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流山市の教育課題、小1プロブレムに対峙していくために ~その③:共主体の保育を実践している保育現場から~

流山市の教育課題である小1プロブレムに対する対応策として、幼・保・小の円滑な連携に向けての課題整理のため、会派メンバーで視察を行いました。流山市にある保育園や幼稚園に足を運び、ヒアリングを行いながら私たち議員も考えをまとめております。

視察先は「子どもが主体の共主体の保育(こちら)」を実践している、流山セントラルパーク駅ちかくのKanade 流山セントラルパーク保育園「こちら」です。定員は80名で、0歳:9名/1歳:14名/2歳:14名/3歳:14名/4歳:14名/5歳:各15名の構成で、愛着形成が大切な0~2歳は個室で、3~5歳は合同保育となっています。流山市の保育・幼稚園施設の定員数の分布から考えると、120人定員の施設までで約8割であることから、保育園の大体の規模感を知ることが出来る園です。

幼稚園教員に従事されたこともある園長先生が、保育園では11時間子どもを預かる環境の保育園における、生活としての環境づくりにも苦心され、素晴らしい実践をされていました。

〇子どもが主役の保育環境とは?

子どもの成長の土台となる根っこを育てるために、子どもの意見=やりたいを極力尊重する環境づくりをされていました。

年齢に応じた環境づくり

・0歳児クラス:定員9名中7名(4月時点)。安定した生活が過ごせるように、区画で囲って保育を実践している
・ハーブソルトなどを使ったり、五感を大切にしている。
・外で遊びに行く子も、読み聞かせやっている子も、工作をする子もいる。自分と対峙し、やりたいことを大人に言う。一人ひとり、集中している状態。
・給食を食べ時も、食事の時間(そろそろじかんだ)と気づき、自分で考え
て、自分のタイミングで食べるようにしている。

こどもの意見に呼応する大切さ

こうしきゃいけない圧力環境では育たない
コミュニケーション取りましょうと仕向けると「こうしなきゃいけない」が強くなり、子どもにとって無理な環境に。「こうしなきゃいけない」圧力環境ではなく、その子に見合ったコミュニケーションに合わせてあげる必要がある。

無理な約束を極力しない。
ここ(園内)は大人の声がしませんでした。は大人の声がほとんどしませんでした。子ども同士で対話をして学びあいの環境が作られていると感じました。

意見を尊重されることで、自分らしさを知る

6歳までに飛躍的に伸びる非認知能力や自己肯定感はどのように育まれるのか
自分らしさを知ることで育まれるのが非認知能力や自己肯定感。意見を尊重されることで、自分が何に心地よいか、嫌なのかをしることができる。「自分がこういう人間なんだな」と知ることで育まれていく。根を張っていれば、折れても大丈夫。植物と一緒で、根が枯れていなければ再生する。一方で、根がはれていないことに気づけないのが今。それには乳幼児期に「あなたはこうしたいんだね、いいよ」と肯定される環境づくりが必要。この力は6歳までに飛躍的に伸びるといわれている。

・集団の中でバランスが取れなくなる
自分が満たされなければ、人を否定することが多くなる。集団の中で難しくなったり、どうしたらよいか分からなくなる。自分が何が心地よいのか分かれば集団の中でもバランスをとっていける幅が広くなる。

〇質疑応答

以下のような意見交換をさせていただきました。どの質疑に対する回答も素晴らしく、頭が下がる思いでした。

■Q1.三つ子の魂100までと言いますが、今ではどのような課題があるのか。核家族化で多くの大人の目が触れる環境が作りにくいのでは?

昔は大家族だった。親に怒れれても、大丈夫だよねと言ってくれるおじいちゃん、おばあちゃんがいた。今は助けてくれる人がいない。だから今までと同じ教育環境では難しさがある。変化を考慮すると、自然とそうなる。

■Q.2 3歳4歳5歳クラスを合同保育している理由は?

当園の定員規模の場合、子どもたちは全員のことを知っている。生活としての場を意識する必要がある、教育の場だけ考えればいいのではない。横割り(学年ごとの環境)の今までの形ではなく、ねらいに沿った新しい保育の形(学級編制なども考慮した)を模索する必要がある。

■Q.3 おもちゃやキャラクターものは極力置いていない、その理由は?

 今の社会環境は、スーパーで買ってくれば出来合いのものが販売されている。商品の成り立ちを体験してほしいので、0からつくることを大事にしている。遊びが規定・限定されるような、玩具は極力置かないようにしている。

■Q.4 生活の中の日本古来からある習慣を大切にしている、その理由は?

 季節のものを作る。毎年梅の季節になると梅ジュースを作る。だからこの時期になると「梅ジュース」つくらないの?と子ども達から言われる。主体性が育まれることは、生活の中で実践したい。先生たちと一緒に。
 今の社会は、暑くなってきても、エアコンがあって快適。季節を感じることが難しくなってきている。大人も子どもも、もう一度季節を感じる感覚を身につけたい。季節の中で育みたい。

■Q.5 立ち上げてから7何年目と聞いた。立ち上げ当初から、今はどのように変わってきたのか。

7年目になった。この形に到達するまで、保護者の理解を徐々にいただいてきたが、今では、この保育園に是非入れたいという方が増えている。伝えつづけることが重要。
「設定保育=座らせて〇〇をやらせる」に満足していても、子どもに根が張ってないと、いざというときに立ち上がれない。保護者の方と対話の会などをもうけながら、繰り返し伝えた。日々、エネルギーを伝えることが重要。

■Q.7 5歳の小学校の接続期にどのような教育をされているのか。小学校への円滑な接続にむけての課題について教えてほしい。

 この保育をしていると、「自由にやってるな」とだけ思われるのですが、5歳児になると、遊びの発達でのステージもあるが、園として集団で動く時間も増えていく。前ヶ崎の田んぼづくりなど、生活の中で機会を増やすようにしている。5歳児の子だけで対話の機会を増やすなどもしている。
 こどもの育ちの中で大切にしないといけない、何を優先するのかを明確にしなければならない。「何かができる、できない」だけではなく、根っこを張らせてあげる重要性をオトナが認識してからこそだと思っている。とはいえ、今の時代どうしても忙しさや就学への意識に影響され、そこを飛ばしがちになっているとは思う。
 接続という文脈で、1年になったらカリキュラム学習に、がらっとかわる環境が良いのか?は、見つめ直したい。子どもたちは、育つ力はあるが、短時間でデジタルに切り替えるほどそんなに器用ではない。私(園長先生)は幼稚園で働いていた時に小学校に向けてという教育をしてきた。お勉強と言われることも沢山教えてきた。上澄みは育っているよう見えるが、根っこが育っていたかというと考え直してしまうときもある。

よって、今は軸を育てる時間バランスよくとっていきたい。それは年長と一年生の関係者みんなで考える必要がある。(本来は、こども達自身も権利として話し合いに参加する時代でもある)

■Q.8  子どもの自己肯定感、幸福感は大切。しかし親御さんの幸福感も大切だと思うがどうか。

同感。保育者として、「親御さんが幸せなら、子どもたちは自然と育ちます」と発信している。シンプルな原則だと思っている。親御さんがニコニコしてることが重要。それが難しい時代だからこそ、子どもの非認知能力ばかりの議論ではなく、保護者支援を園運営のなかで大事にしていきたい。

■Q.9 保護者支援で意識されていることは?

保育園に預けようか、幼稚園に預けて子どもに向き合った方がよいのかという葛藤の中で、保育園を選び、預けてくれる。お迎えの時や対話会の中で、決まりについても対話を通じて決めている。「無理です、〇〇だからだめです」では、お互い頑なになる。保育園で必要なルールを理解いただくのに。丁寧に物事をつたえる、その行為は子どもにも返ってくるし、子どもにも親を通じて伝わる。

■Q.10 支援が必要な、グレーな子どもが増えているというが、受け入れをどのようにしているのか。課題は何か。

受け入れ準備の時(環境整備面など)役所の保育課を通じて、相談させていただくこともあります。まず、保育園は応諾義務があるので「受け入れしない」ことはできない前提です。
 保育園は0~1歳から入園することが多いので、入園時は分からないことがある。そういったところは、日常の育ちに関わる中で、支援の必要性に必要に気づいていく。保護者の方には、支援が必要なことを日常の姿などを共有しながら、保護者の方の困り感なども共有いただきながら理解していただけるよう丁寧に促していく。
理解いただけるまでの間は、お子さんに対し、一対一で保育者が見ている場合もあります。障害認定まで行かなくとも、そこに保育士が一人つくことになる。一般論として、その影響で、集団保育の現場で保育者の不足感を感じる場合も、しばしばあると思います。

■Q. 11 地域との関わりをどのように実践しているのか。

日常の生活の中で、関わらせていただいている。もとからいらした地元の方々などと仲良く話をさせていただいている。その姿を子どもが見ていることが、重要。(イベント的な)形づくった関わりじゃなくて、日常の中で関わる。そこから関係性だったり、そこから始まる。先日は、メダカもらってきたりしている。行事だけでなく日常を意識している。

■Q.12 大きい声を出す子がいたら、一人のマンツーマンでの対応でも足りない時もあった。そういった個別の時の対応は今後の課題と思っている。障害をお持ちのお子さんとご家庭は、園として、先生を手厚く見なければならない。もっと行政がサポートできることはないのか?

 近隣の.野田と流山の違い。法人で野田市でも園を運営している。野田市は看護師設置について補助が出る。何かあった時に常勤の看護師がいると、病院との連携やけがの対応ができる。何かトラブルがあった場合は、保育士がいない状態で運営することになる。こういった、体制の安定化は、個別対応が必要なお子さんに回せる人的リソースにつながっていくのではと思っている。

■Q.13 保護者のお子さんに対する障害受容に対する伴走の課題について教えてください。

 当然、認知をしていただくのに時間がかかる、課題感があるのは全国どこでも一緒。保健センターで認知していただいたところで、保健センターの情報が保育園に共有されるかというと、情報が来ない。

保育園は原則11時間保育、保護者の方より平日子ども達を長時間見ている。保育者もsosをだせる行政窓口があるのか、その子どもを支援するために、スムーズな連携できるのかということは、その子の育ちにとってとても重要。

乗り越えていくために何度も面談をし、次のステップにいく。役所に相談してみてねという一言だとしても、1回の面談に1,2時間かかる。納得される方いらっしゃいますが、ショックを受けて「子どものところに行けない」と泣く方もいる。杓子定規の物差しがあるわけではないし、保育者が障害児の検査ができる専門性があるというと分野は違うため難しく、保育園だけで粘り強く対応することができない。保育園で抱えるのではなく、連携があると望ましいのでは?と思っている。

■Q.14 具体的なアイディアもあれば教えてほしい。

一人のお子さんを情報共有アプリで実現する。などもあるかもしれない。お子さんをお預かりしていても、保健センターで何言われたが分からない。保育園を転園してきても、前の園でどのように関わっていたのかの詳細は分からない。新たに関係づくりをする必要がある。保育園は属人的なスキルで対応をしている。アプリで共有できたら、その子の学びのストーリをより豊かに見えてくるかもしれない。

子どもの教育・保育を一つのスケールで見ていく、グランドデザインのようなものが無いので、現場が大変辛くなる。予防接種もアプリを通じて予約・申し込みできたりするとよい。

支援センターと連携して保育をしているお子さんも多い。保育園巡回指導を利用したいが、頼んでもすぐには来れず、順番待ちの状態にある。その子も苦しいし、現場も苦しい、親も苦しい、というのが現場では発生している。

子ども達が、今困っていることを少しでも改善していける状態、階段登れる環境を作る。しかし、保育園との信頼関係が壊れるとそこを退園してしまう。入園して信頼関係が積みあがる前に離れるを繰り返しているケースもあると思う。子どもと保育園の信頼関係、人間同士の信頼関係の積み上げができない、つまり、子どもも育たない。は回避したい。

■Q.15 公が担うべき機能があるとしたら「保育園 v.s 保護者」という構造にならないための機能

流山市は、加配が上限2人分しか出ない。野田市は市の巡回の上認定もらえれば上限がない。市の職員である心理士が直接見に来てくれ、状況を見立ててくれ、必要であれば2人以上の加配がでる。

心理士は、市で雇用するとなると最低400万円くらいかかるので、大きな額。しかし、野田市も最初は「障害手帳でないとダメ」と言っていたのですが、「現場を見にきていただきたい」と幼稚園協会から要望活動をし、現場の負担感を理解し、補助を実現しました。

保育者の処遇改善も重要だが、保護者の間にはいっていただくことで子どもたちへの支援が円滑になる。補助金の制度を受けるために、専門性を持った市の心理士に見に来てもらう話してもらうことは、保護者の方も納得感がある。

「保育園 v.s 保護者」という構造になるのはもったいない。

■Q.16 豊かな保育を実現しようとしている保育園はどのくらいの割合で存在するのか。課題は何か。

全国の調査結果はベネッセの研究結果「こちら」がでているので、そこを参照していただければと思うが、かなり低い数値になっている。
一方で、保育士になるために若い子が大学で学ぶことは、共主体の考えが主流。令和の時代の豊かな保育が実現したいのに、できないからやめる。処遇面だけではなく、理想の保育が出来ないから保育士不足になる。

■Q. 17 運動会のイベントのかわりに、親子で楽しむ会を設けている理由は何か?

日常を大切にしているため。その代わりに親子で楽しむ会という、日常の遊びやふれあい遊びを親子でしたり、子どもたちが考えた競技というか、遊びを親子で行ったりしています。
運動会の練習のためにやりたいことができなくなることや、そもそも、子どもたちは保護者に何かをお見せするための存在ではないので、行事の在り方はそういった観点で考えられています。

■Q.20 室内に女の子が多いように思うが?


 
今日は、男の子は外遊びにいっている。外が好きな子は遊びを選択して外にいることが多いい。遊びを選択できるようにしている。その子と会話をして向き合うこと。保育者の配置や環境などもあるが、保育者がすぐに「今日は無理!」とシャッター閉めない、最善の環境を努力することが重要と思っている。

■Q.21 当日遊びで行っていた「しょうぶ湯」などの日本文化を取り入れることはやり続けるのか。


日本の伝統は継続し、絶対に実践したい。その年だけやっても意味がない。可能な限り、必要なものは毎年必ずやるようにしないと、心に積み上がっていかない。

■Q.22 お子さんたちにしょうぶ湯の歴史的なところ、香りだけでなく、健康にいいかなど伝えていますか?

風邪ひかないよ、冬乗り切れるよというのは伝えている。しょうぶ湯、ゆず湯は今の若い人は日常に無い。私たちがやらなければならない。若い保育者も経験したことがない人が多い。

(歴史も重要だが)年齢により理解できるかに差があり、年齢を問わず、まずは、何より心地よいことを体験してもらうこと。今日も、子どもたちは会話をしながら20分くらい足を漬けている。普通であれば3歳児に浸からせたら、水掛け合って終わるのでは?と大人は思うが、(環境構成などによって)そうはならない。心地よいことは、子どもたちの「やりたい」につながりやすい。大人が温泉に入って心地よいのと一緒。子ども版サウナコミュニティができあがっているよう(笑)今のご家庭では、余裕がなくてできない。仕事帰りで、それどころじゃない。

■Q.23 開園して7年とあるが、卒園児も遊びに来てくれる子どもはいますか?

保護者が小学校での生活を教えてくれる方が多い。認知能力の面では子どもの個性によって、いろいろあるが、「何とか係」をやる子が多いと聞いている。うちの園の子は、自己肯定感が高めであると思っている。「自分の意見言っちゃダメなの?」というスタンスなので、非認知能力(ここでは自己表現や自分の意志の表出)を発揮する場で活躍している。主体的で対話的な学習に必要な力だと思っている。

〇子ども主体の保育の実践状況

以下に、子ども主体の保育の実践状況についての調査資料がありました。

2017年3月に保育所保育指針,幼稚園教育要領,幼保連携型認定こども園教育・保育要領が同時改定され、2018年か ら本格実施、それから5年が経過しているものの「子ども主体」の取り組みが進んでいるのは2~3割とのこと。

保育園・こども園・幼稚園向け 「これからの保育を考えるための園基礎調査」 結果報告書
こちら

https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000001160.000000120.html

参考図書


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