0時を過ぎた個別LINE
女子が集まると8割は恋愛の話になる。共感が好きな私たちは、うんうん、と頷き、「そうだよね」を言い合い、特に具体的な方針や解決策が見えないまま、なんとなく話しは別の人に移る。それで、いい。それが、いいのだろう。
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Aちゃんはいつも、ちょっと不思議な好かれ方をする。誰でも受け入れるようなやわらかい雰囲気と、おだやかにほほ笑むその表情で、「こんな僕でも大丈夫」と自信をもった厄介者たちの的になることが多い。
最近また、彼女は困っているようだった。数か月前から、花金が終わる0時をまわった頃に連絡が来るらしい。内容はいろいろ。今飲める? から始まり、今度のもう、可愛いね、何してるの……? 朝起きて律儀に返事をしていたけれど、それに対する返信はひどいもので、Aちゃんのことが好きなのか、それともツイッターだと思ってるのか、ちょっと見分けがつかない。彼に合わせたトーンで返すと怒られてしまうため、彼から連絡がくるだけで、どっと疲れるようになってしまったそうだ。
前にも彼女には似たようなことがあった。Aちゃんを狙う別の男が、これも決まって金曜深夜にAちゃんへ電話をかけ、寝ぼけながら電話に出た彼女へ向かって「俺が家に着くまで切らないで!」とか、「俺の好きなところ10個言って!」とか、酔っぱらった勢いでせがんできたらしい。
付き合っているわけでも、Aちゃんが好きだと言ったわけでもないのに、そんな風に連絡する人がいるなんて。本当に人間はさまざまで、多様な生き物だ。
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最悪だよね、と笑いながら話すAちゃんに同調して、「ひどい男だね」と返した。そして話題は次の子に移り、Aちゃんの"最悪な男"は次の子が悩む不倫の話にとってかわられた。友達の数だけ恋愛は存在して、さまざまなサンプルが集まる。自分の身に降りかかってきた時も、友達の類似事例を引っ張り出し、傾向と対策も安易に作れるはずだ。
「迷惑だけど友達だから」と言って、なかなか拒めなかったAちゃんも、最終的には付き合いきれず、連絡を無視するようにしたらようやく収まったそうだ。そんな話を今度はLINEで報告を受けた。よかったね、もう連絡なんかしなくていいよ、と返事をして、楽天パンダがサングラスをかけ、両手をふって踊るスタンプを送った。その後の返事は見ていない。日中の疲れが出て寝てしまった。
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ガンガン響く目覚ましの音で目を開いた。少し居心地の悪い夢を見ていた気がするが、天井が目に入った瞬間忘れてしまった。のそのそとベッドから出て目覚ましを止め、またお気に入りの毛布にくるまる。携帯を見ると2通、LINEの通知が届いていた。
ひとつはAちゃんから。眠ってから15分後くらいの時間に、「Aちゃんがスタンプを送信しました」と出ている。そしてもうひとつは、Aちゃんの話を聞いた時、私の番で話しに出した男性からだ。夏に嫌な雰囲気になってから、連絡を取らなかった人。Aちゃんの話がよみがえる。少し気持ちが重くなる。
午前3時。メッセージの内容は、『飲もうよ』