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わたしは「こう読んだ!」 Vol.8 『他者と「共にある」とはどういうことか 実感としての「つながり』 藤井真樹

2021 年の5月にFBにあげた記事をそのまま載せます。ちなみにその後、2023年の12月に、著者である藤井真樹先生にお会いすることができて、感謝に気持ちを伝えることができました。博士論文を書く上で、とても参考になったからです。丁寧な先行研究のレビュー。そして、対象者やその場に関与しながらの丁寧な観察とその記録。現象学への理解。深い考察。どれ一つとっても、素晴らしくて、何度も何度も、読ませていただきました。

以下、FBに書いた記事です。

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この本は、博士論文を加筆修正し、一般向けの図書として出版されたものです。そして推薦者は、鯨岡峻先生。著者である藤井真樹さんの、一時期の指導教官だったそうです。
 博論を書く上で参考になるかな・・・と軽い気持ちで読み始めたのが、確か昨年の秋。でも読み始めてすぐに、一旦読むのをやめたのです。すごく面白かったので、ちゃんと色々わかって読みたいと。それで、この本が依拠する考え方「ノエマーノエシス円環構造」を知るために、木村敏の本を読むことになり、現象学の本を読み、やっと戻ってきて読み終えることができました。
 「つながる」とは、「生命の海」に浮かぶ船の上で個々の主体が自由なノエシス的行為を営みながらも、両者が同乗する船には、一つの流れとしてのメタノエシス的作用が働いているという事態である、と結論づけています。そして、「つながる」ためには、かかわりの場に存在する質感的世界を感受すること、それには、そうした目に見えない質感を感受する感受性を高めることと、他者をもう一人のノエシス的行為者として受け止めることが重要であると指摘しています。
 エピソード記述をもとにこうした結論にたどり着くのですが、論の立て方、先行研究の引用の仕方など、とってもわかりやすくて的確。それに何より、研究関心や方法が私と近いので、理論的なところの書き方も、とても参考になりました。
 半分は純粋な読者として、半分は博論を書くための参考にしたいという野心的な読者として、2倍楽しめたこの本。本当に出会えてよかった!と思いました。

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