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週末短歌 Nr.6|「月歩」第1号

春原シオンさんのネプリを入手することに成功してからというもの、ネプリがほしい場合は制作者に直接交渉する……という方法に、すっかり味をしめてしまった。おかげで手元には、日本から取り寄せたネプリが少しずつ集まってきている。今回は、結成されたばかりの「月歩」のネプリ第1号について書いてみたい。

11人からなる月歩には、わたしが所属するかばんの会員の方をはじめ、Twitterのフォロワーさんやタイムラインでお見かけする人が多数所属している。オリジナルロゴがあり、ネプリにはきちんと表紙と裏表紙もついていて、制作者のこだわりを感じる。

個人的に、それぞれのプロフィールが詳しく書かれていたのがうれしかった。前回も書いたが、わたしは詠み手の人となりや日常生活を想像するのが好きだ。プロフィールを読むことで、こういう人がこういう歌を詠むのかぁと、歌をもっと深く知れるような気がする。

ひとり7首ずつ、ページをめくるたびに違う風景や色が見えてきて、ネプリとは思えない充実感がある(まだそんなにたくさんネプリを読んだわけではないけれど)。どの方の歌もいいのだけれど、あえて気になった3首を取り上げてみたい。※掲載順

シャではなくシアとあなたが言うたびにひどく熟したペルシアがある|鈴木智子「ペルシア」

▶ ギリシアからギリシャへ、ベトナムからヴェトナムへ、時代とともに表記は変わっていく。ペルシャもその一つなのだが、「ペルシア」はその歴史や地理のせいか、ギリシアやベトナムにはない、独特の重みがある。「ひどく熟した」という言葉に、そのことが集約されている。また「ペルシア」と大事に発音するひとからは、ペルシアへの敬意も感じられる。

飾らない言葉で終える明け方のチャイナタウンの素顔みたいに|森山緋紗「チャイナタウン」

▶ ごちゃごちゃして騒がしいチャイナタウンも、明け方にはネオンも消えて、すっぴんのような表情なのだろう。飾らない言葉で何を終えたのか、いろいろな可能性があるが、お互いを許し合った男女の姿が浮かんだ。それからわたしは、この歌を読んで、猛烈にくるりの「琥珀色の街、上海蟹の朝」を思い出している。

大変な思ひ違ひをしてゐたとだれかが言って、夏の到来|近藤あなた「シン・ゴジラ」

▶ この唐突感はなんだろう。誰がどんな大変な思い違いをしていたのかわからない、という不安もある。そして一瞬思考が停止して(たぶん「、」の部分)、夏が突然に訪れる。入道雲が浮かぶ青空がどーんと見えて、後ろに倒れそうになった。いきなりこんな歌を頭に持ってくるなんてずるいなぁ、という嫉妬心も感じる。

まだまだ拙い評(あるいは感想?)ではあるが、こうして少しずつ取り上げられたらいいなと思う。そしてわたしもいつかネプリを出したいな……なんて、いつになることやら。今週末で短歌をはじめてちょうど半年が経つ。

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