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父と娘の珍介護道中(日記的エッセイ2010〜2022) 時々、母のこと、故郷のこと、自分のこと EP20

エピソード20
「プレゼント、どこにいっちゃったんだろう?」

2016-05-13

先日、私が小学校いっぱいくらいまでお隣さんだった家のご夫妻が、
ケアハウスに父を見舞いに来てくれた。
父とおじさんは、小学校の頃からの友達で、ふたりでよく戸板(今でいうサーフィン)に乗って大磯の海で遊んでいたそうな。
嵐で遥か沖まで流されて、命からがら泳いで灯台まで帰ってきた話は、私もよく耳にしてた。
ご夫妻が会いにきてくれたのを父がとても喜んでいたので、今日は、そのお礼に、今度は私がおじさん、おばさん宅を訪ねた。

まず、おじさんが開口一番「美保ちゃん、ずいぶん大きくなったねぇ」と(笑)。おじさんのなかには、私の子供の頃の記憶しかないから、
大人になった云々より、単純に背丈に驚いたみたい。
おばさんは83歳、おじさんは87歳。
こうやってゆっくり会うのは40年ぶりくらいだから、当たり前だよね。

このおじさんがスゴくて、子供の頃得意だった水泳を今でも本格的に続けていて、なんとマスターズに10年連続出場。何度も優勝している。
絵も上手な趣味人。
最近描いたという「絆 一生挑戦」という力強い色紙をくださった。

おばさんも全然83歳に見えないほどお肌ツヤツヤ。
昔はお互いの家をよく行き来したね、みんなでどこどこに行ったね、と、
懐かしい話に花が咲いた。
ご高齢のご夫妻が、ふたりそろってこんなにお元気なのは本当にレア。
素晴らしい!

遅れてしまった母の日参りもして、お墓の雑草取りもしたから心はスッキリ。
昔懐かしいお隣さんを娘が訪ねる様子を、
きっと母も笑顔で見ていてくれただろう。

2016-06-18

昨日は、午前中東名ぶっ飛ばしーので、父の日のプレゼントを渡しに。
今回もポロシャツとチョッキ(!)。さっそくお着替えをしてパチリ。
昭和一桁の人を笑わすのは一苦労だ(笑)。
お昼、スタッフの方と食堂に行くのを見届けて急いで帰宅し、「お~、ヤバい!」と、〆切間近の原稿と格闘し始めた。

すると、夕方父から電話。
「美保ちゃんが持ってきてくれたプレゼント、どこいっちゃったんだろう? 今、探してるけどないんだ」という。え~~~~~っ!! 
「何言ってるの、お父さん! 今朝一緒に着替えたでしょ。今着てるのがそうだよ」、「そうだったっけ? わからない」、「今、何色のチョッキ着てる?」、「赤」、「え~~~~っ!!」。

ああ、ついにキタかと思い、めっちゃ動揺。
その後やりとりしたが、話がかみ合わず、そのうち父は「ワルいですね。いいですよ。探してみる」と、プチっと電話を切った。
ま、だいたいいつもこっちの用が終わらないうちに切られちゃうんだけど(笑)。

もうこっちは、わけわかんないから、ついに判断能力がなくなっちゃったか、と混乱して、原稿の仕上げに書いてたリードが全然書けなくなった。
それでもなんとか〆切に間に合わせると、そこに再び父から電話。
「チョッキ着てないと思って、また着ちゃったんだ」という。
??? だったけど、こういうこと。

いつも父が着ているチョッキは赤か紺で、今回プレゼントしたのは薄いウグイス色。だから、「チョッキを着忘れてる」と思って、
その上からまた赤いチョッキを着ちゃって、プレゼントのチョッキがどこにいったかわからなくなったということらしい。
「脱いだらあった」だって(笑)。
ああ、最終的に爆笑で終われたからよかったよ~。
あれ、よかったのか?! ま、いいね。

2016-07-09

けっこうな雨の中、期日前投票に父を連れて行った。
歩行が困難になってから、父にとって選挙など埒外のことだったから、たぶん7、8年ぶりじゃないかな。
大磯町役場は久しぶりだったけど、
せっかちと慎重がないまぜになったちょっと気難しい父を、雨の中安全に車椅子に乗せるのに集中してたから、全然景色に意識がいかなかった(笑)。
ちょっとくらい濡れてもいいと言う父に甘えて車椅子を押してたら、
入り口まで傘を差しかけてくださった方がいてありがたかった。

車椅子での投票には、二人の立会人がつく。
父はこの人と思う候補者の名前の書き方を事前に練習していたようだが、
選挙は久しぶりなうえ、二人に見張られてたから緊張ハンパない(笑)。
さらに右手のキキもちょっと落ちているので、やっとのことで書いたのは力の入ってない超可愛いへにゃへにゃ文字。
でも、なんとか読める範囲でした。これならアウトじゃないなと。
父が記入した投票用紙を立会人が受け取り、投票箱へ入れるところをしかと父に見届けてもらい、無事父の参院選2016は終わったのでした。

「国民の権利を行使したね」と言うと、「そうだなぁ。しばらくそんな気持ちにもなってなかったからね」と、父は一仕事終えた誇らしげな顔。
社会にかかわっているという意識は大事ですね。
朝も早よから大変だったけど、私もとても清々しい気分になりました。

2016-08-10

今年いちばん忙しかったかも、の、怒涛の1ヶ月半にひとまずケリがつき、
今日は朝から東名ぶっ飛ばしーので(渋滞でぶっ飛ばせなかったけど)、父を連れて、大磯の善福寺へお墓参り。
あぢぐであぢぐでまいりました。

父の体調が心配だったけど、本人が言い出しっぺなだけあって、
すごく頑張ってヨチヨチよく歩いてくれました。
「お母さん喜んでるね」と言ったら、「うん。喜んでるよー」と弾んだ声。
私もスッキリしました~。
父と一緒だと余裕まったくないので、写真は今年5月の善福寺。
今日もほとんど同じ風景でした(笑)。

隣のおじさんが描いた色紙、父の日のプレゼント、大磯善福寺


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