人が好きな人 【エッセイ】

私は基本的に陰気な方だ。

少しぼうっとしていたりすると、
とっさのコミュニケーションがとれない。

プライベートで想定外の会話が発生すると反応できないことも多々ある。

後から気の利いた事が言えなかったと後悔することも多い。

たとえば、私が何かをしてお礼を言われたとき。
「どういたしまして」その一言が出てこない。
ぺこりと頭を下げてスタスタと去ってしまう。

そのすぐ後から無愛想だったかしらと悩む。

そんな自分が嫌で、無理に陽気な感じを出しても気を抜くとすぐに陰気に戻ってしまう。

あるとき、高校のときの同級生Yちゃんと14年ぶりに会うことになった。

お互いの家が近いのでランチをすることになり、せっかくなので同じ同級生のK君の実家である中華料理屋に行くことにした。

そしてランチ当日、
Yちゃんと中華料理を美味しくいただいていると働いているK君を見つけた。

彼はもうすぐ休憩時間だし3人で話そうと、近くのドーナツ屋で待ってるように提案した。

そして私とYちゃんはドーナツ屋に行き、K君はすぐにやってきた。

K君とは久しぶりに会ったのに、当時と変わらない態度にいつの間にか安堵していた。

驚いたことに、彼は私の誕生日を何となく覚えていた。
10年ぶりに会ったのに、当時からほとんど交流が無かったのにも関わらず。

その日付は正確ではなかったが、
自身の誕生日と近いことで覚えていたそうだ。

当時から交流のあったYちゃんの誕生日はもちろん覚えていた。
それから、他の同級生の誕生日もなんとなく覚えているそうだ。

そして話題は、同じ同級生のHちゃんのことになる。
彼女は数年前にとあるネズミ講にハマり、同級生たちにセミナーやら商品を紹介していたのだ。

今でもネズミ講を続けているのか、
本人にも聞けず、当時同じグループで親しかったYちゃんも知らなかった。

ところが、K君はHちゃんと交流があるどころか、本人に直接「あれって何だったの?」と聞いたそうだ。
何でもないようで、フラットで、親しみすら感じる言い方だった。

少し考えてみれば、Hちゃんも変に気を遣われるよりも、気軽に聞いてくれた方が楽だったろうと思った。

ふと、K君は人が好きな人なんだなと気づいた。
ただ明るい性格の人だと思ってたけど、根底には人好きがあったのか。

人が好きな人、存在は知ってるけど身近にはいなかった人。
あるいは気づいてないだけなのかもしれないけど。

私はK君を心から尊敬した。
そして心から羨ましく思った。


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