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「どうして?」の答えは理屈じゃない

ヨルダンを旅している時、ことあるごとに現地の人から「どうしてわざわざヨルダンに来たの?」と聞かれていた。その質問の背景には、ほかに素敵な国があるにも関わらず、"何もない”ヨルダンにわざわざ来るのはどうしてだろうという疑問が潜んでいる。

私が訪れた年は、シリアでテロがあった年だった。周りからは「今じゃなくても良いんじゃない?」と言われ、当時付き合っていた彼とも大ゲンカして、それでも行くんだ!と強引に旅立った。もちろん怖くなかったわけでは無い。行っても問題ないかは大使館に電話して聞いてみたし、現地に住む日本人のブログを毎日読んでいた。大使館からも、現地からも危ない様子を聞かなかったので、意を決して訪れてみたのだった。

ヨルダンに行きたかった一番の理由は、砂漠でラクダを見たかったから。ほかの人の勧めもあって「ラクダを見るならヨルダンへ」と思っていたのだけれど、それだけ聞けばやっぱり現地の人は「どうしてわざわざヨルダンなんだろう」と思うのかもしれない。

星が落ちてきそうなほど瞬くワディラム砂漠や、迷路のようなペトラ遺跡、ロマンチックな光を灯し集会が行われるコロシアムに、ぷかぷかと身体が浮いてしまう死海。そこで感じた心の揺れや、言葉を交わした人々の笑顔。ヨルダンは「どうして?」なんて思う必要もないくらい、魅力いっぱいの場所なのに。

「どうして?」なんて愚問、その人にとって魅力いっぱいの場所だから来る。その土地に住んでいる人から見ると当たり前で、特に魅力のあるものではないかもしれないけれど、それを「素敵」と思う人がいる。それによって事実としてそこは、「魅力的な場所」になる。


だから、「ほかに良い人いっぱいいるのに、どうして私なの?」なんて恋人に聞く人がいたら言ってあげたい。それはあなたが魅力的だから。理屈ではなく、そうなのだ。



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