう」機能のプロジェクトの戦略検討・プロダクト検討・マーケティング検討の3つのフェーズがどこに該当したのかを図示化したものです。戦略やマーケティングのリサーチというといまいちピンとこないかもしれないと思い、どういうリサーチで伴走したのかを詳しめにお話させていただきました。
私自身が普段関わるのはプロダクトの新規検討や改善のリサーチが多いですが、もっと戦略やマーケティングのリサーチも経験を積んで出来るようになりたいと思っています。なぜかというと、それでこそお客さまとサービスのあらゆるインタラクションで一貫した体験を実現できるからです。そのためにはもちろんリサーチスキルの向上も必要ですが、経営者や意思決定者の目線で考え議論ができるようになることや、マーケティングの知識や理解を深めてプロダクトの橋渡しをすることなども重要だと思います。
今回リサーチデータをオープンにした理由
また、今回の登壇の裏テーマとして「Go Boldにリサーチデータをオープンにしてみよう!」というのがありました。従来、UXリサーチは個人情報や社外秘情報を扱うため、なかなか具体事例やナレッジが流通しづらかったように思います。もちろん個人情報は遵守する必要がありますが、社外秘情報といっても既に世の中に公開されたものに関しては「オープンにできない」と自分が思い込んでいただけかもしれません。そこで今回自分からギブしていくことで業界全体でもっとオープンな情報交換や議論が進んでいけば嬉しいなという思いもあり、実際のプロジェクトで作ったドキュメントを一部オープンにしました。すでに出ている機能がどういうリサーチプロセスを辿ったのかをお伝えすることで、みなさんの現場でもどのように活用できそうかイメージを膨らませて明日から実践するのに役立つと嬉しいですし、さらにその実践した結果をまた業界に対して発信していただけると情報が循環していいなと思っています。
このような考えに至ったのは、「アウトプットするところに技術は集まる」という考えのもと、技術コミュニティに貢献しているメルペイエキスパートチームの影響がありました。彼らの活動について詳しくはぜひこちらの記事をご参照ください。
私自身もUXリサーチの業界やコミュニティを盛り上げて貢献していきたいという思いがあったので、エンジニアのオープンソース文化やコミュニティ活動から学びたく彼らに一度相談をさせてもらいました。その過程で「リサーチデータは社外秘情報だからオープンにできない」という前提を決めつけてやり方を悩んでいたことに気付き、オープンな情報発信が推奨されている社風のメルペイにいるからこそGo Boldな発信にチャレンジすることで「アウトプットするところに情報が集まる」のではないかと思うようになりました。そういうわけで、今回の登壇は私にとって実験でもあります。
それに、リサーチでわかることはあくまでインサイトまでであって、そこから解決方法を考えるのはチームの総力です。仮にリサーチデータやプロセスをオープンにしたことでそっくりそのまま真似しても同じ解決方法に至るとは限らないのです。そもそもやり方だけを真似たとしても、リサーチャーによって得られるインサイトの広さや深さは異なるでしょう。そしてリサーチで得たインサイトからよいプロダクトを作っていくのはプロダクトマネージャーの企画力、デザイナーの表現力、そしてエンジニアの技術力などチームの総力あってこそです。そんなチームへの信頼があるからこそ情報を惜しみなくオープンにすることができるのだと思いますし、今この時このチームでしかつくれないものがあるというのがサービス開発に携わる面白さの一つだと思います。
とはいっても、オープンに情報発信することには勇気もいります。無駄に炎上などしたくないし、自分の未熟な仕事ぶりを見られるのは恥ずかしくもあります。そういうわけで、一部黒塗りにしたり解像度粗めにしたのはご了承ください(笑)いつかドキュメントまるごと公開できたりしたら面白いかもしれませんね。
Meta UXR Projectについて
最後に少し宣伝させていただきましたが、情報発信の一環で同僚とMeta UXR Projectというのをはじめています。これは名前の通り、UXリサーチ実践者が困っていることやつまづくポイントをメタ的にリサーチするプロジェクトで、最終的にはUXリサーチの実践本という形でまとめて出版する予定です。
こちらも本の執筆プロセス自体をオープンにしていきたいと思い、編集会議をstand.fmで配信していますのでよかったらお聴きください。Meta UXR Projectについてもまた別途noteでご紹介できたらと思っています。
最後に
今回登壇にあたって資料の構成から細部まで丁寧にレビューしてくれたデザインチームや、情報公開範囲について相談に乗っていただいたPRチームの皆さんありがとうございました。オンライン開催でも楽しめたのは、参加者の皆さんが多くの質問や感想などリアクションを寄せてくださったおかげです。そして何よりUX MILK運営のみなさん、初のオンラインかつオールナイトな取り組み本当にお疲れさまでした!また来年もこの場で何か話題提供ができるよう、現場で実践していきたいと思います。
大学院で使う本を購入させていただきます!