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旅回想 大島(宗像市)

昨年の夏、漁船で沖ノ島を望むツアーに参加したとき、漁船の側面にいた私は、どんぶりと潮をあびたのでした。高波がスローモーションでたちあがり、海の中が見えました。次の瞬間、全身ずぶぬれ。漁船の船長が操縦席のまどから見えて、船の後部に座っている人たちは、唖然としていました。

あの時、沖ノ島はうっすらと姿を現しましたが、視界は悪く、漁船は大島をぐるりめぐって神湊渡船場近くに戻ったのでした。その時、来年きっともう一度、沖ノ島を望む旅に出ようと決めました。

沖ノ島は宗像大社の神領。世界文化遺産です。沖ノ島を望む遙拝所がある大島もそうですが、大島へはフェリーや旅客船で30分足らずで渡ることができます。その日も、私を含めて釣り客数人と、家族連れ一組、シニアグループ旅5名、カップル2、3組、一人旅も私の他に2名ほどでした。

運動不足がたたってか、電動付自転車でも坂道をあがるのは大したエクササイズで、中津宮~中津宮遙拝所~御嶽神社入り口あたりでぶったおれそうになりました。御嶽山ではなく、風車展望台方面へ向かった時、地蔵菩薩、虚空菩薩、薬師如来の祠の前で動けなくなりました。熱中症のような上々で人生初の不調。人は誰も通らず、空は青く、木漏れ日がきらきらと輝き、真空の時空でしばらくたおれていました。

ふっと、ポケットの地図を思い出し、今いるところを救急車に説明しなければと思ったときに、御嶽山に行きなさいと声がしたのでした。

ふらふらとたちあがり、坂道を下りて、反対方面の御嶽山の坂を徒歩でのぼりはじめました。700mの坂道だったのですが・・・歩くたびに活力が満ちてくるというか、さっきまでの私はなんだったのかと自分で自分にきょとんとしながら歩いていたら・・・沖ノ島が!右手の海上に、おおきく美しく望めました。はるか57キロ先に浮かぶ沖ノ島。道も、神社も、展望台でも一人きりでした。大空を、飛行機雲がびうびうと龍のようにあそんでいました。

帰りの船で、2Fのデッキにすわっていたら、空から視線が・・・見てみたら、太陽の下に大きな龍頭雲。尾っぽまであってぐるりと、写真にとったら遠くに見えますが、頭上でした。目があって、角もあって、じっと見降ろされていました。(プロフィールの写真をご覧ください)

声も龍頭も気のせいだと言われるかもしれませんが、私の中で、何かが流れ去り、何かが生まれた感覚があって、ほんとうに不思議に思います。


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