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人材紹介会社の価値を考える

お疲れ様です。
みほ(https://twitter.com/miho_career)です。

今月末で、前職・現職と合わせて約7年間続けてきた人材紹介会社から離れます。

このタイミングで、自分自身がCA/RAのプレイヤーとして、そしてプレイヤーの育成側として経験して感じた、人材紹介会社の存在意義と顧客から選ばれ続けるポイントについてまとめてみようと思います。

なぜ、この記事を書いてみようかと思ったかというと、世の中の人材紹介会社に対する印象と、自分自身がこれまでこだわってやってきたこととに乖離があると感じ、なんとも言えない、残念な気持ちになったから。

で、それは分かったけど、これは誰向けの記事なんですか?と言われれば、この記事を読んでメリットがあるのは、現在、CA/RAとして奮闘されているプレイヤーの方や、CA/RAの育成に行き詰まりを感じるマネージャーの方、などの人材紹介会社に在籍している人、が該当するかとは思います。

人事担当者の方なども、興味は持っていただけるかと思います。

あくまで個人の見解ですが、読んでいただいた方の何かの気づきになれば幸いです。

顧客から選ばれ続けるためには

顧客から選ばれ続ける、と書いてはいるものの、直接的な言葉で言えば、売上を伸ばすためのポイントです。(あえて”選ばれ続ける”と表現しているのは、最後のほうでちょこっと述べています。)

さて、本題。

売上を伸ばす時に重要になってくるのは、「在り方」と「スキル」です。

これは人材紹介会社に限った話ではなく、どんな商材であっても当てはまる話だと思っています。「スキル」というと、人材紹介会社においては、面談力や商談力、提案力、推薦文作成、スカウト文作成、クロージング力などが主でしょう。

そして、ここで私が言う「在り方」というのは、具体的に言うと、

人材紹介会社は何のために存在し、
どんな価値を提供するべきなのか? 

がきちんと腹落ちし、他人に説明できるレベルまで頭にセットされているかどうかということです。

人材紹介会社で、成果が伸び悩む人やチームというのは、この「在り方」の部分が弱いケースが多い印象です。私の成果が約2年間滞ったのもまさしくこの部分が原因であり、同じ部分で苦戦するメンバーもたくさん見てきました。

「在り方」は無意識のうちに言動として現れるため、誤った認識のままスキルを磨いてもうまくパフォーマンスしません。そのため、「スキル」は絶対的に必要なものの、それを使いこなすには土台の部分である「在り方」を整える必要があります。

本日は、その部分についてお話していきます。

人材紹介会社の役割は?

人材紹介会社は、法人に対して「人材」を「紹介」する役割です。しかし私は、人材を紹介するのことが「仕事」だと思ってはいけないと常々思っていました。人材紹介会社は、法人の採用課題の解決と個人のキャリアに関する課題の解決を請け負う仕事であるという意識がないと、本当の意味で双方に貢献することは難しいですよね、という考え方です。

そんなこと、言われなくても分かっていると思うかもしれないです。でも、それが分かっているのならば、「求人が大量に送られてきたけどどこを受けていいかわからない」「面談で条件を聞かれてうまく伝えられなかった」「キャリアコンサルティングサービスを受けたら転職エージェントとは違って親身に話を聞いてくれた」などというような声は聞こえてこないはずです。

私が「残念な気持ちになった」というのは、上記のような声が世の中に少なくないと感じたということです。

なかなか成果が出ないという人は、人材紹介会社の仕事が、「個人を法人に紹介する仕事」、とくにCA側については「転職しようとしている人に、希望する条件に合った求人を紹介する仕事」と思っている傾向が強く、結果として、求職者に対して上記の感情を抱かせ、マッチングに至らず終わっているのでは?と思うわけです。

なので、うまくマッチングが生み出せない、つまり成果が思うように出ていないという人は、まず、人材紹介会社の役割を「個人を法人に紹介する仕事」から「法人・個人の課題解決をする仕事」をいう意識に変えることが第一ステップとなります。

求職者に何を提供するか

では具体的に、個人側である求職者に何をしなければいけないのか。

人材紹介会社の顧客(ここでいう”顧客”はあくまで対価をいただくという意味)は法人側ですが、あえて先に求職者への価値提供について話そうと思います。

人材紹介会社の求職者にとっての役割としては、

①転職活動のサポート(書類添削、求人探索、日程調整など)
②意思決定のサポート

の大きく2つです。


①は当たり前にできているのですが、②ができるかどうかが重要です。

正直なところ①については、人を介さなくてもできてしまうような内容なので言ってしまえば「作業」に近いです。人材紹介会社の人間としては、②ができるようにならないといけません。

②の意思決定のサポート、についてもう少し具体的にしていきます。

今は情報が溢れている時代で、情報を収集することは容易です。しかし情報が多すぎると人は選択しづらくなります。そのため、収集した情報を整理してあげることで、意思決定をしやすくするということが必要です。

また、転職をしたことがある人なら分かるかと思いますが、こだわりが強かったり、希少なポジションを希望した場合に、該当求人が1つだけ、または1つもない、というようなことが起きます。数が少なすぎても意思決定を躊躇してしまうでしょう。なので、そういう人に対しては、選択肢(可能性)を増やすことで、意思決定をしやすくするというサポートの仕方があります。

ここまでは最低限。
それに加えて私が意識してきたことは、気付きを与えるということ。

転職というのは、現状の悩みを解決するための1つの手段です。悩みが解決するのであれば、異動でも副業でも、雇用形態を変えるでも、起業するでも、なんでもいいのです。そしてこれには正解がない。

だからこそ、そもそも転職する必要あるんだっけ?というところを本人自ら考えられるような問いを投げかけ、だったらこういう選択肢があるかもなということに、面談を通じて自分で気付いてもらうことを大事にしています。「エージェントにどんなところが良いか(条件含め)うまく伝えられなかった」という声が出ているというのは、この視点が欠けているということになります。

求職者本人が、現職で何に困っているのか、何に支障をきたしているのか、それは転職せずに解決できないのか?を面談時に議論すれば、「どんなところに転職すればその悩みは解決しそうか」ということ、ようは「どんなところが良いか」ということは、求職者から伝えてもらわなくてもだいたいは導きだせるはずです。


まとめると、

求職者の現状の課題を解決する手段として転職があり、情報の整理や複数選択肢の提示、そして気付きを与えることにより、求職者の意志決定のサポートをすることが、CA側の役割であるといえます。

「求人情報を送ること」や「希望条件をヒアリングすること」は本質的な仕事ではありません。

(ここで言う”意思決定”は「転職する」を決めることだけでなく、「転職しない」を決めることも含まれます。)

法人にとって人材紹介会社の価値とは

法人が人を採用をしようとした時、人材紹介会社のエージェントサービスを利用するというのは手段の1つです。ダイレクトリクルーティングでも求人広告でも人は採用できます。

さまざまな意見があるかとは思いますが、私が考える、法人が人材紹介会社を使うメリットは、採用の数の確保や質の向上が主ではないかと考えています。(ここでいう質は求職者の経歴やスキルのことではなく法人とのフィット感を指します。)そして、前述した求職者コミュニケーションは、法人側の人事担当者が行うのは時間的にも役割的にも厳しい。

ということは、法人にとって、人材紹介会社の価値は、前述した求職者対応を行った上で推薦をし面接の機会を提供すること、そして、法人側の目標採用数に対して、数と質の両面から支援してくれること、ということになります。

人材紹介会社の難しいところは、求職者に寄り添いすぎてしまう人は、法人側の視点に欠けるためなかなか成約に至らず、逆に法人側に寄りすぎてしまう人は、いわゆる「エージェントにとある求人をゴリ押しされている」というような声をもらってしまうような少々強引な言動をしてしまうなど、法人側と求職者側との間でバランスが取りづらいということ。

しかし、この問題は、これまで述べてきた視点があれば解決するはずです。

あくまで対価をいただくのは法人側。求職者から対価をいただくサービスではありません。なので、「どちらに寄るか」という表現は個人的にあまり好きではないですが、あえてこの言葉を使うならば、寄るべきところは対価をいただく法人側です。

この時、法人側の採用課題の解決のために、採用の数と質を支援しようとすると、どうしてもそのプロセスとして、求職者側に寄らなければいけなくなり、結果として、前述した求職者コミュニケーションが必要になってくるはず。もっと言うと、求職者が自分のキャリアについて自分で考え、気付き、転職によって次のステップに進もう!というマインドセットができた状態で面接まで導くことが、求職者にとっての価値でもあり、それが、法人にとっての価値となる、というのが私の考え方です。

求職者から対価をいただくわけではないのに、求職者に深く踏み込み寄り添うというのは、このような理由からです。

ここまでやらなくても売上は立てられる

最後にこのようなことを言うのはいかがなものかとは思いますが、正直、ここまでしなくても、一定の求職者数の確保と、紹介先の法人のリストがあれば、人材紹介会社としての売上はある程度は上がると思います。

ただ、人材紹介会社は現在無数に存在しており、その中から、法人・個人の双方から、採用・転職に困ったタイミングで選ばれ続ける存在になるためにはこの視点が必要だと思っていますし、逆に、紹介だけすればいいんでしょ、というスタンスでいると、今はよくてもそのうち選ばれなくなるのではないかと思っています。

CA/RAの質の向上が会社の売上の向上に繋がり、質の高い人が在籍する会社が増えれば、人材紹介の業界全体の価値が高まるのではないか?と思ったこと、そして、10年前に初めて自分が人材紹介を利用してから今まで数回利用してきて、自分自身が価値のあるサービスだと感じていることから、このサービスがより良いものであったらいいなという気持ちを、自分がその業界にいる間に書き留めておきたく、この記事を執筆することにしました。

おわりに

ここまでお読みいただきありがとうございました。

人材紹介会社で売上が上がらない人の中には、日々の仕事が「単調」「作業っぽい」「ルーティンワーク」という感覚になり、「飽きたな」と感じている人も一定いらっしゃるのではないかと思います。

人材紹介の仕事を「個人を法人に紹介する仕事」だと思っている人ほどこの傾向にありますが、「何のためにやっているのか」「自分のやっていることにどんな価値があるのか」に気付き、目の前の仕事に意味付けができれば、人材紹介会社での「やりがい」に繋がり、結果として売上を上げられる人になっていくのではないかと思っています。



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