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本もいいけど、映画も観たい!

最近ちょこちょこ、スマホで期間限定の無料公開映画(【公式】プレシディオチャンネル)を観ている。本を読むのもいいけれど、やっぱり映画を観ることも大切だ。映像、音、音声、とダイレクトに視覚や聴覚に訴えかけてくる約2時間の物語。映画館で観られたら、なおいい。大画面とスピーカーの迫力はもちろん、あの暗がりで前を向いて映画の世界に没頭するしかない時間は日常生活ではなかなか得られない。
いつかプロジェクターやスピーカーを手に入れて、自宅にシアタールームを作れたら‥‥なんて妄想したりする。


それよりまずは、NetflixややAmazonプライムとの契約が先決なこともわかっている。だけどサブスクにはちょっとひるんでしまう。映画を何本観ても定額なら、と無理して欲張って映画漬けになるか。或いは結局時間がなくてまともに観られなくて、「今月ももったいないことをした!」とヤキモキしそうな気もする。貧乏性が本当に嫌になる。
そんなわけで、まずは試験的に映画を観る習慣を取り入れてみようと思った。


何しろ無料映画を観させていただくのだ。マイナーな作品ばかりでも文句は言えないと、正直あまり期待はしていなかった。が、ラインナップを見て、ちょっとびっくり。あれ? この俳優さん、見たことある。この人も、この人も!ハリウッドスターの名前もろくに言えない私でも、知っている面々が主役を務めている作品が結構あった。
そしていくつか実際に鑑賞してみたが、どれもわりと良かった。さすがにスターウォーズやディズニー映画のような派手さはないけれど、一気にラストまで観たくなる展開、しっかりとした伏線、家族愛などがちゃんと散りばめられていた。


ただ残念なのが、公開中のものにホラー系、スリラー系、サスペンス系が多いこと。ゾンビものや心霊現象、巨大鮫の襲来など、ゾッとするようなサムネイルが目に飛び込んでくるのだ。ビビリな私にはハードルが高い。でも怖いもの見たさもある。
子供に一緒に観てもらおうか‥‥この季節「ジョーズ」くらいだったら、ちょっとしたアトラクションを一緒に体験したような気分になれるかもしれない。‥‥でも私以上にビビリだから、うるさくて面倒くさそうだ(笑)。


実は、昨日も一本映画を観たのだけれど、なんとも言えない後味だったため、ここで感想を書こうかどうか迷った。
正直、おすすめはしない。でも、何か心に残るものはあった。だから少しだけ作品について触れてみようと思う。


観た映画はリチャード・ギア主演の『ロスト・イン・マンハッタン』。主人公の初老の男性が、ホームレスになるところから物語は始まる。詳しい事情はわからないが、観ていくうちに男性がどんな性格でどんな生き方をしてきたのかが、徐々に明らかになっていく。
映画のキャッチフレーズは「すべてを失い、人生のどん底でホームレスとして生きる男の再起を描いた感動作」となっていた。けれど、私にはそうは思えなかった。特に盛り上がる場面もなければ、ひどい喪失感に見舞われる場面もなかったように感じた。“再起”というけれど、むしろ状況はどんどん追い詰められていくようにも思えた。ドラマチック曲線があるとしたら、なだらかな下降線を辿っていく感じだ。ラストはほんの少しだけ希望を見せてくれるのだが、その後の展開は視聴者の想像に委ねられる。


ところで私は基本的に、展開が速くて、ドキドキハラハラさせられるアクション映画が好きだ。気の利いたジョークが挟まれ、ピンチを乗り越え、最後はハッピーエンド。そんなわかりやすさと鑑賞後の爽快感を好む、ガチの映画好きな人たちから鼻で笑われるタイプの人間だ。
でも、いい映画っていうのは結局は、観る人の年齢や状況、タイミングなどの条件で変化していくものなんじゃないか、と今回少しだけ考えさせられた。


この作品は確かに、映画としては物足りなく感じた。音響などの、観る人に効果的に働きかけるような演出もほとんどなかった。淡々と時間が経過し、ゆっくりと状況が変化していく。それが余計にリアルさを滲ませていた。
家を無くして寒空の下、外で眠る不安。病院などの公共の場に居座ると嫌な顔をされ、よそへ行ってくれと追い出される。お金を恵んでくれと声をあげても、ほとんどの人は立ち止まらない。保護施設に行けば、まるで囚人扱い。家族でも友人でもない、育った環境も年齢も様々な人間が、まとめて一つの空間に押し込められる。言い争いや喧嘩も起こる。けれど生きていくために、贅沢は言っていられない。


たぶん主人公はこれまで、女性に養ってもらうようなヒモ生活をしてきた。(直近の女性には逃げられたようだ。)もうとっくに離婚済みだが、別れた妻との間に娘も一人いる。娘は父親に軽蔑の眼差しを向けながらも「これで最後にして」とお金を渡す。ただまだ救いなのは、主人公が娘に対して申し訳なさを感じ、羞恥心を抱いていることだ。だからこそ娘も、見捨てきれないというジレンマを抱えているのだろう。


生活保護などの支援を受けたくても、煩雑な手続きを踏まなければ叶わない。身分証や必要な書類も複数ある。申請をするために長時間待たされた挙句「身分証がなければ手続きはできません」の一言でまた一から出直し。
「どうしてこうなった?」と自問自答を繰り返し、時にはホームレス女性とのセックスや安酒に逃げる日々。


別に強盗や殺人などの大罪を犯したわけじゃない。取り立てて人に不親切だったわけでもないだろう。ただ目の前の嫌なこと、煩わしいことから逃げてきた。臭いものに蓋をして楽な方へ楽な方へと流れていった。それだけのことだと思う。その積み重ねが現在の結果だ。そして、その場しのぎでごまかして、ますます自己嫌悪に陥り、自暴自棄に陥る悪循環の繰り返し。


自業自得なんだろうか。人生設計も努力もしなかった本人がすべて悪いのだろうか。それとも世の中のせい? 親や周りの人間のせい? 不況のせい? 運が悪かったから? 
原因はきっと一つじゃない。いくつもの要因があって、それがどんどん巨大化し増幅し、ある時自分一人じゃどうしようもないくらいの濁流になってしまう。そうなったらもう溺れないように正気を保つことで精一杯になる。
映画を観ながら主人公の心情に沿って、目に見えないそんな成り行きに思いを馳せた。


鑑賞後に「あー面白かったっ!」と、真っ先に一言感想が出てくる映画。もちろんこれからだって、そんな映画がたくさん観たい。でも時にはこんなふうに、すっきりしない後味ややるせなさ、虚しさを感じさせてくれる映画があってもいい。そんな映画は観終わった後も「じゃあどうすればよかった?」「今からでもできることは?」と疑問を投げかけてくれる。


何はともあれ、良質なインプットはきっと自分次第だ。映画鑑賞、これからもぼちぼち続けていこうと思う。

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