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【文字迷宮】「旅涯ての地」坂東眞砂子
「人生は旅である」とはよく言われることですが、その舵を切ることはなんと難しいことでしょうか。
船を操縦しているつもりが、気づけば木の葉のように流され、大きなうねりを前に呆然と佇む。
そういうことが度々起こり得るように感じます。
「旅涯ての地」
著:坂東眞砂子
発行:1998-11-1
出版:角川書店
東から西の果てへ、さらに彼方へ<あらすじと感想>
時は13世紀。
主人公、夏桂は東の果てで裕福な商人の子として生まれました。けれど父親が罪を犯し、彼を除く家族は処刑されます。命からがら逃げ延びたあと、大陸へ渡り所帯を持つも妻がお産の中で死亡、放浪のうちに捕らえられ奴隷となり、西の果て、イタリアへと連れて来られます。
しかし果てだと思っていたその地もまた果てではなく、貧富の対立、宗教の対立の渦に巻き込まれながら、さらに「彼方」へと運ばれていきます。
彼は運命に弄ばれるという言葉からイメージされるような弱い男性ではありません。むしろ強い。その場その場で知恵を働かせ窮地を切り抜けます。数々の苦難の中でも彼の「情」も「熱」も枯れることはありません。
ただ行き先を自分自身で決められるほど、この世の波は小さくはありませんでした。
誰もが安らぎを、安らげる地を求めているけれども、それを得ることは本当に難しい。本書の登場人物の多くも、得られぬままに消えていきます。
最後に夏桂が得たものは・・・
荒々しい大波で人生を困難にする海。けれど穏やかな波で幸福感を運んでくれるのもまた、海でした。
<心に残った言葉たち>
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目の前にある現実だけだ。
過去となった旅は、やはり記憶の中で
非現実の覆いをかけられ、
幻の世界へと退いていく。
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後から走っても
追いつかない。
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選ぶということはなんと難しいことだろう。
しかし、決めること、選ぶことをしない限り、
人は前に進んでいけない。
旅をしても、それは他人の旅になってしまう。
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まっすぐに立ち向かい、
そして破れたのだ。
だから、ここにいるのだ。
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強い言葉が、
言葉ではなく、
優しさそのものが
必要だったのだろう。
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心を壁の中に閉じ込めている。
自分の心は柔らか鶏の卵みたいなもので、
巣から外に出したら、
すぐさま粉々に割れてしまうと信じている。
しかし、そんなことはない。
人の心は鋼よりも強い。
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天使たちを引きずりつつ
天の国から墜ちていった
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どこにも属さない代わりに
境のこちら側とあちら側に引き裂かれ、
東と西のどこにも足を置くことが
できないでいる。
彼らもまた境の上を永い間歩いてきたがために
心の還りゆく場所を
どこにも見つけられなかったのだと
思わずにいられない。
![](https://assets.st-note.com/img/1711471344929-5IPLZefBFp.jpg?width=1200)
縛りつけられてしまったのだ。
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