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きっと特技を見つけてほしいんじゃなくて

「自分の得意分野がわからない」と、編集者の先輩にこぼしたことがあった。夜な夜な電話をさせてもらった時のことだ。できないことや苦手なことは次から次へと出てくるのに、「自分の特技は?」と自問すると決まってなにも言えなくなる。


悩みに悩んで1度、友達に「自分は他人にとってどんな存在になればいいのでしょうか」と聞いたことがある。その時の答えは簡単、「いるだけでいいよ」だった。「いるだけでいい」なんて今思えば最高の言葉で、どんな自分でも受け入れてくれる友達だったのに、当時はその答えにすごく不満を抱いていた。「何もできない」と思っているのに、「いるだけでいい」だと努力の仕方がわからないからだ。


「仕事の特技を悩んでるなら、仕事で関わっている人に聞くのが良いよ」。電話越しから先輩の声が聞こえた。先輩は、"自分の得意なことは周りに聞くのが一番"だという。実際、周りの人に「〇〇さんは社長が向いてるよね」と言われて会社を立ち上げている。先輩は続けて、こんなアドバイスをしてくれた。

「例えば社長とか、転職の面接で担当してくれた人とか。もりやさんの良いところを感じて採用を決定したのだから、直接聞いてみてもいいんじゃない?」

「私のどんなところを良いと思って、採用したんですか」

先輩のアドバイスから約2か月後。先輩のアドバイス通り、私は社長に直接聞いていた。それまでも何人か友達に聞いてはいたものの、「明るいところ」とか、「会話が楽しい」とか、「癒される」とか、それって多分相性の問題と言うか、そもそもそんなに明るくないしな……とか、色々思うところが多くやっぱりスッキリしなかったのだ。

そして聞いた社長の答え。それは「境界線が無いところ」だった。

あまり壁を作らない。自分と他人との境目が薄いような気がした。だから、どんな人と一緒になってもうまくやっていけると思った、と言う。

境界線の薄さは、HSPの特性なのだと最近ようやくわかった。それは世の中を生きづらくするものだとばかり思っていたけれど、そこを良しと思って採用を決めてくれたのかと思うと、自分の特性を誤解せず見つけてくれたことにちょっと嬉しくなった。今まで友達が言ってくれた数々の誉め言葉が受け入れられなかったのは、どこかで全然違うと思っている自分がいるから。けれど社長の場合は、自分のことだけどうまく言語化できなかったそれを、しっかり言葉にしてくれた、それがきっと良かったのかなと思う。

もやもやして言語化できないところの言語化。特技を回りに聞いてみると良いのは、そういった効果があるからなのだろう。


去年の毎日note


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