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小説『サンドの女 三人屋』
美人三姉妹が営む「三人屋」。朝は三女がモーニングを、昼は次女が玉子サンドを、夜は長女がスナックを切り盛りするこのお店は、商店街のみんなが集う場所。三姉妹を取り巻く男性6人それぞれの視点から、密で愉快な商店街の人々が立体的に浮かび上がる連続短編小説。
どうやら一作目『三人屋』(2015)があり、その続編らしい。日常的な話題かつ一人ずつエピソードが展開されていくので、続編をいきなり読んでも十分ついていける。
恋の駆け引きをしてみたり、失言して痛い目みたり、「ラプンツェル商店街」というラブリーなネーミングの商店街に住む人々は、みな人間臭いゆえに愛おしい。憧れちゃうほどかっこいい、というような人物がまるでおらず、内が赤裸々にされている。そこが等身大であり滑稽で、面白い。この6人の男性はそれぞれ誰かしら想い人がいて、主にその恋愛模様とそれに付随する友情が描かれているのだけど、この商店街に住む女はこの三姉妹しかいないのか?というくらい、三姉妹の話題で持ちきりだ。なかでも長女・夜月は恋多き女。自由奔放、姉御肌、たまに出る口の悪ささえも魅力的に思えてくるような人。三人屋とはいえ渦中の人物が夜月であるのも納得だ。ラプンツェル商店街は都内にある設定。商店街は非常にクローズドな人間関係があるようだが、少し移動すれば都心に出ることができる。この度々出てくる外部の風によって、この物語が完全に閉塞された息苦しさに陥ることを防いでいる。
読み進めていくうちにいくつもの関係が絡みあってることが分かり、そうして濃くなっていく輪郭によって、読み終えるころにはすっかり読者も商店街の一員になっていることだろう。火遊びはほどほどに……。
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(※これはローストビーフサンド)
※この本は👇の人におすすめしてもらったもの。
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