私は「100読練習法」で中国語学習の踊り場から抜け出した / #おすすめのモノ・コト

語学学習って本当に長い道のりで、途中でくじけそうになりますよね。
私も中国語を長く勉強してきましたが、「だいたいわかるけど完璧じゃない、でもどう勉強したらいいかわからない」という時期がありました。しかも結構長い間。
いわゆる外国語学習の「階段の『踊り場』」の停滞状態から抜けだせずにいました。
これかな、あれかな、といろいろ試してみるのですが、進歩しているのかどうかもわからない。とんでもない沼に足を踏み入れてしまったと感じたものです。そんな時に出会ったのがこちらです。

この本には細かい文法の説明なんてありません。
ひたすら中国語の文章を声に出し続けます。は?それだけ?と思うかもしれません。しかし決して侮ってはいけません。地味なんですが、この本には実は画期的な方法が紹介されています。
それが効くのです。壁に小さいジャブを打ち続けていたら、いつの間にか穴が空いていて壁の向こうの光がうっすら見えていたという感じ。ある日ふと「あれ、そういえば踊り場を抜け出したかも」と気づきます。

もう少し詳しく説明します。
この本は、1つの中国語のエッセイにつき、ピンインだけ、漢字だけ、日本語訳だけのページに分かれています。よくある漢字の上にピンインが振ってあるものではありません。
対象者のレベルは、文法は一通りわかっている中級者以上がよいと思います。
手順は、日本語を読んで意味を把握した後、ピンインを見て朗読→シャドーイングを1セットとして25セット、漢字文を見て朗読→シャドーイングを1セットとして25セット。ひたすら声に出し続けます。
ピンイン25セット+漢字文25セットで、文章を100回声に出して読んだことになります。

何度も何度も何度も何度も、何度も読みます。100回も読むので、全然ページが前に進みません。くじけそうになります。何てことを始めてしまったのだろうと後悔の念すら浮かびます。それでも続けます。ところがあるとき、「あれ、中国を聞くのが、読むのが、話すのが、楽になっている!」と気づきます。声の出し方が変わり、口が動きやすくなり、なんとなく中国語の流れの感覚がつかめた感じがしてきます。

著者によると、「100読練習法」はひたすら繰り返すことで脳に、そして無意識の領域に「音声と意味のペア」を刻みつけていくのだそうです。50セット目には速度も発音もそれまでに比べかなりネイティブに近づくことができます。

私はもともと語学学習において発音が気になって仕方ない性分で、シャドーイングもちょくちょくしていました。それでもここまでピンインを意識した練習はできていませんでした。
この「100読練習法」により、曖昧だった単語も一つ一つ正しいピンインを体に刻み込むことができました。私は中国語にのめり込んだきっかけが「きれいな音」と感じたことだったので、ネイティブの発音にほんのちょっとでも近づけることに小さな喜びを感じていました。
でも、発音よりも大きな変化は、「よそよそしい他人」だった中国語が、「身近な存在」に変わったことかもしれません。

1課につき2分ほどの文章なのですが、漢字で書かれた文章を見る前にピンインだけを見て声を出して読むのは結構なストレスです。ピンインからは何を書いているかよくわからないときなど、宇宙人を相手にしているようでクラっとしてきます。
それでも「はい、○○回目終了!」と回数をチェックしながら、とにかく数をこなしていきます。100回も声に出せば、自然と仲良くなります。
それまで漢字に頼って内容を理解していたのが、ピンインや音から内容を推測する力もつきました。中国語の流れも体に染み込みわかりやすくなっていたのです。
停滞状態にいるときは、こういった今までとちょっと違う方向からのアプローチもいいのではないかと思います。我ながらストイックなことをしたものです。

そんな果てしない旅に出てしまったと思っていた私も、気付けば翻訳の仕事をしています。
前ばっかり見て「まだまだ全然ダメだ」と思っていたのに、振り返って眺めてみるとちゃんと階段を上っていました。まあ、また次の踊り場が待ち受けているんですけどね。もう受け入れてます。

中国語学習の踊り場で迷っている人がいたら、一度試してみてはいかがでしょうか。ただし、かなりストイックな勉強法なのでご注意くださいね。


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